中心静脈栄養中の入浴の方法について
中心静脈栄養中の入浴の方法
中心静脈カテーテル挿入中の入浴はどうすべき?→皮膚を清潔に保つためできる限り入浴シャワーを行う。
- 中心静脈カテーテルを挿入している患者は易感染状態の場合が多く、皮膚を清潔に保つためできる限り入浴シャワーを行う。
- そのためカテーテル内への水の侵入を防止するための措置を講じることが必要である。
- CDCガイドラインでは「カテーテル挿入部を見ずにひたしてはいけない、カテーテル内への菌の侵入を防止するための措置を講じた場合、水をかけても差し支えない」と規定し水の侵入防止を行う事としている。
- 中心静脈カテーテル挿入患者は、輸液ルートや輸液ポンプなどを外した方が入浴シャワーが実施しやすくなる。
- しかし接続部を外すことはそれだけ感染リスクを高めることになる。
- できれば外さずに入浴シャワー浴ができるようにする。また接続部を外す場合は生食ロック、ヘパリンロックを行う。
輸液ルートを接続した状態での入浴、シャワー浴
① 挿入部を直接水に触れないように被覆材又はビニールで保護し、周囲を防水性のテープで固定する。
② カテーテル接続部のゆるみがないか確認し、接続部に被覆材又は防水性のカバーで覆うと良い。
接続部を外し、生食ロックまたはヘパリンロックを行う場合
① 挿入部を直接水に触れないように被覆材又はビニールで保護し、周囲を防水性のテープで固定する。
② 清潔操作で接続部を剥がす。
③ 静脈内留置カテーテルの内腔に生食またはヘパリンナトリウム製剤が充満されるまで注入する。血液凝固異常がある患者の場合、ヘパリンロックは禁忌である。生食ロックヘパリンロックを確実に行い、カテーテル全体を小さくまとめ被覆材又は防水性のカバーで保護する
フイルタは不要だという話も聞くがフイルタは使用した方が良いのでしょうか?→輸液調整時の環境などを考慮して各施設で検討すべき
フイルタが必要な同課は一律に結論付けられない。その施設での輸液調整に対する設備、作業環境、管理体制に基づいて検討し、施設で決めていくことが重要である。
フイルタ不要の根拠
- 米国の一般的な病院では、薬剤部で無菌調整された輸液はフイルタで濾過される。原則として栄養輸液には閉鎖回路を使用する。回路から側注は行われず適切に管理されている。
- わが国では、病棟での診療現場で輸液調整を行い、中心静脈カテーテルのルーメンを使い分け栄養輸液ルートに三方活栓を介して抗菌薬など薬液を側注しているのが現状ではないだろうか。
- 輸液調整時にフイルタを使用せず側注で異物混入の機会が多い我が国の方法にとってはフイルタ使用の意義が高まると書かれる文献が多いのはそのためである。
各施設でフイルタ使用を検討する
- フイルタを使用する場合は、あらかじめ輸液ラインに組み込まれた一体型とし、フイルタとルートを接続することで細菌などの異物混入の機会を増やすことが内容にすることが必要である。
輸液セットに空気が入った
エアは少しぐらい入ってしまっても大丈夫なのでしょうか?→右から左シャントをきたすような心疾患がある場合には少量の気泡でも危険
点滴ルートに多少混入したような少量の木方であるならば、血液に溶けていくことが考えられる。
また少量であればたとえ右房に還流したとしても、肺毛細血管で捕捉され、全身に流れることはない。
しかし右から左シャントをきたす心疾患がある場合には、肺循環に流入する前に全身へ運ばれるため少量の気泡でも非常に危険である。
肺梗塞発症のメカニズム
- 血液循環を考えると、エアが静脈に入ると血液と一緒に流れて右心房に流入する。
- その後右室に入り配合脈から肺毛細血管へと流入する。
- 肺毛細血管では気泡は毛細血管を通過できず閉塞させてしまう。
- この状態が空気塞栓による肺梗塞である。大量の気泡により空気塞栓が広範囲に起きると、急激な呼吸不全とショックをもたらす。
- さらに大量の空気塞栓で肺動脈圧が上昇すると、気泡は肺で捕捉できず、肺静脈系から左心房、左心室へ流入する。
- 左心室に混入した気泡は、大動脈から全身へと駆け巡り脳や全身の重要臓器に空気塞栓を生じさせる。
極力混入させないように心掛ける
- どの程度の量なら許容できるのかという問題は一概にいう事はできないし、検証も困難である。
- 点滴ルート内に視認できる程度の一部のエアならば、その量は数ミリリットルくらいである。
- これは一般的に使用される輸液セットの延長チューブの容量が大きい物でも2ml程度であることを考えれば、通常点滴ルート内に混入したエアがごく微量であることが分かるはずである。
- たとえ少量の気泡だったとしてもチアノーゼ性心疾患があった場合は大変危険である。
- 医療者への不信につながりかねないため、少量であれば問題ないというのではなく極力気泡は混入させないように心掛けることが重要である。
輸液ポンプやシリンジポンプを使用していても滴下が遅れてしまうことがあるのは何故?→輸液セットなどの基準との整合性がない場合に誤差が生じる
まずは始めに考えられるのは、輸液ポンプ、シリンジポンプの制度の問題である。誤差は一般的に輸液ポンプで±10%、シリンジポンプで±3%程度であると言われている。
さらに輸液ポンプとシリンジポンプの基準と輸液セット、注射器の基準に整合性がなかった場合、同じように遅れや進みが生じる。
輸液ポンプによる様々な誤差
- 例えばある薬物を輸液ポンプで20ml/時で投与されていた場合を考えてみよう。
- 1日量として20ml/時×24時間で合計480ml投与されたことになる。
- これが±10%の誤差を勘案して計算すると輸液ポンプの違いによって432~528mlというばらつきが出る。
- これは当然流量が多くなればなるほど、その差は大きくなる。50ml/時では1日量1080~1320という大きな差が生じる。
- また輸液ポンプ、シリンジポンプの使用時には、そのポンプに対応している輸液セット、注射器を使用しなければならない。
- 当然違う種類の輸液セットを使用した場合には誤差が生じる。
- 専用の輸液セットが使用されなければ、適正量が得られないことになる。
- またポンプに挟み込む輸液セットが蛇行してハメられた場合も前兆が変化する為流量は変化する。
クレンメの位置は適切か?
- 輸液ポンプ使用時、輸液セットのクレンメが輸液ポンプより上流に位置し、クレンメが閉塞気味になっていた場合にも流量異常をきたす危険がある。
- クレンメ位置がポンプより下流にあれば、過負荷アラームなどがなるが、上流にあればクレンメから下の輸液セット部分は陰圧になる。
- その結果、輸液ポンプ内フインガーの断面積が減少し、設定流量以下となる危険性をはらんでいる。
参考資料:看護技術ケアの疑問解決Q&A