脳血管発作の看護診断・身体可動性障害
看護診断:上肢の脱力や麻痺に関連した身体可動性障害
看護目標:上肢の関節可動域を増し、不動性の影響を最小限にし、それに関連した合併症を防ぐ
徴候と症状:腕の脱力と麻痺、拘縮、麻痺側の肩の痛み、反射性交感神経ジストロフイー症候群
看護介入:
①臥床患者を平らに寝かして適切な位置に保たせ、頭がい内圧上昇の兆候がないようにする
②麻痺側の腕の浮腫を評価する
③採決の時や点滴針を挿入するときは、患者の健側だけを使用するように注意する
④むくんだ患側の腕を挙上させ、腕の周囲径を毎日計測する。その所見を記録に報告する
⑤患者が臥床中は患側の腕を自然の体位に置かせ、定期的に腕を挙上させる
⑥安静用の副木を患者の手首と指に当てる
⑦ベッド上安静が必要な患者を移動させたり持ち上げるときは敷き替えシートを使う
⑧体位変換予定表を患者のベッドサイドにいつも置いておく
⑨患者がベッドを離れるときは、いつも吊り包帯や枕で腕を支える
⑩患者が仰臥位の間は定期的に患者の肩を外転位に置く。ベッド上安静の間は持続的に釣り包帯を使用しないようにする
⑪患側の全関節について、受動的に関節可動域の運動を少なくとも1日4回行い、この運動は脳血管発作後2日目から始める。この運動は四肢それぞれについて弛緩期早期には3~4回繰り返し痙攣期には繰り返す回数を増やす
⑫関節可動域の運動中は患者の弱った筋肉の過伸展を避ける。腕をぶら下げるような活動をすることを避ける
⑬ベッドから椅子に移動するときは、看護師の腕を患者の腕の下と体幹の周りに置く。移動の際は患者の腕を引っ張らない
⑭受動的な関節可動域の運動の前に指示により、温熱バッグや非ステロイド系抗炎症役を与える
⑮患者の痙攣期の腕にバイオフイードバックの効果性を評価する
⑯患者及び家族と一緒にリハビリテーションのスケジュールを立てるにあたって、理学療法士に相談する
⑰家政婦や適応器具などを患者が必要とするかについて、作業療法士と相談する
理論的根拠:
①体軸を適切に維持することは拘縮と変形を防止する。頭がい内圧の上昇している患者は、脳浮腫と脳圧を最小限にするために頭部側を上げたベッドに寝かせるべきであることを、看護師は覚えておく必要がある
②浮腫と組織障害は筋収縮の喪失と静脈還流の減少により起こる
③患側に針を刺すことは、組織をさらに傷害したり肩ー手症候群の原因になる
④腕を上げることは浮腫を減らして組織障害を防ぐ。腕の周囲径の測定は、状態に悪化あるいは改善があるかについての客観的データとなる
⑤定期的に腕を高く上げるとともに生理的な自然体位をとることは、拘縮を防ぎ浮腫を最小限にする
⑥副木は手の機能を維持する
⑦敷き替えシートを使うと、患者の肩をケガさせたり捻転するのを防ぐことができる
⑧記録をとることで、ある体位をどれくらいの時間とっていたかがわかる。体位変換のスケジュールを立てるのに役立ち、患者の向きを変えるのを助ける
⑨麻痺した肩の筋肉に重力を強制すると関節の亜脱臼が起こる。吊り包帯は上腕骨を肩甲骨関節窩に維持し、疲労性疼痛を防ぐ
⑩吊り包帯は肩を外転しかつ内転する。患者には外転と内転のバランスが必要である
⑪運動は筋肉の緊張を維持し、拘縮の危険性を減らし脳への新しい運動神経路の発育を増す。運動を反復する回数は新しいニューロンの結合を発達させる鍵となる
⑫筋肉の過伸展は回復を妨げ、けがや疼痛の原因となる
⑬適切な移動方法は患者の肩を回転したりけん引することに湯折るけがの危険を防ぐ
