膵炎患者の看護計画
#1脾被膜の緊満、限局性腹膜炎による腹痛がある
看護診断 急性疼痛
関連因子:膵酵素活性化による膵と周囲組織の自己消化による化学的炎症反応
診断指標:血圧・心拍数・呼吸数の変化、言葉・合図による疼痛の訴え、発汗、苦悶様願望、疼痛を避けるための体位付け、睡眠障害
看護目標
長期:腹痛が軽減し腹痛を予防するための方法を習得する
短期:1)血中、尿中、腹水中の膵酵素が基準値内になる
2)疼痛によるバイタルサインの変化がない
3)腹痛を軽減する体位をとる
4)腹痛を増強させる要因を理解する
5)腹痛を起こさないような生活習慣を理解する
OーP
・腹痛の部位、程度、経過、放散痛の有無、腹部の圧痛
・血中、尿中、腹水中のアミラーゼ、リパーゼなど
・画像検査結果
・血圧、心拍数、呼吸数
・発汗の有無、体位、表情、睡眠状況
・鎮痛薬のしようとその結果、行われている治療とその効果
・膵炎の病態や腹痛増強要因についての患者家族の知識認識
TーP
・患者と相談して疼痛が軽減する体位を工夫する
・患者の痛みを認め訴えをよく聞き、患者の痛みを受容していることを伝える
・指示された鎮痛薬を投与する
・指示されたたんぱく分解酵素阻害薬を静脈内投与する
・たんぱく分解酵素阻害薬と抗菌薬の持続動注療法が行われる場合は、正確で安全に投与できるよう管理する
・経鼻胃管が挿入され、胃液の持続吸引が行われる場合は、その管理と胃管挿入による苦痛が最小限となるように固定方法の工夫を行う
EーP
・腹痛の原因や痛みを増強させる要因を説明する
・絶飲食と安静を守るよう指導する
・治療計画を説明する
・膵炎症状の観察や悪化の防止ができるような生活を患者家族とともに考える
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#2化学的炎症反応に伴う血管透過性亢進、発熱、下痢、胸水・腹水により循環血液量が減少する
看護診断 ショックリスク状態
危険因子:低血圧、低酸素血症、全身性炎症反応症候群
看護目標
長期:適正な循環血液量が維持され組織の低酸素による合併症を起こさない
短期:1)収縮期血圧が基準範囲内におる
2)呼吸数が基準範囲内におる
3)動脈血ガス値が基準範囲内におる
4)尿量が基準範囲内におる
5)血中尿素窒素が基準範囲内におる
6)体温が基準範囲内におる
7)イレウスがコントロールされる
8)嘔吐、下痢がコントロールされる
9)胸水、腹水がコントロールされる
OーP
・血圧、心拍数、呼吸数、体温
・中心静脈圧、輸液量と体液喪失量のバランス
・嘔吐、下痢、腹水、胸水の有無
・血液検査結果
・画像検査結果
・呼吸障害の徴候
・腎障害の徴候:尿量、腎機能データ
・情緒、行動、精神機能の変化
TーP
・輸液管理を行う
・指示された薬物を正確に投与する
・呼吸管理を行う
・持続的血液ろ過透析が行われる場合は、その管理を行い、侵襲的治療に伴う患者の苦痛を緩和する
・ESTが行われる場合はその管理を行う
・経皮的ドレナージが行われる場合は創、ドレーンの管理に留意する
・集中治療に伴う心身の苦痛の緩和を図る
EーP
・治療計画を説明する
#3治療上の制限、膵外分泌機能障害による栄養状態の悪化が見られる
看護診断 栄養摂取消費バランス異常:必要量以下
関連因子:食物の消化ができない、食物の摂取ができない
診断指標:腹痛、摂食に対する嫌悪、下痢、十分な食物摂取でも体重が減少する、思い違い
看護目標
長期:病態に応じた方法で食物を摂取し、栄養状態を適切に保つ
短期:1)腹痛がコントロールされる
2)下痢がコントロールされる
3)膵炎を悪化させる食習慣を述べる
4)栄養状態を示す血液検査値が基準範囲内にいる
5)体重が基準範囲内にいる
6)膵炎の食事療法の要点を述べる
OーP
・傾向栄養・非経口栄養の摂取量と内容
・体重
・血液検査結果
・便の性状、量、回数
・腹部症状の有無
・食事療法に対する認識反応
TーP
・経腸栄養の管理を行う
・食事療法は患者の生活や嗜好を考慮し、無理のない範囲で実施できるよう一緒に考える
・食生活の改善点を家族にも一緒に考えてもらう
EーP
・経腸栄養を実施する場合はその必要性と投与法を説明し腹部症状があれば報告するように指導する
・食前食後の口腔ケアを促す
・経口摂取が可能となれば1回量を少なく回数を大串、ゆっくり食べるように説明する
・低脂肪食低たんぱく食の必要性を説明する
・脂肪を多くふくむ食品を列挙し、それらを制限するように指導する
・禁酒の必要性を説明する
・カフェインやスパイスなど香辛料の利いた食品を避けることを説明する
・脂溶性ビタミンを十分とるよう説明する
#4膵内分泌機能障害に伴い血統が不安定である
看護診断 血糖不安定リスク状態
危険因子:糖尿病管理についての知識不足、診断需要の欠如、糖尿病管理へのアドヒアランスの欠如
