高齢者ケア・パーキンソン病
疾患からみた高齢者ケア・パーキンソン病
パーキンソン病は中年以後に発症する。緩やかに進行する神経変性疾患であり難病指定を受けている
脳内の神経伝達物質の一つであるドーパミンの働きの異常が原因と考えられる。そのため治療としては抗コリン剤(副交感神経遮断剤)や低下したドーパミンを補うためのLドーパが主に使われる
これらの薬剤は症状をかなり回復させるが、脳の病変そのものを回復させるものではないため、やがては寝たきり状態になる
おもな症状
・多くは片側の上肢や下肢の震えで始まり、次第に動作が緩慢になって姿勢は前かがみになる
・顔面は仮面をかぶったように無表情になり、言語は単調、低音、早口となる。筋が硬直し他動的に動かすと抵抗がある
・すべての動作の開始や変換をすぐには行えなくなり、歩行は小刻みですくみ足現象が起こる。対象者を軽く押すと、すぐ止まれず突進してしまうのは本症の有名な特徴である
・その他、自律神経症状として脂顔、よだれ、起立性低血圧、便秘などがみられる。精神的に抑うつ状態になりやすくなる
観察ポイント
・長い経過の中で、対象者がどの段階にあるか
・対象者の身体状況や生活能力はどのような状況か。訪問時にトイレに行く様子などを見たり、ケアを通じて観察をするとよい
・家族の生活状態や健康状態はどのようになっているか(家族の協力なしに生活が成り立たない)
・医療の受け方、サポートの体制はどのようになっているか
生活援助上の注意事項・留意点
パーキンソン病では、薬物治療によって、かなり症状が改善されるものの病変の進行により、やがては反応しなくなって寝たきりになる
できるだけ寝たきりにならないように生活の援助が重要になってくる
①できる限り症状の進行を遅らせ、少しでも長い間、その人らしい生活が送れるようにする
②パーキンソン病の対象者は自分の動きの鈍さを十分認識している。したがって対象者が傷つかないように十分配慮する
③対象者は日によって体の動きにも変動があったり、パーキンソン病の症状から歩行を恐れ、自分から動こうとしないことがある。寝たきりにならないように励ましながらADLの拡大を図る。焦らせないように見守る援助をする
④パーキンソン病への特有な症状への対応
・歩行の困難さがあるため転倒に注意をする
・便秘を防ぐ工夫をする
・コミュニケーションがうまく取れなくなるため、援助側から特にコミュニケーションを心掛ける
⑤パーキンソン病では長期の経過をたどることや徐々に進行する疾患のため、対象者や家族の心理的経済的負担が大きい。福祉制度などの活用も含めて、医療職やケースワーカーとの連携も必要である
参考資料:高齢者ケア