疾病の理解・高次脳機能障害

疾病の理解・高次脳機能障害

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疾病の理解・高次脳機能障害

定義

大脳には大きく分けて3つの機能がある。運動機能、近く機能、高次脳機能である。

高次脳機能とは、運動や感覚・近く機能では説明できない言語、動作、認知にかかわる脳機能すべてを指している

・ 高次脳機能障害

高次脳機能障害とは、脳に損傷を受けたことによって生じる認知障害全般、失語、執行、失認のほか機能障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などを表す

診断基準

① 主要症状など

・ 脳の器質的病変

・ 日常生活の障害や社会生活に制約がある

・ 記憶障害、注意障害、遂行機能障害、認知障害などがある

② 検査所見:MRI、CT、脳波などにより認知障害の原因と考えられる脳の器質的病変の存在が確認される

③ 除外項目

・ 脳の器質的病変に基づく認知障害のうち上記主要症状を欠くものは除外する

・ 診断にあたり脳疾患発症以前から有する症状と検査所見は除外する

・ 先天性疾患、周産期における脳損傷、発達障害、進行性疾患を原因とするものは除外する

④ 診断

・ ①~③をすべて満たした場合に高次脳機能障害と診断する

・ 高次脳機能障害の診断は脳の器質的病変の原因となった外傷や疾病の急性期症状を脱した後において行う

・ 神経心理学的検査の所見を参考にすることはできません

 

おもな症状と対応方法

1記憶障害

<症状>

① 前向性健忘:受傷や発症後の学習障害。新しい情報やエピソードを覚えることができなくなる

② 逆行性健忘:受傷や発症前の記憶の喪失。特にエピソードや体験に関する記憶が障害される

・ 軽度:最近の記憶や複雑な記憶でも部分的に覚えている。意味的関連のない項目を結び付けるなど難度の高い検査を行う

・ 中等度:古い記憶や体験的に習ったことなどは保たれている。最近の新しい記憶、複雑な事柄の記憶などは失われている

・ 重度:前向性健忘と逆行性健忘を含む全健忘、ほとんどすべての記憶の障害である

<対応方法>

・ カレンダー、メモ帳などの外的補助手段を活用する

・ 新しい課題は言語だけでなく視覚的にも説明する

・ 言語的記憶、視覚的記憶、作業記憶の評価をし、長所を用いる

・ 長すぎない短い情報を伝える

・ 作業記憶の限界を意識し、情報・支持はなるべく7秒以内の短文、単語で伝える

・ 重要なものの置き場所は固定する

・ 暗記した記憶より経験した記憶のほうが保たれやすい




2注意障害

<症状>

・ 集中困難、注意散漫:ある刺激に集中することが困難となり、他の刺激に注意を奪われやすい

・ 注意の持続、維持困難:軽度な注意障害でも長時間注意を維持させることは難しいことがある。時間の経過とともに課題の成績が低下する

<対応方法>

・ 環境刺激を少なくする

・ 何かを伝えるときは、必ず自分のほうを見ているか確認してから行う

・ 本人への指示は7秒以内のキーワードで単純明快に伝える

・ 話や課題が正確に理解できているか頻回に確認する

・ 少しでも出来たら、なるべくたくさんほめる

・半側空間無視:

脳損傷の反対側の空間の刺激を見落とすことをはじめとした半側虫行動がみられる。右半球損傷の場合、左側の無視がしばしばみられる

 

3遂行機能障害

<症状>

・ 目的に適した行動計画の障害:行動の目的、計画が障害されるため結果は成り行き任せか衝動的な行動をする

実行能力があるため段階的な方法で、指示されれば目的に適した行動をとることができる

・ 目的に適した行動の実行障害:

<対応方法>

・ あいまいな指示は避け、具体的かつ要領を得た言葉を使う

・ 指示を具体的に残すために、何でも書きだす

・ いつ、どこで、だれが、何を、どのように、その結果がどのようになるかを具体的に指示する

・ 決断しやすいように賛否両論をリストにする

 

4社会的行動障害

①意欲・発動性の低下

<症状>

自発的な活動が乏しく、運動障害がないのに1日中ベッドから離れられないとの無為な生活を送る

<対応方法>

・患者に対して、怠けているといわない

・患者は、わかっているができないということを理解する

・始めるきっかけを作って伝える

・喜怒哀楽を大げさに表現する

②情動コントロールの障害

<症状>

イライラした気分が徐々に過剰な感情的反応や攻撃的行動にエスカレートし、行動をコントロールすることができない。事故の障害を認めず訓練を頑固に拒否する

<対応方法>

・患者のことを批判したり否定したりしない

・患者の言うことを最後まで聞く

・本人がリセットできるような視覚的・言語的合図を出す

・不適切な行為は、はっきり指摘するが否定や避難はしない

・淡々とその行動発言がどう思われるかを伝える

・リラックスする方法を伝える

・過去に患者がイライラしたり、怒ったりした原因を繰り返さないようにする

③対人関係の障害

<症状>

高次脳機能障害者における社会的スキルの低下には、急な話題転換、過度に親密で脱抑制的な発言及び接近行動、相手の発言の復唱、文字面に従って施行、皮肉、抽象的な指示の認知が困難、様々な話題を生み出すことの困難が含まれる

<対応方法>

・患者のことを批判したり否定しない

・リラックスする方法を伝える

④依存的行動

<症状>

脳損傷後に人格機能が低下し退行を示す。この場合は発動性の低下を同時に呈していることが多い。その結果として依存的な生活を送る

<対応方法>

・できたことをほめる

・当事者にとって難しい課題は、扱えるくらいの難しさになるまで順序だてて教える

・興味が持てる、簡単で本人に親しみのある課題を提示する

⑤固執

<症状>

遂行機能障害の結果として、手順が確立していて習慣通りに行動すればうまくすますことができるが、新たに問題には対応できない。その際、高次脳機能障害者では認知ないし行動の転換の障害が生じ、従前の行動が再び出現し固着する

<対応方法>

・こだわっている事柄は何かを把握する

・こだわっている事柄を否定せず、受け入れられるように話を聞く

・話題を変えながら、こだわっている事柄から気をそらすようにする

 

 

参考資料:高齢者ケアガイドブック

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