疾病の理解・脊髄小脳変性症と慢性閉塞性肺疾患(COPD)
疾病の理解・脊髄小脳変性症
定義、原因
原因は不明。脊髄や小脳、脳幹を中心とした中枢神経が障害されることによりふらつき、動作拙劣などの運動失調症状を主体とする神経難病である
診断、自覚症状
・ 小脳症状をきたす他疾患の除外、甲状腺機能低下症、アルコール多飲、ビタミン欠乏症、パーキンソン症状や自律神経障害の有無から診断していく
・ 運動失調とは運動バランスがとりにくくなることを指す。ものをつかもうとしても距離を調節できない、市政の保持や歩幅を一定に調節できず思ったように歩けないため、酔っぱらったような歩行となり転倒しやすくなる
・ 多系統障害の場合はパーキンソン症状や自律神経障害、認知症、精神障害、不随意運動も病型によりそれぞれ合併する
合併症
頻度の多い多系統萎縮症の場合は、多彩な自律神経障害をきたすことが多くしばしば突然死を認める
・ 声帯麻痺:声帯の運動制限が生じ、突然麻痺のため閉塞し呼吸停止に至ることもある。睡眠中、吸気時に高温調の喘鳴音が出現したときには要注意
・ 発熱、発汗障害:体温調節ができずに発熱を繰り返したりする。脱水症状に注意が必要
・ 起立性低血圧:自律神経障害により血圧の調節ができなくなり、急に立ち上がると失神することもある
・ 神経因性膀胱:自律神経障害により排尿の調節ができなくなる。残尿、尿閉などの有無の確認が必要である
治療、予後
セレジストが失調症状に有効とされるが、進行を抑制するものではない
ケア上のポイント
① 構音障害:発生にも失調症状が出現するため、急に声が大きくなったり呂律が回らない状態になる。一つ一つの単語を区切って話すように指導すると聞き取りやすい場合がある
② 歩行障害:歩行する場所は広く確保し不安定なものを置かない。安定して掴むことのできる家具や手すりを活用するなどの対策が必要
ケアプランへの反映
・ 多系統萎縮症の場合は突然死の場合も非常に高く、説明の上で急変時の方針をあらかじめ話し合っておく必要がある
・ 神経因性膀胱による排尿障害のため、尿路感染症や尿管結石の合併をきたすことが多く、生命予後にもかかわるため定期的に残尿などの排尿状態のアセスメントが必要である
疾患の理解・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
定義・原因
閉塞性とは気道の閉塞により歓喜障害がおこる状態をいう。原因の90%以上は喫煙と言われ、そのほかに粉塵・化学物質・大気汚染物質などの吸入も原因とされる
COPDは高齢者に多くみられる
診断
診断はスパイロメーターによるが、認知症高齢者では検査そのものが困難なことが多い
胸部X線撮影では、肺の過膨張、横隔膜の平低化などがみられるが、高齢者の場合、単純撮影よりもCT画像のほうが特徴的な低吸収領域と呼ばれる肺構造の消失領域がみられる
症状
慢性的な咳、痰、喘息様症状がみられる。症状が進むと呼吸困難・息切れなどがみられる。軽症ではほとんど症状がないこともある
治療
肺の変化を根本的に治療する方法はなく、進行を遅らせる、また呼吸困難などの症状を緩和する治療になる
気管支拡張剤やときにはステロイド剤が使用される。また、呼吸リハビリテーションも効果があり、呼吸法訓練とともに下肢などの筋力の増強が推奨される
酸素吸入療法は、動脈血酸素飽和度が90%を下回るときに導入する
ケア上のポイント
原因の多くを占める喫煙への対応が大切である。禁煙は進行を遅らせる効果が期待される。しかし、高齢者の場合は禁煙がもたらすQOLの低下も考慮しなければならない
喀痰排出力も筋力の低下とともに低下しがちなので、体位ドレナージやスクイージングなどを行う。また上気道炎やインフルエンザが下気道に及びやすく、気管支炎や肺炎が合併しやすい
感染症の予防、口腔ケア、栄養状態の改善などにも留意する
参考資料:高齢者ケアガイドブック