尿道留置カテーテルの感染予防
尿道留置カテーテルの種類、材質
カテーテルの種類
① ラウンド式(2way)先端が丸型になっており一般に普及しています
② ラウンド式(3way)先端が丸型になっており持続膀胱洗浄を行うことができます
③ 多孔式(3way)先端に大きな側孔が3か所あり、凝結などがつまらない構造になっています
カテーテルの材質
現在最も普及しているのは天然ラテックスを用いたものとシリコンを用いたものです
① 天然ラテックス
各種天然ゴムをブレンドし高級医療用ラテックスとして、尿道カテーテル用に形成したものです
② テフロン・コーテイング
天然ラテックスに表面をテフロン・コーテイングしたものです。テフロンは化学的に不活性で安定しているため、膀胱や尿道の粘膜への刺激が少なく、また結石などを形成する可能性が少ないという特質を持っています
③ シリコン・コーテイング
天然ラテックスにシリコンをコーテイングしたものです。シリコンは化学的にもっとも不活性で安定であるため、膀胱や尿道の粘膜への刺激が最も少なく、また結石などを形成する可能性が少ないという特質を持っています
④ オールシリコン
100%シリコンゴムを使用したものです。シリコンの化学的特性により内空は大きく確保され、天然ラテックス性と比べて2~4号細いサイズのカテーテルを形成することができます
尿道カテーテルによる尿路感染
不必要に使用しない
尿道カテーテルによる尿路感染は、非常に起こりやすい感染症です。感染経路としては、挿入時の操作によるもの、挿入後に尿道口から、カテーテルと採尿パックの接続部、尿の停滞や逆流によるものなどが考えられ、エビデンスに基づいた処置や管理の徹底が望まれます
最初に考えなくてはいけないのは、本当にこの患者に尿道カテーテルが必要かということです。当たり前のことですが、カテーテルを使用しなければカテーテルによる感染はゼロです
尿道カテーテル使用の基準
尿道カテーテルを使用するか否かの基準
① カテーテル使用の対象となる状況
・ 尿道の閉塞を解除する必要がある場合
・ 神経疾患による膀胱機能不全によって、残尿がみられる場合
・ 泌尿器科的手術や、泌尿器周囲の手術が行われる場合
・ 重症患者において、正確な尿量が知りたい場合
② カテーテル使用の対象とならない状況
・ 患者が自分で排尿できるにもかかわらず、尿の電解質測定や培養を行うためにカテーテルを挿入する場合
・ 失禁患者を看護する場合
できるだけ舗装カテーテルを
カテーテルのサイズはできる限り細いものを使用することが重要です。カテーテルの挿入によって、合併症として尿道の刺激とびらんが生じる可能性があり、これらのリスクを回避するために細いものを選びます
また尿道がけん引されないように大腿部に固定します
尿道カテーテル挿入・抜去の実際
カテーテル挿入の手順
① 擦式アルコール製剤で手指消毒をする
② 患者に挿入しやすい姿勢w虎瀬、防水シートを敷く
③ 滅菌手袋を装着する
④ ボビドンヨードで陰部を消毒する、乾くまで待つ
⑤ カテーテルに潤滑油をつけてゆっくり優しく挿入する。このとき陰部に触れた手は汚染されたと考え、触れていないほうの手でカテーテルを扱う
⑥ シリンジで滅菌精製水を注入しバルーンを膨らませる
⑦ 乾いた滅菌ガーゼなどで陰部に付着した潤滑油などを拭く
⑧ カテーテルを固定する
⑨ 採尿パックを固定する(逆流を防ぐためバッグは膀胱より低い位置に置く)
⑩ 手袋をはがす
⑪ 手指消毒する
男性の場合
① 片手でペニスを持ち十分に外尿道口を消毒します。患者が包茎の場合は包皮を反転させて消毒します
