統合失調症の薬とリハビリ
統合失調症の薬とリハビリ・知っていますか?
統合失調症は、早い時期から治療を開始することが重要です
薬物療法とリハビリテーションを組み合わせた治療を継続することで回復を促し再発を防ぎます
治療法 薬物療法とリハビリテーションを組み合わせて治療する
統合失調症と診断されると薬物療法とリハビリテーション(心理社会的治療)を組み合わせた治療を行います
統合失調症の治療を中断してしまうと1年以内に約70%の人が再発してしまいます。一方薬物療法を継続すると再発率は約30%に抑えることができます
さらに薬物療法とリハビリテーションなどを組み合わせた治療を継続すると再発率を焼く8%にとどめることができます
統合失調症を発症した場合、ダメージを受けている脳の神経機能の回復を図るには、できるだけ早い時期から治療を貸しすることが重要です
とくに2~3年ほどの初期に治療を開始することが望まれます
少なくとも治療臨界期と呼ばれる発症から2~5年くらいまでに適切な治療を行うことが回復のカギを握っています
治療の開始が遅れれば遅れるほど回復しにくくなってしまいます
統合失調症の治療では、症状が落ち着いて安定した状態を目標にします
同時に就労や就学などの社会復帰を果たすなど、その人らしい生活を取り戻すことを目指しています
薬物療法 幻覚や妄想、抑うつなどの症状を軽減する
薬物療法では幻覚や妄想、抑うつなど日常生活に支障をきたす症状を軽減するために抗精神病薬を使います
現在は非定型抗精神病薬が最初に選択されます
統合失調症はドパミンなどの脳の神経伝達物質の機能障害が、原因となり引き起こされると考えられています
非定型抗精神病薬を用いることで、神経伝達物質の働きを抑制したり不足している場合には補ったりします
ただし薬の量を増やしすぎると回復するための活力が低下してしまいます。そこで一つの薬を少量つかうのが原則になっています
非定型抗精神病薬を使用していると、食欲が増えることがあり体重増加や血糖値の上昇、脂質代謝異常症などの副作用が現れることがあります
そのため治療中は、運動や規則正しい生活のリズムを維持することが大切です
非定型抗精神病薬が登場する前は、定型型精神病薬が使わられていました。現在も服用している患者さんがいますが、症状が安定していれば担当医の指示に従って服用を続けてください
定型型精神病薬の副作用には、主にパーキンソン症候群やジスキネジア、アカシジアなどがあります
これらの副作用が現れた場合には、早めに担当医に相談してください
リハビリテーション 日常生活に必要な能力を様々な方法で回復させる
薬物療法と並んで重要なのがリハビリテーションです
統合失調症の患者さんは社会生活の様々な場面で苦手意識や不都合を感じています
そのため感情の表現や人付き合い、日常生活の基本的なこと、リラックスすることに困難を感じています
それらの能力を回復させるリハビリテーションには、神経認知機能のリハビリテーションと社会認知機能のリハビリテーションの2つがあり、心理教育や認知行動療法、グループ療法などを行います
リハビリテーションは、できるだけ早く始めることが望まれます
神経認知機能のリハビリテーションは、認知機能の軽度の障害や陰性症状の改善を目的として行います
楽しみながらリハビリテーションを行うことで自発的に何かをしようとする能力の改善、一つのことに対していくつものアイデアが浮かぶ志向の回復、自らやる気を高める能力の向上を目指します
社会認知機能のリハビリテーションは、自立した社会生活を送るための能力の回復や、改善を図る治療です
具体的には社会生活を営む上で基本となるあいさつや買い物、薬やお金の管理などです
また、人と対話するためのコミュニケーション能力、日常生活で問題を解決する能力も不可欠です
ロールプレイという模擬練習によって、社会生活で適切な行動を考えられるようにしていきます
作業療法士や臨床心理士などが進行役となり実際に困った場面を再現し患者さん同士で役割を演じながら対応の仕方を話し合います
デイケア 認知機能の改善や社会復帰のための体力つくり
リハビリテーションにはデイケアなどに参加して患者さんどうしで料理を作ったり、フットサルなどグループでできるスポーツに取り組んだりするといった共同作業があります
薬物療法やリハビリテーションを継続するには焦らないことが大切です
家庭など周囲の人は患者さん自身のつらい気持ちや回復に向かう過程で生じる不安などに理解を示すことが大切です
周囲からの理解が患者さんの自信につながり回復力を高めます
医療機関を選ぶ際には、家から通院しやすい、担当医との相性が良い、同じような経験をした人の話が聞けるなどを目安にするとよいでしょう
2 統合失調症・早期発見のポイント
統合失調症・見逃さないで!早期発見のポイント
