双極性障害(躁うつ病)の治療
双極性障害(躁うつ病)とは
- 気分が高ぶった躁状態と気分が落ち込むうつ状態が繰り返し現れる病気です
- 躁状態がはっきり表れる1型と、軽躁状態しかなく認識しづらい2型の二つのタイプに分けられます
- 躁うつ病は、うつ病に比べると発症年齢が若い傾向にあります。再発を繰り返すのが特徴です
- 双極性障害(躁うつ病)の躁状態では、すべてにおいて度を超します
- 周囲を困らせたり社会常識から逸脱した行動が出ることもあります
- 本人は絶好調と感じているので病気の自覚がなく、周囲からも病気と思われにくいため、家庭や仕事、社会的な信用を失ったりする恐れがあります
躁うつ病の治療
- 根治する治療法はありませんが、コントロールする治療はあります
- 症状が現れないようにコントロールしていく長期的な維持療法が重要です
- 治療法として薬物療法が中心になりますが病気への理解や生活改善を図ることが欠かせません
- 薬物療法では、気分安定薬と抗精神薬が主に用いられます
躁状態予防のための日常生活注意点
- 生活リズムを整え夜更かしやお酒は避ける
- 大勢の人が集まるような刺激の強い環境は、そう状態が出現するきっかけになるので避ける
双極性障害(躁うつ病)の薬の基本
- 双極性障害(躁うつ病)の治療では、気分安定薬が主に使われます。それだけで症状を予防できない場合は、非定型抗精神病薬が使われます
気分安定薬
躁やうつの気分の波を抑える薬です。標準的な治療薬となっているのがリチウムで、第一選択薬として通常まずこの薬が用いられます
- リチウム:躁状態とうつ状態の両方を改善する効果がありそれぞれの予防にも有効です。この薬を飲んでいるほうが自殺率が低いといわれています
- 副作用は吐き気、下痢、口喝、振戦、意識混濁などがあります
- ラモトリギン:抗てんかん薬ですが、双極性障害の症状の再発・再燃を予防する維持療法に用いる薬として認められています
- 副作用は発疹、発熱などがあります

- その他の気分安定薬:抗てんかん薬として使われてきたバルブロサンが主に躁状態に対して使われることがあります
- 副作用は比較的少ないのは利点です
抗精神病薬
抗精神病薬は主に統合失調症の治療に使われる薬で、双極性障害にもリチウムやラモトリギンが使えなかったり症状が抑えきれない場合に使用します
- リチウムより効果が早く現れるため強い症状が出ている急性期には最初から使用されることもある
- 昔ながらの定型抗精神病薬は、強い躁状態を鎮めるのに使われることもありますが、飲み薬としては新しいタイプの非定型抗精神病薬が主に使われています
- 近年、オランザビン(ジブレキサ)、アリプラゾール(エビリファイ)が双極性障害の治療薬として正式に認められています
- オランザビン(ジブレキサ)は躁症状とうつ症状に、アリプラゾール(エビリファイ)は躁症状に有効とされています
- 副作用としては定型抗精神病薬で問題になりがちな震えなどは少ないです
- しかし、オランザビン(ジブレキサ)では体重増加、血糖値の上昇などが起こりやすいです
- アリプラゾール(エビリファイ)では不眠不安が起こることがあります
双極性障害に効く薬はどれ?
双極性障害の薬に関する疑問
Q:躁とうつ、症状は逆なのに同じ薬が両方にきくのはなぜ?
A:双極性障害の病相には、躁とうつが混じる混合状態もあるので全く逆の状態とは言えません
脳には気分を調整している気分安定神経系が存在していて、その働きが弱っているのが双極性障害だという考え方もあります
双極性障害の治療では躁を抑える薬、うつを抑える薬というのではなく、躁もうつも怒らない状態を保つことを目指します
Q:薬が合うか合わないかをどのようにして決めますか?
A:最初に使う薬で「こういう人にはリチウムよりこの薬のほうが有効」というような使い分けは基本的にありません
副作用の面で使えない薬が決まることはあります
ただし「何か副作用が出たら、その薬は合わない」と考えてしまったら双極性障害の薬の中に合う薬がないことになってしまいます
なるべく副作用が支障にならないように工夫しながら薬とうまく付き合っていくことで社会生活を送れるようにします
Q:うつがつらい時にも、抗うつ薬を使うのはよくないですか?
A:双極性障害、中でもはっきりとした1型では抗うつ薬をなるべく使用しないのが基本です
一時的にうつ状態がよくなっても躁状態に転じる「躁転」や病状が不安定になって躁とうつを短期間で繰り返す「急速交代型」を起こしやすいからです
ただし2型で軽躁状態が目立たず、うつ病に近い人の場合には抗うつ薬の中でも躁転の危険性の少ないSSRIなどを使うことはあります

Q:どうしていくつもの薬を使う必要がありますか?
A:双極性障害の治療では寝る前にリチウムを飲むだけで済めば望ましいのですが、それでコントロールできなければ他の薬の併用も必要になります
リチウムとラモトリギンと非定型抗精神病薬といった併用は、異なる作用を持つ薬を組み合わせることで効果が高まることが期待されます
Q:双極性障害の薬はやめられないの?
A:患者さんの中には双極性障害の治療をしている限り心を病んでいることになると、誤ったイメージにとらわれて薬をやめることが治療の目標のようになっている人が見られます
しかし双極性障害は脳の病気なのですから、高血圧の人が心筋梗塞や脳梗塞を起こさないように降圧剤を飲むのと同様だと考えていただければよいと思います
薬を飲んでしっかりと病気をコントロールしていれば、うつでも躁でもない、症状のない生活を送ることができます
参考資料:「きょうの健康」