クローン病患者の看護計画
#1腸管の炎症による腹痛や下痢による苦痛がある
看護診断 安楽障害
関連因子:腹痛、下痢の持続
診断指標:安楽でないという訴え、苦痛を感じる症状の訴え、疾患に関連する症状
看護目標
長期:苦痛が緩和する
短期:1)他者が自分の痛みを認めてくれて理解していると話す
2)痛みをコントロールするために非侵襲的疼痛緩和法を実施することができる
3)痛みの改善と日常生活動作を行うことができる
OーP
・痛みを表す言動を観察
・腹部の診察
・疼痛の部位と程度、その変化や増大要因と減少要因を尋ねる
・便の性状と排便回数
・肛門及び肛門周囲の観察
TーP
・どのような痛みなのか話してもらい、話に耳を傾ける
・安楽な体位を工夫する
・心身の安静と保温
・腹部の温罨法
・身体や寝衣、シーツを清潔に保つ
・肛門部の清潔保持
EーP
・腹圧をかけることと、腹部圧痛・マッサージをさける
・心身の安静の必要性を説明する
・腹部を冷やさないように気を付ける
・腹痛がある時は経口摂取を控えるように注意する
・疼痛緩和の方法を説明する
#2経口摂取不良や消化吸収不良による栄養状態の悪化が見られる
看護診断 栄養摂取消費バランス異常:必要量以下
関連因子:栄養の吸収ができない、持続する下痢、経口摂取困難
診断指標:1日推奨食物摂取量より少ない不十分な食物摂取の訴え、理想体重より20%以上少ない体重、筋力の低下、血清アルブミン値の低下
看護目標
長期:栄養必要量が摂取でき、栄養状態が改善する
短期:1)食事療法の注意点について理解できる
2)症状の変化に応じて食事で注意することを言える
3)必要な場合は自宅での経管栄養法、中心静脈栄養法を身につける
OーP
・食事及び成分栄養剤の内容と量
・体重の変化や血液検査データの変化
・食べられない食物についての情報収集
・口腔粘膜の状態、皮膚の張りやつや
・行動に伴う倦怠感や疲労の出現
・気力や精神状態の変化
・生活の変化や気がかりなことについて情報収集
TーP
・どういう食生活、食事のとり方がいいのか話し合う
・日々の生活を大事にしながら、どうしたら食事の準備や実行を効果的に生活に取り組んでいけるのか話し合う
・必要時には栄養士に相談する
EーP
・食事内容と食事方法が、体調や病状にどのように影響しているのかについて話し合い、食事が与える影響に気づけるようにする
・自分に合った食事をすることで再燃を防ぎ、また再燃しても重症化させずコントロールできることを伝える
・必要に応じて経管栄養法や中心静脈栄養法を指導する
・水分をとる時はコーヒーや紅茶、水よりもエネルギーのある飲み物を飲むよう指導する
・病状体調に合わせた栄養法と食事方法を指導する
・必要な栄養量の目安とタンパク質、脂質、食物繊維、ビタミン、ミネラルの摂取量の目安を指導する
#3下痢の持続により体液量、電解質が不均衡である
看護診断 電解質平衡異常リスク状態
危険因子:下痢、体液平衡異常
看護目標
長期:電解質異常を示さない
短期:1)水分必要量を摂取する
2)皮膚や粘膜が潤う
OーP
・経口摂取量をモニタする
・排泄量をモニタする
・尿比重の異常がないかチェックする
・脈拍を測定する
・口喝の有無や皮膚・粘膜の乾燥
・結成電解質、血中尿素窒素、クレアチニン、ヘマトクリット、ヘモグロビンをモニタする
TーP
・栄養法に合わせて必要水分量がとれるように調整する
・血液検査が適切に行われているかチェックする
EーP
・体液量不足のサインに気づけるように指導する
・食事摂取量を含めた経口摂取量と排泄回数及び便性状・量をモニタするよう指導する
#4腸管の炎症による下痢が見られる
看護診断 下痢
関連因子:腸管の吸収不良
