潜在能力を引き出すケアについて
潜在能力を引き出すケア
できる動作を日常に活用する工夫を
ベッドサイドにおいて、関節を動かしたり体位変換や剤をとり姿勢を変えることは、寝たきり予防する為の1つの手段ですが、これらの運動を行うことで完結してしまって、生活動作に結び付いていないことがありがちです。
安静の時期を過ぎたら、患者の動作を見ながら、どのくらい動けるのか、どの部分に介助が必要かという視点で援助を行い、出来るようになった動作を日常の中に取り入れることが重要です。
さらにこれらの働き掛けは生活の活性化を図り自立を促すことに繋がるのではないかと思います。
患者にやる気を促す
趣味、興味に応じた動機付け
高齢者がその人らしく生きて行く為には、看護・介護者は患者の潜在的な機能や能力を可能な限り 引き出して、様々な活動ができるように導くことです。
それには、患者の様々な趣味、興味を知って本人のやる気を促すことがとても大切になってきます。
急性期医療を行う病院では、すぐに行動を起こすのに制約がありますが、急性期から慢性期を通じて患者の状態や思いなどに配慮しながら病気や治療の知識を十分に提供し、経口摂取やバルン管理の離脱をより積極的に進めることなどにより、病気を克服する姿勢を整えることが重要です。
あきらめない心
- 「もうとしだからしかたがない」「障害が重いから仕方がない」と思うのは禁物です。
- 寝たきり状態で自分ではほとんどできなかった患者が、あることをきっかけに好転していく場合は少なくありません。
- 例えばチューブで栄養を摂るという事は、本来の意味での食事ではありません。
- 「人間食べられなくなったらおしまいだ」などとよく言いますが、食べるという事は単なる栄養の補給にとどまらず、人間の満足感や幸福感をもたらします。
- 簡単に諦めないことが重要です。
- 諦めないで努力することで、時間はかかっても好転することはあります。
- 何か一つできるようになると、連鎖反応のように他のADLにも好影響をお予防すことが多々あります。
- しかしここで留意しておかなければならないことは、あれもこれもと短期間のうちに患者家族に過剰な期待をかけないことです。
- そんなことをすれば患者家族は重荷を感じます。
脳卒中による高次能機能障害への対応
- 脳卒中になると、片麻痺はその独特な姿勢から分かりやすいですが、高次能機能障害はやや分かりにくい症状と言えます。
- 片麻痺は延髄で神経が左右に交差する為、左脳の障害は右辺麻痺を、右脳の障害は左片麻痺を起こし左右が違ことになります。
- 高次脳機能は、左右の半球で全く違う機能分担があります。
- 右利きの場合は左半球は言語の中枢があり、右半球に身体と空間の認知中枢があります。
- これが損傷を受けると、前者が失語症、後者が左半側空間無視、身体失認などの症状が出現します。また多発性脳梗塞による地方があります。
失語症
失語症は言語中枢の損傷であり、聞くこと、話すこと、読むこと、書くことの言語を使う4つの働きに障害が起きます。
① 聞くこと:相手が話している言葉の意味が分からなくなり馴染みの日本語が外国語のように感じたりします。頷いていても理解していないこともあり失語症者の殆どに理解の障害があると考えた方が良いでしょう。
② 話すこと:話すことの障害は分かりやすく、全く言えない場合、何を表現するにも「たたた・・・」としか言えない場合、またスプーンがナイフになる錯誤や意味が通じない言葉の羅列であるジャーゴンなどあります。
③ 読むこと:新聞などをよむとき見出しは分かるが細かい内容は分からなかったり、ほとんどわからなかったりします。そして、漢字よりカナ文字が分かりにくいようです。
④ 書くこと:掻くことも様々な障害の程度があり自分の名前も書けない場合もあります。その他、経産省がいもあり加減算、乗除算が出来なくなります。
発病急性期には、錯誤やジャーゴンなどで話している場合、病識が乏しく自分が理解できないと思うより、相手がきちんと答えていないというように解釈して怒ることがあるので注意が必要です。
また1~2カ月過ぎたころには周囲とのコミュニケーション障害に気づき、自分の思いが伝えられないなどと悩み、抑うつ傾向になることが多くみられます。
失語症者とのコミュニケーション
失語症者とのコミュニケーションの取り方のポイントは以下です。
- 50音表は有効ではない
- 会話のキーポイントを漢字で示しながら話す
- YES,NOで答えられるような選語疑問文で質問する
- 短い文章で話す
- 身振りや表現豊かに繰り返し話す
- 難聴ではないので大きな声で話す必要はないが、ゆっくり話す
- どうしてもわからない時は「ごめんなさい」と正直に伝える
- 重要な要件はNOの答えが返るような質問をして確認する
構音障害は話すことだけの障害なので50音票は有効です
失行症
失語症に合併して起きる症状に失行症があります。失行症はなすべき運動行為は理解できているが習得された随意的な運動行為が出来ない状態です。
日常的な場面では、スプーンがうまく使えなかったり、歯磨きチューブで歯を磨こうとしたり、水道の蛇口をうまくひねれなかったり、ナースコールを口に持っていきマイクのように話そうとするなどがあります。
一般的に日常的な動作は今季強く繰り返していれば、時間の経過に連れてできるようになることが多いものです。
左反側空間無視
左半側にある対象物を無視する症状です。日常的な場面では、顔面が右側を見ることが多い、食事の際に左側の器に手を付けようとしなかったり、左側にあるものがないと訴えたりする、左側のドアにぶつかりやすい、夜間せん妄になったりベッド上で頭と足の位置が逆になったりする、などがあります。
しかし上記の症状は数カ月すると徐々に改善し全体として半年、年単位で改善します。
脳血管性痴呆
脳血管障害により脳の働きが低下して怒る地方で、前頭前野の障害でなければ殆どが多発性の脳卒中でおこります。
脳血管性痴呆は階段状に悪化していくのが特徴で、アルツハイマー痴呆とは以下の点で違います。
- 知的機能は、よい時悪い時と1日の中で変動がみられる
- 感情失禁が出やすい
- 高度な記憶障害や人格変化には至らない
- 短気な傾向になりやすい
ケアの留意点
地方を持った患者のケアは、とかく痴呆による異常行動や精神症状にのみ目を奪われがちですが、その人の人格、人間性を尊重して良く理解することに努めることが大事です。
- 患者の言動を受容し、十分に耳を傾けてその意味を理解すること
- 理論的説得ではなく、患者の気持ちに共感的な納得を得るように努力すること
- 決して厄介者扱いをせず、よい点を認めて評価し良い人間関係をつくること
- 健忘があったり、未来について考えられないことが多いので、今を大切にして接していくこと、などが挙げられます。
地方だから何もできないと思い込むのではなく、その人の潜在能力を引き出しADL、QOLの維持、向上を図ることが大事です。
心身機能の維持のためには、適切な刺激を少しづつ与えることが必要です。患者は自信を失っていることが多く不安も大きいので、その人のペースに合わせたケアが重要で、それによって安心感が生じ結果として能力の発揮が期待できます。
参考資料:寝たきりにさせない看護技術