多発性硬化症(視神経脊髄炎を含む)患者の看護計画
#1視力障害、運動障害、感覚障害のため転倒や外傷の危険性がある
看護診断 身体損傷リスク状態
危険因子:視力障害、運動障害、感覚障害
看護目標
長期:日常生活において転倒による外傷や骨折を起こさない
短期:1)危険に対する留意点について述べることができる
2)必要に応じてナースコールなどにより他者の手助けを得ることができる
OP
・まひの状況、しびれの程度
・周囲の環境
・視覚障害の種類:視力視野の状態、複視、眼振、カスミ目
・動くことに対する認識
TP
・ADLの援助を行う
・トイレ歩行などには付き添う
・ベッドは適切な高さにし、ベッド柵、手すり、踏み台などを用意、調整する
・点滴ラインやカテーテル、インターホンのコード、コンセントなどの存在に注意する
・滑りにくく脱げにくい履物を履くようにする
・障害の程度に応じて補助具や介護用具を使用する
・福祉に対しては眼帯の使用を試みる
EP
・患者の身体状況を説明する
・転倒しやすい状況その予防対策について患者家族と話し合う
#2視力障害や運動障害のために身の回りのことで自立できないことがある
看護診断 摂食セルフケア不足、入浴セルフケア不足、更衣セルフケア不足、排せつセルフケア不足
関連因子:視力障害や運動障害
診断指標:食事、排せつ、更衣、入浴行為に関するセルフケア不足
看護目標
長期:可能な範囲で食事、排せつ、更衣、入浴行為が自立できる
短期:1)独力でできることが増える
2)補助具が適切に使用できる
OP
・食事行動でできること、できないこと
・入浴行動でできること、できないこと
・排泄行動でできること、できないこと
・更衣行動でできること、できないこと
TP
・基本的には身の回りのことは自分でしてもらう、ゆっくりでよい、決して焦らせない
・できる限り自立できるような工夫を患者と共に考える
・必要な補助具を導入する
・できない部分のみ介助する
EP
・なぜ自立が必要なのかその必要性を説明する
・家族にも同様に指導する
#3神経因性膀胱による排尿障害がある
看護診断 排尿障害
関連因子:感覚運動機能障害
診断指標:尿閉、尿失禁
看護目標
長期:排尿障害がなくなる
短期:1)尿閉:適切な量の排尿ができる
2)尿失禁:排尿を自制することができる
OP
・水分出納量
・尿意、腹部膨満感、残尿感
・尿の回数
・失禁の有無
TP
・医師の指示による薬物の投与
・尿平時には導尿を実施する
・トイレに近い病室、またはポータブルトイレの設置
・尿失禁の場合はおむつを使用する
・適宜陰部洗浄を行う
EP
・薬物療法や導尿の必要性について説明する
・尿閉は我慢しないよう説明する
#4誤嚥による感染を起こす危険性がある
看護診断 感染リスク状態:気道感染
危険因子:慢性疾患、ご縁、薬物療法による防衛力の低下
看護目標
長期:感染を起こさない
短期:1)観戦徴候が見られない
2)感染の危険因子、予防方法について述べることができる
OP
・誤嚥の状態程度
・喘鳴、むせ
・感染徴候:バイタルサイン、悪寒
・検査データ
TP
・食前に嚥下体操で準備運動を行う
・誤嚥防止のために食事は介護者が見守り必要に応じて介助を行う
・呑み込みやすい形態職を利用したり細かくする、とろみをつけるなどの工夫をする
・食事時の姿勢に注意する
・患者が焦らずに食事ができるように環境を整える
・うまく嚥下できない場合は医師と相談して経管栄養や胃ろうとの併用を試みる
・食後すぐに横にならない
・食後及び睡眠前の口腔ケアを行う
・絶食者や口から食べ物を食べられない人の場合は口腔内の加湿・保温を積極的に行う
EP
・誤嚥の危険性と予防法を説明する
・慌てずゆっくり自分のペースで食事をとるよう説明する
#5尿道カテーテルによる感染を起こす危険性がある
看護診断 感染リスク状態:尿路感染
危険因子:慢性疾患、尿道カテーテル留置、薬物療法による防衛力の低下
看護目標
長期:感染を起こさない
短期:1)感染徴候が見られない
2)感染の危険因子、予防方法について言える
OP
・バイタルサイン
・水分出納量、尿の性状、尿中の細菌
・検査データ
・下腹部の不快感
・排尿痛、頻尿、残尿感、下腹痛
・発熱、悪寒、不快感