看護目標
長期:血糖値が基準範囲内にコントロールされる
短期:1)耐唐能異常の原因を述べる
2)血統コントロールの必要性、方法を述べる
3)食事療法の要点を述べる
OーP
・血糖値
・多尿、多飲、口喝の有無
・栄養摂取量
・インスリンの投与量
・血糖管理に対する認識、反応
TーP
・指示されたインスリンを投与する
・栄養士と連携を取り栄養相談を計画する
EーP
・血糖コントロールの必要性を理解する
・インスリン療法の目的、方法、注意点などを説明する
・高血糖症状、低血糖症状とそれぞれの対処法を説明する
・膵炎症状の悪化防止と耐糖能以上を踏まえた食事療法を説明する
参考資料:疾患別看護過程
#5膵炎の症状を悪化させる生活習慣がある
看護診断 非効果的自己健康管理
関連因子:意思決定葛藤、行動を起こすきっかけが不十分、知識不足
診断指標:危険因子を減少させる行動をとることができない、健康目標を達成するには効果的でない選択を毎日の生活の中で行う
看護目標
長期:膵炎の症状を悪化させないような生活を送る
短期:1)報告すべき膵炎の症状を述べる
2)症状の原因を説明する
3)薬物療法の必要性を述べる
4)正しく服薬する
5)食事療法の必要性を述べ実施する
6)ストレスの少ない生活の工夫を述べる
OP
・膵炎の病態や症状発現についての患者家族の知識認識
・入院前の生活習慣、特に食生活、飲酒歴、喫煙歴
・退院後の生活に対する患者家族の認識、考え
・退院後の生活調整に対する意欲
・キーパーソン、協力者
TP
・日常生活を振り返ってもらい、生活上の改善点を一緒に考える
EP
・次の症状があれば報告するよう説明する:上腹部痛、背部の強い痛み、悪心、嘔吐、死亡便、狡猾、多飲発熱、体重減少
・患者の病態に応じて膵炎の原因を説明する
・薬の作用副作用を説明し、正確に服薬するよう指導する
・食事療法を指導する
・膵炎の症状悪化防止や進行防止のために望ましい生活を患者家族とともに考える
・患者が抱えているストレスを明らかにしてストレス対処法を指導する
・定期受診の必要性を説明する
#6膿瘍や感染性壊死のどの膵感染、腹腔内感染、肺血症などの危険がある
看護診断 感染リスク状態
危険因子:不適切な第一次防衛機構、不適切な第二次防衛機構、観血的処置
看護目標
長期:膵感染、腹腔内感染、肺血症を起こさない
短期:1)バイタルサインが安定している
2)感染を示す徴候が認められない
3)検査データが基準範囲内にある
4)感染症の危険性があることを述べる
5)感染症予防・治療の方法を述べる
OP
・体温、血圧、心拍数、呼吸数
・腹痛の程度、圧痛、腹部膨満、嘔吐
・血液検査結果:白血球数、血清アミラーゼ、CRP
・培養検査結果:血液、ドレナージ排液
・画像検査結果:腹部超音波検査、腹部X線検査
・行われている治療とその効果
・感染症に対する認識
TP
・指示された抗菌薬を投与する
・経皮的ドレナージが行われる場合、その準備及び管理を行う
・ライン・カテーテル類の挿入部位の清潔を維持する
EP
・発熱や腹痛があれば報告するように説明する
・治療計画を説明する
・ライン・カテーテル類の管理方法を説明し、不必要に触らないよう指導する
#7膵炎の症状悪化や経過の長期化に対する不安がある
看護診断 不安
関連因子:健康状態の変化、役割機能の変化、死に至る脅威、自己概念に対する脅威
診断指標:不眠、苦悶、緊張した表情
看護目標
長期:心身の苦痛が緩和され不安のレベルが下がる
短期:1)落ち着いた表情や態度を示す
2)身体的苦痛が軽減する
3)経過をイメージし良好と思う状態を考えて対処できる
4)入院治療に伴う役割機能の変化に対処できる
5)医療費の公的負担を申請できる
OP
・情緒、行動、精神の状態の変化
・睡眠状況
・膵炎の経過、侵襲的な治療に伴う身体的苦痛
・膵炎の原因や症状悪化、行われている治療、経過などに対する患者・家族の認識
・入院治療に伴う役割機能の変化
・これまでに体験した危機的状況における対処方法
TP
・疼痛や発熱など苦痛症状の緩和を図る
・安楽な体位の工夫
・必要な場合、鎮痛薬、抗不安薬を医師に相談して投与する
・心身の苦痛を理解し思いやりのある態度で接する
・患者自身の理解や行動を支持する
・穏やかで安心感を与えるアプローチを行う
・静かで刺激の少ない環境を整える
・長期化する経過に対する影響とそれについてどのように感じているか、気持ちの表現を促す
・感情や知覚、恐怖を言葉に出して表現できるようにかかわる
・患者の感じているストレスを理解し、効果的な対処方法をとれるように援助する
EP
・患者家族の認識や需要の段階を考慮して、病態や治療、経過などの正確な情報を提供する
・重症急性膵炎の場合、医療費の公的負担制度があることを説明する
すい臓がん患者の看護計画はこちらです→「すい臓がんの看護計画」
参考資料:疾患別看護過程