脳梗塞患者の看護計画
#1急速な身体変化と交渉を受け入れられず、治療やリハビリテーションを毎日の生活に組み込めない
看護診断 非効果的自己健康管理
関連因子:重症であるという思い込み、知識不足、障壁があるという思いこみ
診断指標:治療計画を毎日の生活に組み込むことができない
看護目標
長期:疾患からの回復や合併症予防のための健康行動がとれる
短期:現在の身体状況を理解し、自分でリハビリテーションや健康管理を行いたいと思える
OP
・身体の変化に対する認識、受け止め方
・患者の疾患に対する認識の確認
・自己効力感
・発症までの日常生活
TP
・治療計画に対する十分な説明
・不安や疑問を伝えられるような環境調整
・患者がリハビリテーションを行いたいと思う動機づけの工夫を行う
EP
・身体の変化を日常生活に組み込んでいくことは時間がかかることを説明し、焦らずきながに行っていくことの重要性を説明する
#2運動麻痺により嚥下が障害され、食事を十分に摂取できない
看護診断 嚥下障害
関連因子:脳神経の関与
診断指標:むせる、口腔内をきれいにできない
看護目標
長期:嚥下が障害されることなく食事が必要量摂取できる
短期:嚥下のリハビリテーションが行える
OP
・食事摂取量
・嚥下障害の状態
・食べこぼしなどの状態、程度
・食べられる食物の形態
・誤嚥性肺炎の徴候
TP
・食事は誤嚥防止のために介助者が見守り介助を行う
・飲み込みやすい食形態にしたり、細かく刻むなどの工夫を行う。酸味の強いものや粉っぽいものは誤嚥しやすいので避ける
・患者が焦らずに食事ができるように環境を整える
・食事が1回でとれない場合は、回数を増やすか間食などで栄養が十分に取れるように工夫する
・嚥下しやすい体位の工夫、嚥下訓練を行う
EP
・慌てずゆっくり食事をとるように指導する
・嚥下障害を起こしやすい食物は避けるよう指導する
・口腔ケアの必要性と方法について指導する
#3運動麻痺により自由に素早くトイレに行くことができず失禁してしまう
看護診断 機能性尿失禁
関連因子:神経、筋機能の制限
診断指標:排尿する必要があると感じる。トイレにたどり着くのに要する時間が、尿意を感じてからコントロールできなくて排尿してしまうまでの時間の長さをこえる
看護目標
長期:尿失禁することなくトイレで排尿できる
短期:1)尿意を他者に伝えられる
2)失禁しないための方策を考え実行することができる
OP
・尿意の有無、排尿量
・排尿感覚や回数
・トイレまでの移動の状況
・諦めや心理的混乱の有無
・麻痺の状態
TP
・排尿する時間を見計らい事前に誘導する
・トイレでの排尿がスムーズに行えるようなリハビリテーションを行う
・陰部を清潔保持する
EP
・尿意がある時は遠慮せずに伝え、トイレで排泄することの大切さについて指導する
#4失語症、構音障害のためにコミュニケーションがとりにくい
看護診断 言語的コミュニケーション障害
関連因子:脳循環の減少、身体的な障壁
診断指標:考えていることを言葉で表現するのが困難。人、場所、時間などに関する見当識障害
看護目標
長期:1)構音障害を軽減させコミュニケーションをとることができる
2)基本的ニーズを適切な方法で伝達できる
短期:コミュニケーションの手技を知りフラストレーションが減少する
OP
・話す能力と伝える能力の程度
・説明や相手の言動を理解する力
・基本的ニーズが伝えられているか
・フラストレーションの有無
TP
・患者が基本的ニーズを伝達できる方法をみつける
・みじかい言葉や簡単な言葉を使ってコミュニケーションをとる
・言語療法を実施する
EP
・家族に対し会話はせかさず中断させないようにして、ゆったりとした気分で接するように指導する
#5運動障害による身体の変化を受け入れられない
看護診断 ボディイメージ混乱
関連因子:疾患、身体損傷
診断指標:現実に存在する身体機能の変化、過去の機能に焦点を当てる、社会的なかかわりの変化
看護目標
長期:運動障害を受け入れ身体の状態を自分でコントロールできる
短期:1)運動障害を知り怖がらずに身体に触れることができる
