胸腔ドレーン管理の方法について
胸腔ドレーン管理の方法
ドレーンが入っているか抜けているか、どうやって判断するのですか?→X線写真で先端の位置を確認する
胸腔ドレーン挿入位置はX線写真にて、目的の位置に先端が位置されているか、前回のX線写真と位置のずれがないか確認する。
また固定部位のマーキングにずれや、突然の水封部の呼吸性移動の消失、突然のエアリークの出現はドレーンの逸脱が疑わしい
ドレーンの留置部位
- 胸腔ドレーンは挿入目的によってドレーン留置部位は異なる。
- 挿入目的が脱気の場合挿入部位は第2から3助間の前胸部鎖骨中線上っあり、ドレーン先端位置は肺尖部、前胸部側である。
- 挿入目的が排液の場合、挿入部位は第5から6助間の中えきか線上であり、ドレーン先端位置は肺底部、背側である。
X線写真による確認
- 胸腔ドレーン挿入位置は、レントゲン写真にて目的の位置に先端が位置しているか、前回のレントゲン写真と位置のズレがないか確認する。
ドレーンの固定
- 胸腔ドレーンは二ヵ所で固定する。固定部位の皮膚にはマーキングを行い、ズレがないか確認する。
- また、胸腔ドレーンが引っ張られていないか、固定のテープが外れていないかを常に確認し、包帯交換時には縫合糸が外れていないかも確認する。
ドレーンの逸脱が疑われる場合
- 体位変換や体動などのあとは、必ずドレーンの逸脱がないかチェックする。
- 水封部の呼吸性移動の消失は、肺の完全膨張以外に、ドレーンの逸脱によっても起こりうる。
- 突然のエアリークの出現もドレーン逸脱の可能性がある。
予定外抜去時の対応
- 胸腔ドレーンが予定外に抜去した場合、抜去部より大気を吸いこみ気胸となり十分な換気が出来ず呼吸状態が悪化する可能性がある。
- 予定外に抜去した場合は抜去部を清潔なガーゼで圧迫固定し直ちに医師へ報告する。
- 患者には慌てないように指示し安静にゆっくり浅い呼吸をするように促す。
ドレーンからの排液の正常と異常はどう見分けるのでしょうか?→新鮮血性、混濁、白濁、胆汁様であれば異常を疑う
ドレーン排液が新鮮血で、かつ2~3時間以上200ml/ 時以上の排液の持続や、急激な増加は出血を疑う。膿の混入は感染を疑い、白濁は乳び胸を疑う。
食道切除術後のドレーン排液に泡が混じる、胆汁が混入するなどがあれば縫合不全を疑う
出血が疑われる場合
- 術後の胸腔ドレーンの排液の性状は淡血性から血漿成分の多い漿液性に変化していくのが一般的である。
- しかし排液の性状が新鮮血で2~3時間で200mlの排液の持続、又は急激な増加は出血を疑う。
- 直ちに医師へ報告する。
膿の混入が見られた場合
- ドレーン排液に脳が混入して来たら感染を疑う。
- 治療は原因菌に感受性のある抗菌薬の全身投与と治療目的としての胸腔ドレナージである。
排液が白濁してきた場合
- ドレーンの排液が混濁して来たら乳び胸を疑う。び胸とは胸管のリンパ液が胸腔内に貯留した状態で胸膜外に貯留したリンパ液が胸膜を破って胸腔内に流入してくる。
- 2週間以上の乳びの流出や1500mlの流出が5日間続くようであれば胸管結紮術の適応になる。
縫合不全が疑われる場合
- 食道切除術後のドレーン排液に泡が混じる、胆汁が混入するなどがあれば縫合不全を疑う。
- 縫合不全の初期は膿汁のドレナージと感染コントロールが重要であり、特に口腔ケアは食道切除後の縫合不全の発生頻度や縫合不全の治療経過に影響すると言われている。
胸腔ドレーン抜去時の注意点
ドレーンを抜く時期はどのようにして決めるのでしょうか?→肺が完全に膨張していることが確認されれば抜去可能
胸部X線写真にて肺が完全に膨張していることが確認されればドレーン抜去可能となる。
胸腔ドレーンの挿入目的が脱気の場合は肺が再膨張しエアリークが消失した時期、排液目的の場合は排液が漿液性~淡血性と変化し100~150ml/ 日以下となった時期に抜去する
脱気目的の場合
- 胸腔ドレーンを挿入している目的によって、抜去時期の判断は異なる。
- 脱気目的つまり気胸の場合には、肺の膨張度、エアリークの程度によって判断する。
- 持続吸引なしで肺が完全に膨張し、エアリークが消失していればドレーン抜去可能となる。
- エアリークの消失後に胸部レントゲン写真を撮影し、肺の完全膨張がえられていることを確認してから胸腔ドレーンを抜去する。
