疾病の理解・食欲不振と浮腫
疾病の理解・食欲不振
食欲不振は空腹状態にありながら食物に対する生理的欲求が起こらない、もしくはそれが低下した状態を指す
症状の概要
食欲不振は何らかの原因で起こる。食欲不振の発生前にエピソードには十分気を配り、原因疾患に注意を払わなければならない
食欲不振を放置すると、体力がさらに低下し、障害や疾病を引き起こすことにもなりかねない
症状を引き起こす原因・疾患
・ 状況や環境:おいしきない食事、嫌いな食品、心地よくない・集中できない食事環境、歯のぐらつきや義歯不適合による咀嚼不良、活動性低下、睡眠不足、心配事や不安などのストレス
・ 消化器疾患:口内炎、逆流性食道炎、慢性便秘、消化管で起こる炎症やがん
・ 消化器疾患以外の疾患:脳血管疾患、肺炎や気管支炎、風邪、インフルエンザなどの感染症、心不全、腎不全など
観察のポイント
・ 食事や補食(摂食量、偏食の有無、嗜好の変化、食べ方)
・ 心配事や不安などのストレス、感情
・ 口腔内の様子
・ 体重(減少に注意、摂食量が必要量に満たない場合は毎週測定することも考慮する)
・ 発熱、痛み、倦怠感の有無
・ 意識状態
・ 貧血、横断、浮腫、脱水の有無や程度
・ 持病の悪化の有無
・ 1日の過ごし方や活動量
・ 睡眠の状態
・ 食欲不振を引き起こす薬剤使用の有無
・ 排泄状況(便秘や下痢の有無、食事前に排泄がすまされているか)
ケア上のポイント
・ 食欲不振の原因を探るため、利用者に食が進まない理由を尋ねてみる
・ 食事環境を整え、利用者の好みのものを用意してみる
・ 口腔内に目を向け、義歯の調整や清潔、湿潤環境を整える
・ 食欲に密接に関係する活動や休息、清潔、排せつなどといった日常生活内容やリズムを振り返り整える
・ 食事前に排泄が済ませられるように配慮する
・ 食欲不振以外に普段と異なる変化が見られた場合は、緊急の対処を必要とする場合もあるため速やかに看護師や医師に報告する
・ 上記ケアを行っても食欲不振が持続する場合は、医師に診察を依頼する
疾患の理解・浮腫(むくみ)
浮腫とは血液中の体液が血管外へ漏出するなどして、細胞内の組織間・腹腔・胸腔などに水分が過剰にたまった状態をいう
症状の概要
① 全身性
・ 心性浮腫:呼吸困難、労作時の息切れ、起坐呼吸、経静脈怒張
・ 腎性浮腫:血尿、高血圧、尿量減少
・ 肝性浮腫:腹水、黄疸、手掌紅斑、クモ状血管腫
・ 内分泌性浮腫:高血圧、満月様顔貌
② 局所性
・ 片側性にみられる
症状を引き起こす原因・疾病
① 全身性
・ 心性浮腫:うっ血性心不全
・ 腎性浮腫:急性腎炎、ネフローゼ症候群、慢性腎不全
・ 肝性浮腫:肝硬変
・ 内分泌性浮腫:クッシング症候群(副腎皮質機能亢進)
・ 栄養障害性浮腫:飢餓、神経性食欲不振症、腸管の吸収障害
・ 薬剤性浮腫:副腎皮質ステロイド剤
・ 特発性浮腫:原因が特定されない
②局所性
・ リンパ性浮腫:がんのリンパ節転移、リンパ管の圧迫
・ 静脈性浮腫:うっ血性心不全
・ 炎症性浮腫:局所の炎症・火傷・じんましん
観察ポイント
・ 浮腫の出現が持続的か間欠的か、また発現が急性か慢性か
・ 浮腫の程度、部位、状態
・ 基礎疾患の有無、既往歴、検査データ、尿量、体重の推移、食事、員水量、塩分摂取状況、自覚症状
・ 利尿剤使用の有無と副作用
ケア上のポイント
・ 浮腫の軽減:温罨法、保温、足浴、マッサージ、身体を締め付ける衣類を避ける
・ 合併症予防:褥瘡予防、感染予防、、浮腫の部位が直接固い素材に当たったりぶつかる恐れのあるものを周囲に置かないよう環境整備する。爪を短くする。低温やけどに注意する
参考資料:高齢者ケアガイドブック