2)つらい気持ちを表現できる
OP
・運動障害麻痺による身体機能の変化に対する認識
・機能の喪失に対しての言動・感情の表出
TP
・つらい気持ちを理解し、信頼関係を築く
・身体に対するイメージが言語化できるように環境を整備する
・家族や仲間と話す時間を作り関係が深まるようにする
・障害の程度に応じてリハビリテーションを行う
EP
・つらい気持ちを理解し少しでも表出することの大切さを説明する
#6片麻痺があり、空間を認識できない
看護診断 半側無視
関連因子:脳血管の問題による脳損傷
診断指標:無視のある側の手足の位置に無自覚であることを示す、無視のある側に関する安全対策の不安
看護目標
長期:知覚障害を認識し日常生活が安全に送れる
短期:1)空間認識ができない状況を理解し生活環境の調整ができる
2)事故のない安全な環境が作れる
OP
・罹患した四肢や身体の存在の無視の有無と程度
・空間認識の程度、出現状況
TP
・日常生活を送るために必要なものが患者の視野に入るよう健側に置く
・摂取した食事や薬が口腔内にたまっていないことを確認する
・口腔ケアを行う
・環境に適応し、忘れていた部分が認識できるようにリハビリテーションを行う
EP
・食事は健側で食べるため患側に残っていないか確認するように患者に指導する
・家族には健側から近づき話しかけること、健側に物品を置くなどの指導を行う
#7運動麻痺によってセルフケアが行えない
看護診断 セルフケア不足シンドローム
関連因子:身体の部分を知覚することができない、更衣及び整容ができない、食事行動を自立して行えない
診断指標:ADLの遂行不能
看護目標
長期:自分が望むことをできる範囲で行うことができる
短期:1)セルフケアをするために必要なリハビリテーションを前向きに行うことができる
2)介助によって患者が望むことが充足される
OP
・セルフケアを行う能力
・障害の程度、部位
TP
・障害に応じて患者のADLを介助する
・自力でできる範囲は患者自身が行えるように環境を整える
・セルフケアを自分で行えないことに対する気持ちを聴く
・必要時に適切な自助具を選択する
EP
・セルフケア不足に対する不安な気持ちや不満を言語化するよう指導する
・自分のペースを崩して無理に行おうとすると事故や外傷の危険があることを指導する
・自分でできる範囲を自分のペースで行うことはリハビリテーションになるのでセルフケア能力の向上となるよう指導する
#8長期にわたって介護を行うことにより、家族が身体的精神的苦痛を感じている
看護診断 介護者役割緊張
関連因子:支援の不足、不十分な財源
診断指標:ケア利用者の健康状態の将来像に対する不安、疲労、苛立ち、ストレス
看護目標
長期:介護の役割を家族だけが引き受けることなく、社会資源を十分活用することで精神的に安定する
短期:ストレスになっていることや、いらだちを言語化することができる
OP
・家族の役割の変化と現状
・家族間の罪悪感や怒り、非難、憤りの有無
・家族の不安や精神状況
TP
・正確な情報を提供し、現実的な見通しがつけられるよう援助する
・家族の頑張りを認める
・不安などを言語化しやすい環境を整える
・外部の援助者の協力が得られるよう、介護の支援づくりを援助する
・地域の関連機関と連絡を取り、在宅療養に社会資源が活用できるように支援を依頼する
EP
・疾患について患者・家族に分かりやすく説明する
・家族全体で協力し合い、疲労が蓄積しないように伝える
#9運動麻痺や食事摂取量の低下、自分で自由にトイレに行けないため便秘になりやすい
看護診断 便秘リスク状態
危険因子:不適切な排便方法、食習慣の変化、不十分な身体活動
看護目標
長期:規則正しい排便があり、腹部の不快感が消失する
OP
・排便の回数、量、性状
・食事摂取量
・運動障害の程度
・トイレへの移動手段
TP
・排便習慣をつける
・毎日の運動を心がける
・必要に応じて腹部マッサージや温罨法を行う
EP
・食後はトイレへ行く習慣をつけ、意気まず排便することの必要性を指導する
参考資料:疾患別看護過程