・尿道からの排膿、発赤、腫脹、熱感
TP
・カテーテル挿入時の滅菌操作
・カテーテル留置中の厳重管理
・カテーテルとランニングチューブの接続部はできるだけ外さない
・排尿時は特に注意する
・畜尿パックは常に膀胱より低い位置に置く
・陰部洗浄を行う
・下着やおむつが汚れたり湿ったりしたときにはすぐに交換する
・1日にコップ数杯の水分を摂取する
EP
・尿路感染の原因について説明する
・尿路感染の予防方法について説明する
#6運動障害、感覚障害により褥瘡を作る危険性がある
看護診断 皮膚統合性障害リスク状態
危険因子:体動不能、感覚障害
看護目標
長期:褥瘡を作らない
短期:1)発赤、紅斑が見られない
2)皮膚表面の破たんが見られない
OP
・好発部位の発赤、紅斑の有無
・皮膚表面の破たん
・発汗の状況、皮膚の汚染の有無
・寝衣やシーツのしわ
・栄養状態:総蛋白、ヘモグロビン
・るい痩の有無
TP
・自分で動けない患者の場合は時間ごとに体位変換を行う
・入浴できない期間は全身清拭を行う
・可能であればなるべくシャワー浴か入浴介助を行う
・好発部位周辺の健常皮膚をやさしくマッサージする
・バランスの取れた栄養を取る
EP
・褥瘡発生の危険性と予防方法について説明する
#7仙髄障害、運動不能により便秘を起こす
看護診断 便秘
関連因子:仙髄障害、運動不足
診断指標:固い有形便、排便回数の減少
看護目標
長期:便秘状態が改善する
短期:1)少なくとも2日に1回は排便がある
2)直腸の充満感が見られなくなる
OP
・排便の有無
・便の形状、量
・腹部膨満感
・水分出納量、食事摂取量
TP
・毎日定時に排便を試みる
・適切に水分摂取する
・起床時には毎朝コップ1杯の冷水を飲む
・腹部マッサージや温罨法を行う
・医師と相談の上、緩下剤の使用、座薬や浣腸、摘便の実施を検討する
EP
・予防方法の指導
・ケアの必要性を説明する
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#8寛解と再発を繰り返すことに対して不安がある
看護診断 不安
関連因子:健康状態の変化、ストレス
診断指標:行動指標(落ち着きがない、不眠)感情指標(イライラ、心配)認知的指標(意識集中が困難)
看護目標
長期:心理的身体的安楽が増大したと述べることができる
短期:1)生理的な指標が軽減する
2)情動的な指標が軽減する
3)認知的な指標が軽減する
OP
・行動指標の有無
・感情指標の有無
・認知的指標の有無
TP
・症状や経過、治療などについて主治医に十分に説明してもらう
・疾患や治療、今後の生活についての認識や不安なことなどを患者家族から聞く
・不安については患者の気持ちが落ち着くよう傾聴する
・手を握る、背部をさするなどのタッチングを行う
EP
・疾患や療養について患者家族にわかりやすく説明する
・認識が低い場合は理解できるようわかりやすく説明する
参考資料:疾患別看護過程
共同問題
RC:薬物療法(ステロイド療法、免疫抑制療法、インターフェロン療法)の有害反応
看護目標
長期:薬物の副作用による苦痛を最小限に抑える
短期:1)感染を起こさない
2)出血傾向から身を守ることができる
3)倦怠感、発熱、悪寒などに対処する
4)その他合併症に対処する
OP
感染徴候
・バイタルサイン、悪寒
・検査データ
電解質
・バイタルサイン
・ナトリウム上昇:浮腫、乏尿、傾眠
・カリウム低下:心電図変化、T波平坦化、不整脈、悪寒、嘔吐
・検査データ
糖代謝異常
・血糖値、尿糖値
消化管出血
・腹部症状
・便性状・便潜血
・検査データ
出血傾向
・内出血
・口腔内出血
・鼻血
・皮膚の点状出血
・検査データ:血小板
貧血
・顔色、眼球結膜、倦怠感の有無
・動悸、息切れ
・検査データ
感冒様症状
・発熱、悪寒、関節痛、食欲、倦怠感の有無
抑うつ状態
・気分、不快感
TP
・発熱、悪心、うつ状態に対しては必要に応じて解熱剤投与、制吐剤、抗うつ薬など医師の指示による薬物療法を行う
・症状に応じて冷罨法、氷枕、その他対処療法のケアを行う
・必要時には身の回りのケアを行う
EP
・症状は薬の副作用であることを説明する
・苦痛を我慢せずに知らせるように説明する
参考資料:疾患別看護過程