脳出血・くも膜下出血患者の看護計画
#1見当識障害や知覚障害、視野欠損、運動障害により身体の危険を認知する能力が低下している
看護診断 身体外傷リスク状態
危険因子:感覚機能の障害、筋力低下
看護目標
長期:現在の身体状況を理解し、身体外傷を起こさないような行動がとれる
短期:1)麻痺などの身体の状況を把握できる
2)外傷予防の対策が理解できる
OP
・危険を回避する行動がとれるか
・麻痺の有無と程度
・麻痺の認識の程度、労作時の外傷の危険性の有無
TP
・危険予防のためのクッションの配置や防護柵などの設置
・PTなどのスタッフと連携をとりながらリハビリテーションの各段階に応じた援助を行う
・環境を整備する
EP
・ナースコールの使い方を説明し、危険を早期に回避する
・患者が身体外傷防止の意識付けができるよう説明・指導する
・身体外傷の危険性について家族に指導する
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#2運動麻痺により嚥下が障害される
看護診断 嚥下障害
関連因子:脳神経の関与
診断指標:嚥下困難の徴候の観察
看護目標
長期:嚥下障害が改善しADLをおこなうことができる
短期:嚥下のリハビリテーションが行える
OP
・症状の出現状況、程度の観察
TP
・食事は誤嚥防止のために介助者が見守り、介助を行う
・飲み込みやすい食形態にしたり細かく刻むなどの工夫を行う。酸味の強いものや粉っぽいものは誤嚥しやすいので避ける
・患者が焦らずに食事ができるよう環境を整える
EP
・慌てずゆっくり食事をとるように指導する
・嚥下障害を起こしやすい食物は避けるよう指導する
#3硬膜外・硬膜下ドレーン、尿道カテーテル、創部ドレーンなどからの感染を起こしやすい
看護診断 感染リスク状態
危険因子:観血的処置
看護目標
長期:感染を予防する方法を知り感染を起こさない
短期:感染症状を知り、異常時には看護師に伝えることができる
OP
・創部の状態とドレーン挿入部の観察、排液の性状
・感染徴候の観察
・感染予防行動に対する患者の理解
TP
・創部や挿入部を清潔に保つ
・栄養管理
・ドレーンなどの自己抜去予防
EP
・創部やドレーン挿入部を手で触らないなどの清潔行動の指導を行う
#4気管挿管、失語症や構音障害のためにコミュニケーションがとりにくい
看護診断 言語的コミュニケーション障害
関連因子:脳循環の減少、身体的な障壁
診断指標:考えていることを言葉で表現することが困難、人、場所、時間などに関する見識障害
看護目標
長期:1)構音障害を軽減させ、コミュニケーションをとることができる
2)基本的ニーズを適切な方法で取ることができる
短期:コミュニケーションの手段を知り、フラストレーションが減少する
OP
・話す能力と伝える能力の程度
・説明や相手の言動を理解する力
・基本的ニーズが伝えられているか
・フラストレーションの有無
TP
・患者が基本的ニーズを伝達できる方法を見つける
・短い言葉や簡単な言葉を使ってコミュニケーションをとる
・言語療法を実施する
EP
・家族に対し、会話はせかさず中断させないようにして、ゆったりとした気分で接するよう指導する
#5運動障害による身体の変化を受け入れられない
看護診断 ボディイメージ混乱
関連因子:疾患、身体損傷
診断指標:現実に存在する身体機能の変化、過去の機能に焦点をあてる、社会的なかかわりの変化
看護目標
長期:運動障害を受け入れ身体の状態を自分でコントロールできる
短期:1)運動障害を知り、怖がらずに身体に触れることができる
2)つらい気持ちを言語化できる
OP
・運動障害、麻痺による身体機能の変化に対する認識、その受け止め方
・機能の喪失に対しての言動
・感情の表出
TP
・つらい気持ちを理解し、信頼関係を築く
・身体に対するイメージが言語化できるように環境を調整する
・家族や仲間と話す時間を作り関係が深まるようにする
・障害の程度に応じてリハビリテーションを行う