⑭温めたり抗炎症薬を使うことで、特に運動中の疼痛を和らげる
⑮バイオフイードバックは弱い筋肉を強くし、自発的調節を超えて起こす筋肉のけいれん性を和らげる
⑯協力的な計画は患者が目標を立てるのを助け、コントロールしている感じを与え進行状況を図る
⑰リハビリテーションの対する学際的なアプローチは、患者の機能を最大限に引き出すことができる
患者目標:
・腕、肩、手の拘縮から免れることができる
・肩痛から免れることができる
・患側の腕の浮腫から免れることができる
看護診断:下肢の脱力や麻痺に関連した身体可動性の障害
看護目標:血管性静脈炎、変形、身体的退行を防ぐ
徴候と症状:脱力や麻痺、歩行不能
看護介入:
①部屋の周りにある見慣れた物品の名前を言わせ、患者にそれを指し示すようにたずね、口頭指示に従う能力があるかを調べ、文章を復唱できるか尋ねるなどにより、患者のコミュニケーションの能力を毎日評価する
②決まった日常の行動計画を守り、同じ介護者をつけるなどの看護の一貫性を保つ
③過剰な聴覚的、視覚的刺激から患者を守る。例えばテレビやラジオの騒がしい場所に座らせない
④効果的な言語によるコミュニケーションを確立する。患者に話しかける前に患者の注意を惹気つける。もし患者が理解していないようであれば繰り返し話をする
⑤患者を観察し患者の態度を解釈するなどにより言葉以外によるコミュニケーションを確立する。もし患者が反応しなくても患者に話しかける。もし患者が読書不能でなければ書いたメッセージを患者に渡す
⑥患者の指示するときは、やさしい単語、一般的な言葉、短い文章を行う
⑦患者が口汚くののしったり、泣いたり感情が爆発したとき、患者を安心させ患者の注意を他の仕事や課題へ向ける
⑧患者が課題を完全に行ったら、背中をたたくなど言葉以外の方法で彼を賞賛する
⑨患者が極端に欲求不満になり始めたら、注意を転換させる活動をさせる
⑩患者の過去の優れた能力と比較しない
⑪話題を特定の何段階化に分割して計画を立てさせる
⑫電話での接触を続けるよう家族に勧める
⑬重症な会話欠損を持つ患者を、包括的評価とリハビリテーションのために言語療法士に照会する
理論的根拠:
①患者のコミュニケーション能力を日々評価することは毎日の看護とリハビリテーションの計画を立てる上での基礎となる
②看護の一貫性は患者の不安と錯乱を減らし、安定性を高める
③感覚へ過度の負荷をかける危険を減らし、患者が課題に注意を集中できるようにする
④患者の注意を引き付けることはコミュニケーションをよくする。繰り返し述べることは患者がメッセージを受け取ることを確実にする。
⑤脳血管発作の患者は手振り身振りにより効果的にコミュニケーションができる
⑥複雑な説明は神経感覚に重荷となり、また不必要に欲求不満の原因となりかねない
⑦脳血管発作の患者は脳損傷のために過剰な感情や不適当な感情を示すことが多い
⑧脳血管発作の患者は、通常、言葉以外の称賛と奨励を理解することができる
⑨気分転換は患者の欲求不満を減らす
⑩過去の能力を引用することは患者を抑うつにするだけであり、進展を遅らせる
⑪小さな扱いやすい目標に集中することは、患者が成功する回数を増やす
⑫もし患者が反応できなくても、電話をかけることは患者が外の世界と接触するのを保つ
⑬言語療法士は、会話の本質的な問題を認識し治療できる
患者目標:ずっと怪我がなく、最大限自分で身の回りのことができるようになる
参考資料:看護診断に基づく高齢者看護ケアプラン