統合失調症は若い世代に多く発症する病気です
発症前のサインに気づいたら、できるだけ早く専門医に受診しましょう
適切な治療で発症や進行を遅らせ、重症化を防げます
統合失調症とは神経伝達物質の分泌が乱れて脳の機能バランスが崩れる
統合失調症は120人に一人がかかるといわれています
特に10歳代後半から30歳代くらいの若い世代に発症しやすい特徴があります
統合失調症は決して珍しくない病気なのですが、どのような病気なのかあまり知られていないのが現状です
統合失調症を発症する原因は特定されていません
しかし体質的な要因があり、環境的な要因や過剰なストレスが重なって、脳の機能バランスが崩れて発症すると考えられています
体質的な要因:統合失調症になりやすい体質の遺伝などが関係しているのではないかとされています
環境的な要因:出産のときに申請時にかかるストレスなどの影響が関係している可能性が指摘されています
あた妊娠中の母親のウイルス感染も、発症にかかわることがあるのではないかと考えられています
過剰なストレス:社会生活や人間関係などによって受ける過剰なストレスが誘因となります。引っ越し結婚出産などの人生の大きな変化もストレスの原因になりがちです
特に若い年代では進学や就職などの環境の変化、喫煙や飲酒、薬物乱用などの体へのストレスが挙げられます
脳ではドパミンなどの神経伝達物質が目や耳などから受け取った情報を伝達しています
ところが統合失調症では部分的にドパミンなどが過剰になり神経の働きが過敏になることがあります
逆に部分的にドパミンなどが低下することもあります。その結果様々な症状がおこります
統合失調症の症状 幻覚や妄想、意欲の低下、認知機能の軽度の障害が出る
統合失調症は一つの病気ではなく症状や経過が似た様々な精神疾患が集まって起こる症候群と考えられています
代表的な症状には陽性症状と陰性症状、認知機能の軽度の障害があります
陽性症状:陽性とは本来ないはずのものが統合失調症の影響であるということです。陽性症状には主に幻覚と妄想があります
妄想は多くの場合、患者さんを取り巻く環境が関係して起こっています。家庭や学校仕事などの社会的な環境が背景にあります
また、伝統や宗教、習慣など生まれ育った文化的背景の影響を受けます
幻覚や妄想などの陽性症状は周りの人から見ると、普段とは何か様子が違うということが分かりやすいのですが、患者さんにとっては病気だと自覚することは難しいのです
陰性症状:陰性とは普段はあるはずのものが統合失調症の影響でないことを示します。陰性症状には主に感情の平板化と意欲の低下があります
感情の平板化都は外部からの刺激に対して、自然に起こるはずの喜怒哀楽の感情が起こりにくくなることを言います
笑顔がなくなるなど表情の変化が乏しくなる、人と視線を合わせない、話す時の声の抑揚が低下する、身振り手振りなどのジェスチャーが減るなどです
認知機能の軽度の障害:症状の程度は軽度ですが、物忘れや集中力を欠くなど、認知機能に障害が起こり日常生活に支障をきたすことがあります
「一度にたくさんのことを言われても理解できない」「声が雑音のように聞こえて話についていけない」などの患者さんの訴えがあります
大事なことを聞いても忘れてしまったり緊張して失敗したりといったことがあります
リスク期の症状 軽度の幻覚や思い込みで苦痛を感じるようになる
統合失調症を発症する前には、病気の前兆が現れるリスク期があり軽度の幻覚や妄想が起こることがあります
「誰かに見られているような気がする」「誰かの声が聞こえるような気がする」など軽い思い込み程度のものです
また「将来を予見できると感じることがある」「経験したことが現実か空想かわからなくなることが時々ある」などの症状が現れることがあります
そのほかに不眠や不安、抑うつなどの症状が出ることがあります
これらの症状が長く続くと統合失調症をはじめとする、精神疾患に移行する危険性が高まります
夜眠れない、朝起きれない、不安やイライラの気持ちが長く続くなどの症状がある場合も注意が必要です
リスク期の治療 病気の正しい知識を持ちストレスにうまく対処する
軽度の幻覚や妄想などの症状に気づいたら専門医がいる精神科や精神神経科を受診してください
地域の精神保健福祉センターなどに相談すると統合失調症に詳しい医療機関を紹介してもらえます
この時期に適切な治療を受けることで発症を遅らせたり重症化を防いだりすることが可能です
特に社会生活を送るうえで必要なことを身に着ける時期にある若い人にとって、発症を遅らせることはとても重要です
統合失調の発症原因の一つに過剰なストレスがあるので、ストレスの対処法を身に着けることも大切です
病気を正しく理解していれば発症する危険性を下げることができ、発症したとしても早期発見と治療につなげることができます
参考資料:きょうの健康