EP
・つらい気持ちを理解し、少しでも表出することの大切さを説明する
#6片麻痺があり空間を認識できない
看護診断 半側無視
関連因子:脳血管の問題による脳損傷
診断指標:無視のある側の手足の位置に無自覚であることを示す
看護目標
長期:知覚障害を認識し、日常生活が安全に送れる
短期:環境を欠陥に適応させ日常生活が無理なく送れる
OP
・罹患した四肢や身体に対する無視の有無と程度
・空間認知の程度、出現状況
TP
・日常生活を送るために必要なものが患者の視野に入るよう健側に置く
・口腔内に摂取した食事や薬がたまっていないことを確認する
・口腔ケアを行う
・環境に適応して忘れていた部分が認識できるようにリハビリテーションを行う
EP
・食事は健側で食べるため、患側に食事が残っていないか確認するよう患者に指導する
・家族には健側から近づき話しかけること、健側に物品を置くなどの指導すする
#7治療上の安静と運動麻痺によってセルフケアが行えない
看護診断 セルフケア不足シンドローム
関連因子:認知障害、身体の部分を知覚することができない、更衣および整容ができない、食事行為が自立して行えない
診断指標:ADLの遂行不能
看護目標
長期:自分が望むことができる範囲で行うことができる
短期:1)セルフケアをするために必要なリハビリテーションを前向きに行うことができる
2)介助によって患者が望むことが充足できる
OP
・セルフケアを行う能力
・障害の程度、部位
TP
・障害に応じて患者のADLを介助する
・自力でできる範囲は患者自身が行えるように環境を整える
・セルフケアを自分で行えないことに対する気持ちを聴く
・必要時に適切な自助具を選択する
EP
・セルフケア不足に対する不快な気持ちや不満を言語化するよう指導する
・自分のペースを崩して無理に行おうとすることは事故や外傷の危険があることを指導する
・自分でできる範囲を自分のペースで行うことはリハビリテーションになるので、セルフケア能力の向上となるように指導する
#8急激な身体変化と後遺症を受け入れられず、治療やリハビリテーションを毎日の生活に組み込めない
看護診断 非効果的自己健康管理
関連因子:重症であるという思い込み、知識不足
診断指標:治療計画を毎日の生活に組み込むことができない
看護目標
長期:疾患からの回復や合併症予防のための健康行動がとれる
短期:現在の身体状況を理解し、自分でリハビリテーションや健康管理を行いたいと思える
OP
・身体の変化に対する認識、受け止め方
・患者の疾患に対する認識の確認
・自己効力感
・発症までの日常生活
TP
・治療計画に対する十分な説明
・不安や疑問を伝えられるような環境調整
・患者がリハビリテーションを行いたいと思う動機づけの工夫を行う
EP
・身体の変化を日常生活に組み込んでいくことは時間がかかることを説明し、焦らずきながに行っていくことの大切さを指導する
#9急な発症や状態変化により家族の日常生活の維持が低下する
看護診断 家族機能破綻
関連因子:家族の役割変移、家族の経済状態の変容、状況危機
診断指標:割り当てられた仕事の変化、互いの支えあいの変化、コミュニケーションパターンの変化
看護目標
長期:患者の疾患によって起こった家族機能の変化に対して、家族成員が協力して立ち向かうことができる
短期:家族が急な変化に対応する不安やストレスを表現できる
OP
・家族の役割の変化、現状
・家族間の罪悪感や怒り、避難、憤りの有無
・家族の不安や精神状態
TP
・正確な情報を提供し現実的な見通しがつけられるように援助する
・家族の頑張りを認める
・不安などを言語化しやすい環境を作る
・外部の援助者の協力が得られるよう介護の支援づくりを援助する
・地域の関連機関と連絡を取り、在宅療養に社会資源が活用できるように支援を依頼する
EP
・疾患について患者家族に分かりやすく説明する
・家族全体で協力し合い疲労が蓄積しないように伝える
参考資料:疾患別看護過程