排液目的の場合
- 胸腔ドレーン挿入の目的が胸水の排液の場合、排液が漿液性~淡血性と変化し、肺の膨張が良好で胸水の培養が陰性であれば、胸腔ドレーンの抜去は1日量で判断される。
- 一般的には100~150ml/日で抜去が考慮される。
水封部の呼吸性移動の消失
水封部の呼吸性移動の消失は以下の①~③のいずれかの理由によるものである。
① 肺が完全に膨張した。
② ドレーンが屈曲閉塞した。
③ ドレーン内腔がフイブリンや凝結塊などにより閉塞した。
ドレーンの屈曲閉塞が無いようにドレーン内腔をチェックし呼吸音の減弱や増強がないか聴診することは大事なケアである。
ドレーン抜去時のクランプ
- エアリークがなく肺が完全に膨張した場合胸腔内は陰圧になるため、水封部に陰圧がかかり水封部液面が上昇する。
- したがって胸部レントゲン写真上肺が完全に膨張しており、水封部が強陰圧で呼吸性移動が見られず、ドレーン閉塞がない場合にはドレーンの抜去が可能であり、抜去前のクランプは一般的には行わない。
- しかし水封部に胸腔内陰圧がかかっていない場合には最小肺ろうの有無を明らかにするために、抜去前にクランプを行い確認することがある。
ドレーン抜去時抜去後のケア
ドレーン抜去時にはドレーン挿入部からの外気の吸い込みによる気胸を予防する目的で、患者に息こらえをしてもらう。息こらえは吸気終末時でも呼気終末時でも気胸の残存に差はないため、患者が息こらえしやすい方でしてもらう。
抜去後の確認事項
①ドレーン抜去後の浸出液や出血の有無
②呼吸状態
③胸郭の動き
④呼吸音
⑤皮下気腫の有無
⑥SPO2
⑦動脈血ガスデータ
⑧胸部レントゲン写真
胸腔ドレーン管理の陰圧と陽圧
胸腔ドレーンの目的は、胸腔内に貯留した空気、血液、浸出液などを体外にドレナージ(排出)し、肺の再膨張と虚脱防止をすることである。
胸腔ドレーンの適応やメカニズムを十分に熟知した上で管理しなければ、術後の経過や予後に多大な影響をおよぼす。
陰圧をかけるようにと指示されたが、胸腔内圧が陽圧になるとどうなるのですか?→肺の膨張不全がおこるため、設定圧の確認が必要
胸腔内圧が陽圧になると貯留した空気や体液がドレナージされず、胸腔内を一定の陰圧に保てないため肺の膨張不全がおこる。
又は胃瘻がある場合、胸腔内圧は陽圧となり緊張性気胸となる危険性が高い。陰圧をかけるように指示された場合一般的には-10~-20cmH2Oであるが、その圧設定は個々の症例により異なるため、設定圧の確認が必要である。
緊張性気胸のリスク
- 胸腔内は生理的に陰圧状態が維持されている。
- 低圧持続吸引器は胸腔内を一定の陰圧に保ち胸腔内に貯留した空気体液を排液するために用いられる。
- 気胸に対し低圧持続吸引により胸腔内の空気を排出し胸腔内を陰圧に維持すれば肺の受動陰圧が高まり肺の膨張を助ける。
- 陰圧がかかっていない場合には、胸腔内に貯留した空気や体液がドレナージされないだけでなく、胸腔内の陰圧が維持できず肺の膨張を妨げる。
- 肺ろうがある場合、低圧持続吸引器の低圧がかかっていないと、胸腔内に漏れ出した空気がドレナージされず胸腔内は陽圧となり、胸腔内に貯留した空気によって対側の肺や心臓を圧迫し、血圧低下やショックをきたす緊張性気胸になる危険性が高まる
最低陰圧での持続吸引
- 肺瘻がある場合には持続吸引によって逆に肺ろうを広げてしまう可能性がある。
- また肺ろうが大きな場合には持続吸引をしても、肺の膨張がえられないばかりでなく、健常肺への酸素供給が阻害され、低酸素血症に陥るリスクもある。
- したがって持続吸引する場合には、肺の膨張を得られる最低の陰圧で持続吸引すればよく、一般的には-10~-20cmH2Oとされている。
- 陰圧をかける支持をされた場合は設定圧の確認が必要になる。
いつから持続吸引を行うか
- 持続吸引するかどうかの判断はACCPによれば、ドレナージ後に肺が直ちに再膨張しなければ適応すべきとされている。
- さらにはドレナージ直後より、全症例で持続吸引を行うのも一方法であるとも述べられている
- またBTSによれば少なくとも挿入後48時間は水封で管理し48時間経過してもなお肺ろうが持続あるいは肺の膨張をえられない場合に持続吸引すべきとしている。
参考資料:看護技術ケアの疑問解決Q&A