てんかん患者の看護計画
#1発作による全身・脳への悪影響、発作の反復による脳ニューロンの微細構造の変化・消失など二次的脳損傷の惹起に関連して、日常活動が低下する恐れがある
看護診断 活動耐性低下リスク状態
危険因子:体力を減退させるような状態
看護目標
長期:必要な日常活動を行うための発作による生理的エネルギー低下の危険がない
短期:発作後に休養がとれ、低下した生理的エネルギーを回復できる
OP
・発作誘因:怠薬、睡眠不足、風、発熱などの体調不良、精神的ストレス、便秘、大量飲水、光刺激の有無
・発作の様子(けいれん性か、非けいれん性か、けいれん性の場合はけいれんの部位が体の一部分の限局されているか、全身性か、左右差、発作の変化、意識が最初から障害されていたか途中からか、発作持続時間など)
・発作後の状態(意識、行動)バイタルサイン
TP
・発作時の対応
発作が起こったら臥位をとらせ衣類やベルトを緩める。固く口を閉じている場合は無理に開口させない。片方の手を頭部に、もう片方の手を顎にあて顎を上方へ押しあげる。意識が清明になるまで注意深く見守る
・てんかん重積状態は、医師の指示による救急処置を行う
EP
・発作回復期には、安静と睡眠を十分にとることを説明する
#2発作とそれに伴う外傷、窒息、溺水などを起こす恐れがある
看護診断 身体外傷リスク状態
危険因子:筋肉協調運動の減退
看護目標
長期:発作に伴う身体外傷などを予防でき、安全にすごせる
短期:発作に伴う身体外傷を回避できる
OP
・前駆・初期症状の自覚や他覚的所見の有無
TP
・日常生活上の注意
ベッド周囲、病室の環境を整備する。医師に行動範囲を確認し指示を受ける。ベッドギアや肘のサポータなどの補助具を使用する。独りでの入浴は避け必ず看護師が付き添い、絶対に目を離さない。状況に応じてシャワー浴や清拭とする
EP
・頭重やめまい、悪心、苛立ち、ふっと気が遠くなる、チカチカやピリピリする皮膚感覚、発作が来るなという感じ、などの初期症状があったらすぐ看護師に知らせるように説明する
・発作に伴う危険や、それを回避するための方法について説明する
・発作後の朦朧状態に備え、周囲の人に見守ってもらえるようあらかじめ協力を得ておくことの必要性を説明する
#3発作誘発因子の回避を日常生活に組み込めないことにより、発作の恐れがある
看護診断 非効果的自己健康管理
関連因子:治療計画の複雑さ、行動を起こすきっかけが不十分、知識不足、治療計画に対する不信
診断指標:治療計画を毎日の生活に組み込むことができない、危険因子を減少させる行動をとることができない、健康目標を達成するには効果的でない選択を毎日の生活の中で行う
看護目標
長期:規則正しい服薬と発作誘発因子を避けた日常生活を送ることができる
短期:疾患や治療、日常生活上の注意点について理解できる
OP
・認知能力
・発症前のライフスタイル、ライフスタイルに関する価値観
・今までに受けたてんかんに関する説明の有無と理解している内容、今後の治療に対する期待
・服薬状況、服薬に対する意識や知識レベル
TP
・医師からの説明を理解し、納得できたか確認し必要に応じて補足する
・発作誘発因子を避けた生活や日常生活における服薬方法について話し合う。また外泊時の様子を連絡帳に記載してもらい、患者家族とともに確認する
EP
・薬を飲むことを生活の一部に取り入れ規則正しい生活を行うことが、発作を抑制するために大切であることを繰り返し指導する
#4てんかんの一過性及び一定期間持続する精神症状や行動障害による思考過程や自己概念の混乱に関連して心理・社会的問題が生じる
看護診断 社会的相互作用障害
関連因子: 相互の関係を促進する方法に関連する不足(知識、技能)、思考過程混乱
診断指標:他者との相互作用がうまく機能していない
看護目標
長期:てんかんを受け入れ、社会的交流に満足できる
短期:てんかんについて理解でき、日常生活における他者との相互作用に対して、肯定的な見方を表現できる
OP
・てんかんに関する不安の内容と程度:発作、治療の見通し、結婚、妊娠、出産、学校問題、就労問題、親の死後のことなど
・一過性または持続的な精神症状の発現状態、発作との時間的関係、持続時間
・対人関係、コミュニケーション技能
・疾患や発作に関連した自己否定的な言動の内容、程度
TP
・発作時の患者のプライバシーを保つ
・てんかんに関連した精神症状について医師から説明を行い、一貫した態度で接する
・定められた日課や週間予定に沿った生活を促す。また個別性に合わせて作業療法、運動療法、カラオケ、ビデオ鑑賞、散歩などのレクレーションを行う
・患者が同じような立場の人たちと出会うことができる場について検討する
EP
・発作は人間としての尊厳を損なう出来事ではないこと、発作をコントロールしていくための生活をどう構築していくかが大切であることを伝える
・少し先を見通して、安心して社会生活を送る方法を主治医とよく話し合うことが、大切であることを伝える
・他者と満足のいく相互関係を持つためには、疾患によって生じている障害や限界を受け入れると同時に自己の強みについて認識することが大切であることを説明する
#5発作時の対応や服薬管理など、ケアに対する家族の不安やストレスがある
看護診断 介護者役割緊張リスク状態
危険因子:介護の仕事の複雑さ、介護者の孤立、介護者のぎりぎりのコーピングパターン
看護目標
長期:家族は患者のケアを継続しながら、前向きな生活観を持つことができる
短期:患者のケアに関連したストレスが軽減できる
OP
・家族が感じているケアに対する不安やストレスの内容・程度
・サポートシステムとサポート方法
TP
・家族の価値観や人生観を考慮しながら、家族が抱えている疾患や介護に対する不安や悩みを傾聴する
・ソーシャルワーカーと面談する機会を持ち、家族会や支援機関などを紹介する
EP
・家族が患者をサポートできるよう、てんかんに対する基本的知識や発作時対応について説明する
・患者が小児の場合、親は罪を持つ必要がないこと、疾患に対し客観的に見つめ乗り越えていくことが大切であることを伝える
参考資料:疾患別看護過程