高齢者と睡眠障害・老いの精神
高齢者と睡眠障害
①睡眠も老化する
睡眠には脳も体もぐっすり眠るノンレム睡眠と体はぐっすりと休んでいるが、脳は活動しているレム睡眠の2種類がある
睡眠時間が追いにつれ少なくなるばかりか、寝つきの悪さを自覚するようになる(床についても実際の睡眠時間は少なくいわゆる睡眠効率が低下してくる)
②高齢者の睡眠
誰でも入眠直後は深いノンレム睡眠に入り、やがて徐々に浅いレム睡眠に移行する。これを睡眠周期といい、約100分ごとにこれを繰り返すが、高齢者ではこの睡眠リズムが乱れ、また深いノンレム睡眠も少なくなる傾向がある
・すぐに目が覚めやすく、ぐっすり寝たという実感がない(睡眠効率の低下)
・床にはいってもすぐに眠れない(寝つきが悪い)
・早寝と早朝覚醒
・睡眠時間の短縮
・生活リズムの乱れや活動域の低下、昼間にごろごろしたがる
・夜間になると何となく不安になる
③高齢者の睡眠を妨げる疾患及び要因
年齢に伴う睡眠の質的変化に加え、以下に示すような疾患や薬剤などによる睡眠妨害も考えられる
・脳血管障害(脳動脈硬化症や脳卒中硬化症)
・老人性痴呆やうつ病
・咳、かゆみ、頻尿、腰痛や関節痛などの症状による不眠
・睡眠時無呼吸症候群:高齢者は睡眠中時に呼吸を長く止めることがあるが、その回数が多くなると覚醒反応が起こり不眠となる(高齢者の不眠の40%は、無呼吸が関係しているという報告もある)
・睡眠時の下肢不随運動:高齢者は夜間下肢の頻回な痙攣用発作を起こすことがあり、それに伴う不眠を訴える
・薬剤による不眠:抗うつ剤、中枢神経刺激剤、降圧剤、利尿剤、ステロイド剤など
④高齢者を安眠させるには
高齢者のQOLを考える時、心身の適度の安静がいかに確保されているかは重要な鍵である。特に不眠を自覚した高齢者の生活リズムは乱れており、閉じこもりの傾向を一層強くしがちとなる
したがって、不眠を決して軽んじることなく真剣に対応すべきである。そして、その援助の基本はその原因となる状況を本人や家族から十分に聞き取ることに湯織安眠への対策を考えることができる
生活援助のポイント
①就寝前の入浴は、その日の疲労を取って気分を爽快にするとともに、適度の疲労感から快眠を誘い、問題行動が少なくなった事例も多い
②寝る前には、精神的に興奮しやすいテレビや読書による刺激、コーヒー、紅茶などによる利尿及び精神的興奮を与えないようにする
③正しい生活リズムを維持する。せめて朝夕は食堂で家族団らんで食事をとり、コミュニケーションを図る。高齢者としての特別扱いは避け家族の一員としての役割を持ってもらい、家族内で孤立させない
④自分だけが特殊な状態だと悩む人が多いため、睡眠にも老化があることを説明し、だれでも加齢により睡眠パターンが変化してくることを納得してしまう
次いで身体的・精神的状況がもたらす府民や薬剤による不眠の有無を考える
日常生活から見た高齢者ケア・老いの精神
閉じこもりの誘因と功罪
老年期に感じる老化の内容と程度は人さまざまである
老化には身体的機能低下によるものと、社会的環境状況の変化によるものが考えられるが、前者は個人差が大きく社会生活にはさほど影響を与えないことも多い
高齢者に最も深刻な影響を及ぼすのが社会における喪失体験である
健康の喪失に加え配偶者の友人・知人との死別、子供の巣立ち、定年による同僚・後輩との疎遠や社会的役割・地位の喪失により、長い間築き上げた人間関係、家族や社会での役割が無残にも崩れ落ち、やがて社会に孤立し、生きがいをなくした孤独な生活を送るようになる
こうした閉じこもりが老人の身体的・精神的機能低下をさらに荒廃させ、寝たきりや痴呆を量産させている
加齢により老人の生活が変わる?
年を取ると頑固になる、くどくなる、疑い深くなる、慎重で用心深くなるなどの性格の変化があると言われるが、現在では甥により性格が変化することはないと考えられているが、現在では老いにより、性格が変化することはないと考えられている
しかし、老年期における生き方はその人の人柄に深い関係があるといわれているが、ライカードは老人のパーソナリテイを5つにわけ、それぞれの老後の過ごし方の特徴を次のようにまとめている
・円熟型:老化した自分をありのまま認め、自分の人生を精神的に楽しむ
・依存型:受動的で消極的な性格で、老人としていたわれることに満足する
・防衛型:老化に対する不安から、積極的な活動を行ってむしろ若さを強調する
・自負型:過去を悔やみ、失敗や不幸を自分の責任として悩む
・攻撃憤慨型:自分の不幸を他人のせいにして、他人を非難攻撃して悩む
また老年期になると男女の人格上の性差に特徴がみられる。男性はこれまでの自己を肯定的に受け止め、妻に対しても肯定的感情を強く抱くが、女性はこれまでの自分を否定的に受け止め、老いることを不安がる
生活援助のポイント
過去の生活歴や家族背景を十分に理解して個別的に対応する。社会において、いつまでもいかに自分の存在感を持たせるか、生きがいを見つけさせるかが最大のポイントである
参考資料:高齢者ケア