食道がん患者の看護計画
#1食道狭窄による嚥下障害や食欲不振により食事摂取量が低下する
看護診断 栄養摂取消費バランス異常:必要量以下
関連因子:食道狭窄による嚥下障害、食物の摂取ができない
診断指標:1日推奨食物摂取量より少ない不十分な食物摂取の訴え、十分な食物摂取でも体重が減少する、理想体重よりも20%以上少ない体重、筋力低下、血清アルブミン値の減少
看護目標
長期:栄養状態を維持、改善することができる
短期:1)摂取可能な食物を選択し摂取することができる
2)経口摂取が不可能な場合は、適切な方法により栄養状態を維持することができる
OーP
・疾患に伴う症状の有無と程度
・食事摂取状況
・栄養状態
・食物の嗜好
TーP
・高カロリー高たんぱく食とする
・極端に熱いもの冷たいもの刺激物は避ける
・食事の形態を変更し患者の嗜好に合わせた食事を提供する
・経口摂取が不可能な場合や誤嚥の危険性が高い場合は食事摂取を中止する
・経口摂取のみでは必要栄養量が不足している場合は、TPNや経腸栄養を実施する
・食に対する思いや苦痛に感じていることについて聞く
EーP
・食物は少量づつ口に入れ、時間をかけて十分に咀嚼してから飲み込むように指導する
・TPNや経腸栄養の必要性と留意点について説明する
#2手術後、呼吸抑制や分泌物の増加により呼吸器能が低下しやすい
看護診断 非効果的呼吸機能リスク状態
危険因子:全身麻酔や手術、疼痛による身体の不動状態、分泌物の貯留、非効果的な咳嗽、過剰な分泌物、ねんちょう度の高い分泌物
看護目標
長期:呼吸器合併症が出現せず、呼吸状態が安定する
短期:1)手術前:呼吸器合併症を発症する危険性が高いことを理解し、禁煙や呼吸練習の実施により呼吸機能を高めることができる
2)手術後:効果的な咳嗽により、気道内分泌物を排出できる。呼吸器合併症の徴候を早期に発見、対応できる
OーP
手術前
・呼吸機能の把握
・呼吸練習の実施状況
手術後
・呼吸状態や喀痰の有無
・検査結果
・胸腔ドレーンの観察
TーP
手術前
・呼吸練習の実施
・呼吸訓練器具の活用
・排痰法を行う
手術後
・指示量の酸素流量を維持する
・吸入、咳嗽介助、排痰法を実施し痰の排出を促す
・体位変換を行い深呼吸を促す
・鎮痛薬を使用し創部痛を緩和する
・自力での喀痰が不可能な場合は医師が気管支ファイバースコープによる吸引を行う
・胸腔ドレーンを管理する
EーP
手術前
・禁煙や呼吸器合併症予防のための呼吸練習の必要性について説明する
手術後
・排痰の必要性と実施方法について説明する
#3手術による侵襲が大きく、身体的精神的苦痛が強い
看護診断 安楽障害
関連因子:手術による組織の外傷、ライン類やドレーン類の挿入、体動制限
診断指標:安楽でないという訴え、疾患に関連する症状、苦痛を感じる症状の訴え
看護目標
長期:手術による苦痛が緩和され身体的精神的に落ち着いた状態で過ごすことができる
短期:1)創部痛が適切にコントロールされる
2)必要以上に体動が制限されることなく、二次障害が予防される
3)病状や現在の状況、今後の見通しに対する心配事や不安が表現できる
OーP
・手術後の苦痛
・現状の受け止めや心配事
・せん妄の症状
TーP
・日中と夜間の覚醒、睡眠リズムを整える
・リラックスできる静かな環境を整える
・鎮痛薬を適切に使用し、創部痛を軽減する
・咳嗽時には創部に振動を与えないよう上から押さえる
・体位変換を行う
・ルート類を整理する
・気管挿管が行われ会話による意思疎通ができないときは、筆談や文字盤を使用しコミュニケーションを図る
・家族の面会を促す
・口腔ケア、清拭、陰部洗浄などを行う
・下肢の自動他動運動、マッサージ、弾性ストッキング、弾性包帯、観血的空気圧迫法などにより下肢静脈血栓を予防する
・できる限り早期に離床する
EーP
・痛みを感じたら医療者に伝えるように説明する
・現在の状況や今後の見通しについて説明する
・上下肢の運動の必要性とその方法を説明する
#4手術による吻合部狭窄、反回神経麻痺や消化管機能低下により食事摂取が困難である
看護診断 栄養摂取消費バランス異常:必要量以下
関連因子:手術による栄養必要量の増加、吻合部狭窄や半回神経麻痺による嚥下障害、消化管手術による消化機能の低下
看護目標
長期:必要な栄養が摂取でき、栄養状態が良好に保たれる
短期:手術による消化機能の変化に応じた食事方法の留意点を理解し実施できる
OーP
・食物通過障害の有無
・食物摂取状況
・栄養状態
・上部内視鏡検査結果
・食事の習慣や好み
TーP
・食事の1回量を減らし食事回数を増す
・時間を気にせず落ち着いて食べられる環境を整える
・通過障害がある時は飲み込みやすく通過しやすい食品を患者とともに選択し提供する
・吻合部狭窄による通過障害によって傾向から十分な栄養摂取ができない場合は、経腸栄養やTPNを実施する
・ゼリー状の固さのものから食事を開始し、誤嚥の可能性がなければ水分摂取を始める
・手術により身体機能が変化したこと、それに伴い食事を変更する必要があることをどのようにとらえているか、患者の思いが表出できるように関わる
EーP
・手術による消化管の形態や機能の変化について説明する
・よく噛み時間をかけて少しづつ食べるよう説明する
・食後はすぐに臥床せず座位やファーラー位をとるよう説明する
参考資料:疾患別看護過程