体位変換の手順
体位変換とは
- 体位変換とは、自分で体位を変えることが出来ない患者の身体を、人為的に回転・移動させて向きや位置を変えることである。
- 体位変換はベッド上での排泄介助や清拭など日常生活援助を行う上でも不可欠な技術であり、また治療上特別な体位を余儀なくされた場合にも行われる
- 体位変換のコツは患者の身体を小さくまとめ、摩擦を少なくすることである。押す持ち上げるのではなく、引く動かすことが大切である
- 疾患や状態によっても異なるが、同一部位の圧迫による苦痛を軽減し、障害や合併症を予防する為には最低でも2時間以内の体位変換が必要であると言われている
目的
- 同一体位の苦痛を緩和し、安楽な体位をとる
- 同一部位の圧迫による障害(循環障害、神経麻痺、褥瘡)を予防する
- 同一体位による関節の拘縮・変形を予防する
- 呼吸器合併症(無気肺や肺炎など)を予防する
適応
- 自分で体位を変えることが出来ないすべての患者(衰弱し体力がない患者、意識がない患者、麻痺により体動困難な患者、自分で動いてはいけない患者)
知っておくべき情報
実施するために必要な情報
- 患者の全身状態
- 安楽な体位についての患者の好みや要望
- 身体可動性の障害の程度と場所
- 同一体位による障害、合併症の有無
- 留置カテーテルなど患者の体内挿入物
- 装着されているME機器
方法
- 実施時間、間隔、患者に応じたタイミング
- どのような体位にするか
- どのような物品を用いるか
援助の評価
- 苦痛は軽減されたか
- 褥瘡の有無、悪化防止、改善の程度
- 呼吸器合併症の有無と状態変化
体位変換前に行う事
- 体位変換について患者に説明し同意を得る。必ず声をかけて、患者自身で行う力を引き出すことが大切である
- 体位変換しやすいようにベッド及びその周囲(ベッドの高さやベッド柵)を整える
- 体位変換後の身体の位置の検討をつけてベッドの左右上下に適切なスペースをとって患者を移動させる
仰臥位から側臥位への体位変換の手順
①看護師は患者を向ける側のベッドサイドに立ち、枕を斜め手前にずらして顔を向く側に向ける
②患者の腕を、むく側を下にして前胸部で深く組ませる
※腕を組ませると身体がコンパクトにまとまり、身体の回転がしやすくなる
③看護師は一方の手を前胸部で組ませた腕に添えながらもう一方の手で患者の両ひざをできるだけ高く垂直に立てる
④上側になっている腕と膝頭に手を添える
※腰痛を起こさない工夫:支持面を広くとる、自分の両足を肩幅サイズに開く。膝を曲げて腰を落とし重心移動がしやすいように、看護師の足先を移動する方向に向けておく。できるだけ患者に近づいて行う
⑤建てた膝を手前に倒して側臥位とする(膝を倒すと、腰→背中→頭部の順についてきて自然に側臥位となる)
※膝を立てられない場合:一方の手を患者の(体位変換後に)上になる方に添えながら、もう一方の手を患者の上になる側の下肢の下に差し入れて膝を抱き込む
※肩を支えながら抱き込んだ膝を手前に引き寄せて側臥位にする
※身体の回転・よじれが苦痛である場合は横シーツを用いる方法もある
⑥看護師はベッドの反対側に移動し、患者の臀部を自分の側にややひき、最後にクッションなどを用いて体位(30度の側臥位)を整える
※30度の側臥位は臀部全体で重みを支える為、大転子や仙骨部への圧迫を少なくすることが出来る
⑦手指衛生を行う
側臥位から仰臥位への体位変換の手順
①看護師は患者と向き合う位置に立つ
②枕を中央にずらす
③股関節と膝関節をゆっくり進展させながら、腰を横にすることにより回転(下肢→体幹→頭部)を促す
④両下肢をそろえて体位(仰臥位)を整える
⑤手指衛生を行う
側臥位から坐位への体位変換の手順
①看護師と反対側の上肢を腹部に置き、手前側の上肢を首相がベッドに着くように置く
※自立した状態でのベッドからの起き上がり動作をイメージしてみると、片側に肘をつきその肘を手この視点にして弧を描くように起き上がっている
※手前側の上肢の手掌をベッドの付くように置くのは、自然な起き上がり動作の流れに沿うためである。決してベッドから垂直に起こしてはいけない
②看護師の一方の手でベッドに置いた患者の手を抑えながら、もう一方の絵でを患者の背部に入れる
③患者の頚部、肩甲骨部を手掌や肘でしっかりと支えながら、患者の身体を看護師に近づけるように手前に寄せカーブを描くようにして上半身を起こす
座位から端座位への体位変換の手順
①患者の両ひざの下に看護師の手を入れて膝関節を屈曲させ患者の身体をV字型に、まとめる
②看護師は一方の足を後ろへ引いて、患者の臀部を支点にして身体を回転させながら下肢をベッドから降ろす
③足底を床にしっかり付け、姿勢を安定させる
④手指衛生を行う
端座位から立位への体位変換の手順
①麻痺側に立ち、自分の足を麻痺側の踵部にそろえるように置く
②膝折れに注意する
③患者に前傾姿勢をとらせ、麻痺側の臀部を軽く持ち上げ、麻痺側の膝を押す
④膝が伸びたら腰を支える
参考資料:看護技術プラクティス