② カテーテルの先端部が消毒をしていない部分に触れないように注意しながら外尿道口へ挿入しゆっくりと膀胱まで押し進めます
③ カテーテルが膀胱まで十分入ったことを確認した後、インフレーションバルブよりシリンジを用いてバルーン部に滅菌蒸留水を注入します
女性の場合
① 陰部全体を清拭します。まず片手で陰唇を開きます。外尿道口周辺に綿球を用いて消毒液を塗布します。最後に綿球やガーゼなどを用いて、乾拭きを行います
② カテーテルの先端部が消毒していない部分に触れないように注意しながら外尿道口へ挿入しゆっくりと膀胱まで押し進めます
③ カテーテルが膀胱まで十分入ったことを確認した後、インフレーションバルブよりシリンジを用いてバルーン部に滅菌蒸留水を注入します
固定の仕方
男性の場合
① ペニスを頭部のほうへ向け、腹部の上で固定する。カテーテルは大腿部の上を通して下げ、大腿部の外側で排尿用チューブと接続し固定する※長期留置による絵師の可能性を避けるために腹部の上で固定する
② 短期間の場合は、ペニスを下方へ下げてもよい。カテーテルは大腿部の上を通して採尿用チューブと接続し固定する
女性の場合
短期長期留置にかかわらず大腿部の上を通して採尿用チューブと接続し固定する
カテーテル抜去の手順
① 擦式アルコール製剤で手指を消毒する
② 未使用の清潔な手袋を装着する
③ バルーン内の水をゆっくり吸引して抜く。過剰に引っ張ると陰圧がかかりインフレーションルーメンがつぶれてしまう可能性がある
④ カテーテルを静かに抜く
⑤ 固定部分を外しカテーテル、チューブ、バックなどを所定の容器に廃棄する
⑥ 手袋を外す
⑦ 擦式アルコール製剤で手指を消毒する
カテーテルの選択
閉鎖式回路システムが有効
ガイドラインでは、カテーテル内側からの感染を予防するためには、閉鎖式回路システムが有効であるとし推奨しています
閉鎖式回路システムとは、尿道カテーテル、導尿チューブ、採尿パックが一体化したもので、尿道カテーテルと導尿チューブの接続部はシールドが施され安易な開放が予防されています
微生物が閉鎖式尿回路に侵入する部位
① 尿道とカテーテル挿入箇所の外尿道口
② カテーテルと導尿チューブの接続部
③ 導尿チューブと採尿パックの接続部
④ 採尿パックの排出口
挿入後のケア(留置中のケア)
閉鎖式回路システムの清潔を保つ
尿道カテーテル感染を予防するためには、閉鎖式回路システムの清潔が常に保たれることが大切です
カテーテルと導尿チューブの接続部を外さない
カテーテルと導尿チューブを離すということは、そこから微生物が侵入する可能性があるということです。感染リスクが高くなるということです
ルーチンな膀胱洗浄は行わない
膀胱洗浄を定期的に実施している施設がまだありますが、抗生剤による洗浄は感染症を減らさないばかりか、逆に閉鎖式尿回路システムを閉塞させる原因になります
尿路の洗浄液として最も優れているのは、口から摂取される水分です
したがって医師から禁止の支持がない限り水分の摂取を増やすことです
定期的な尿道カテーテルの交換はしない
感染予防対策と称して、まだ定期的に尿道カテーテルの交換を行っている施設がありますが、むしろこれは感染を引き起こす危険性があります
閉鎖式であるなしにかかわらず、尿パックからカテーテルまですべて一式交換します
サンプル採取
尿採取時は、微生物が採取口から侵入しないよう細心の注意を払っていきます
① 擦式アルコール製剤で手指消毒をする
② 未使用の清潔な手袋を装着する
③ 採取口をアルコール綿など消毒する
④ 21ゲージより細い針で採取する
⑤ 採取口をしっかり閉鎖する
⑥ 手袋を外す
⑦ 擦式アルコール製剤で手指消毒をする
尿排出