診断指標:少なくとも1日に3回の軟らかな液状の便を排出する
看護目標
長期:下痢が改善する
短期:1)下痢を悪化させる原因について説明できる
2)脱水や電解質不均衡の徴候と症状を言葉で表すことができる
OーP
・排便回数と便の性状やにおい、排便の切迫の有無
・1日の生活と排便のリズム
・下痢に合併する症状や下痢による生活への影響
TーP
・においのない清潔な環境を整える
・症状に合わせて水分摂取を促したり、経管栄養法や中心静脈栄養法を実施する
・下痢や急性期の間は身体の活動量を減らす
・下痢の発症と特定食物の摂取との関係を確かめる
・腹部を冷やさないように注意する
・肛門周囲の皮膚をケアする
EーP
・下痢の悪化要因について説明する
・水分摂取時の注意について指導する
・肛門部の皮膚の清潔保持方法について説明する
・必要時には経管栄養法や中心静脈栄養法について教育する
#5予後、治療効果の不確かさに対処が困難である
看護診断 非効果的コーピング
関連因子:脅威を評価するパターンの混乱、緊張を和らげるパターン、入手可能な資源が不適切
診断指標:コーピングできないと言葉に出す、役割期待を満足できない、睡眠障害、ソーシャルサポート活用減少
看護目標
長期:効果的なコーピング方略を用いて事態から逃げずに対処する
短期:1)不安やストレスに寄与している因子を言葉で表すことができる
2)慢性状態への対処能力を向上するための方法を言葉で表現できる
OーP
・感情の状態とコーピング
・ストレス因子の知覚
・患者が現在のコーピングをどう知覚しているか
・睡眠パターンについて、熟眠感はあるか
・睡眠中の下痢や疼痛
・家庭内の役割
・社会活動、社会参加
・サポートシステムの利用の可能性とそれに対する満足
・家族や周囲の人々に対する要求
・患者自身がどうなりたいと思っているか
・不安のレベルと不安に関与している因子をアセスメントする
TーP
・ケアに関してある程度の主体性を与える
・患者の恐れや欲求不満に耳を傾けるために、毎日必ず時間をとってベッドサイドに座る
・効果的なコーピング方法を強化する
・緊張を緩和する活動を提供する
・少しでも不安を解消する手立てを一緒に考える
EーP
・不安を解消する方法を指導する
・患者会など有効な資源を伝える
#6疾患と治療法の知識不足により療養生活が困難である
看護診断 非効果的自己健康管理
関連因子:知識不足
診断指標:治療計画を毎日の生活に組み込むことができない、危険因子を減少させる行動をとることができない
看護目標
長期:医療専門職に報告しなければならない
短期:1)クローン病の特徴や治療法について説明できる
2)内服薬の目的と種類について説明できる
3)病状を悪化させる可能性のある要因について説明できる
4)病状悪化(再燃)について説明できる
OーP
・クローン病の症状と徴候の知識を観察
・クローン病の病状と治療の知識と観察
・今まで受けてきた治療の知識と観察
・服用している薬の知識と観察
・クローン病による合併症の知識と観察
・治療に関する知識と観察
TーP
・疾患や治療の説明を聞くのに適した環境となるようキーパーソンを含めたメンバー構成や場所を整える
・不安が強い場合には段階を踏んで進めるよう調整する
EーP
・クローン病の原因について説明する
・クローン病は寛解と再燃を繰り返す慢性疾患であること、予後や転機について説明する
・医師とも連携を取りクローン病の治療法について話す。
・クローン病の合併症について話す(腸閉塞、腸穿孔、関節炎、成長発達遅滞など)
・次の徴候と症状がある場合には、医療者へ報告するように患者に指導する
・患者会など利用可能な社会資源に関する情報を提供する
参考資料:疾患別看護過程