尿排出時は、患者ごとに異なる採取用容器を用意し、排出口が容器に触れないように注意して尿を輩出します
手技の前後には、必ず適切な方法で手指を衛生にし、未使用の清潔な手袋を装着します
日常のカテーテルケア
カテーテルケアは優しく静かに行い不必要なカテーテルに触れないように注意が必要です
① 擦式アルコール製剤で手指消毒をする
② 未使用の清潔な手袋を装着する
③ 石鹸と温湯で、尿道口と、尿道から8センチまでの部分のカテーテルをやさしく洗浄する
④ 乾いた滅菌ガーゼで拭く
⑤ 手袋を外す
⑥ 擦式アルコール製剤で手指消毒をする
尿道カテーテル感染が激増した場合
ガイドラインでは、病棟内でのカテーテル感染激増に関する研究によると、無症状のカテーテル感染患者が病原体の貯蔵庫となり、病原体は医療従事者の手を介して運ばれていると考えられている
この報告によれば、感染は手洗いの励行や感染患者を非感染患者から引き離すなどの努力により収束している
しかし、患者同士を引き離すという手技は、感染者が激増しているとき以外は有効でないと述べています
感染をいち早く察知し、速やかな対策を
感染の流行をいち早く察知するためには、カテーテル留置患者の水分摂取量と排泄量、尿の外観と特徴、体温、カテーテルの開通性の良否などについての観察が欠かせません
起因菌はなにか
カテーテルに関連した尿路感染の起因菌は、エシュリヒア、コリネバクテリウム、クレブシエラなどで、これらの多くは患者の腸内細菌叢由来なものです
セラチア、マルセッセンスなどは腸内に住み着いていないので、これらによる感染があればほかの患者、医療従事者、汚染容器、器具などによる外因性の感染と考えます
留置カテーテルの開存維持は生食ロックで
留置カテーテルの開存維持は生食ロックで
末梢静脈カテーテルから薬液を完結的に投与する際、その都度金属心を刺入れすると、患者に痛みと恐怖感を与えてしまうことになります
そのため留置針を用いてゆえキロを確保し薬液をフラッシュしてカテーテルを開存維持する間欠注入ロックという方法がとられています
生食ロック 正確な技術を効果的に行うポイント
① フラッシュ時は陽圧をかける
逆流した血液はラインを閉塞させるばかりか感染源となります。血液を逆流させないためには生食をフラッシュする際に陽圧をかけることが必要です
内腔が陽圧になるとカテーテル先端部ギリギリまで生理食塩水が満たされ、血液は逆流しなくなります
② 全長が短い閉鎖式輸液器具を使用する
閉鎖式輸液器具は全長が短く、フラッシュ量が少なくて済むというメリットがあります
またラインの全長が長ければ長いほど内空を陽圧に保ちにくくなるため、陽圧フラッシュを行っても血液が逆流しやすくなりますが、こうしたリスクも回避することができます
③ 清潔な手指での操作
生食ロック実施前後には、手洗い、または肉眼的に汚れがない時にはアルコール製剤で手指の汚染を除去します
手袋は滅菌である必要はありませんが未使用で清潔な手袋を使用します
末梢静脈ライン 生食ロックの手順(陽圧フラッシュのテクニック)
① インジェクションサイトの表面をしっかり消毒する
② フラッシュ溶液をゆっくり注入する
③ 残り0,5~1ml程度で、薬液を注入しながらカニューレを抜く
フラッシュ間隔とフラッシュの量
・ フラッシュの頻度について定めたガイドラインはないです。アメリカでは一般的に8時間ごとにフラッシュを行うことが多いが、1日2回の間欠輸液施工時には、投与終了後(12時間)に行う場合もあります
・ フラッシュ溶液の量はカテーテルとそれに接続された器具の容量の、少なくとも2倍は必要であるとされています
参考資料:エビデンスに基づく感染予防対策