筋委縮性側索硬化症患者の看護計画
共同問題
RC:呼吸不全
看護目標
長期:呼吸困難を軽減し患者が安楽に過ごせるように対処する
短期:呼吸筋の疲労を防止し胸郭の可動性を保つ
OP
・呼吸状態、痰貯留の有無、痰の量、性状
・バイタルサイン
・呼吸困難の有無と顔色、チアノーゼ、喘鳴の有無
・慢性肺胞低換気症状:睡眠障害、朝方の頭重や頭重感、集中力の低下、動作時の息切れ
・意識レベル
・咳嗽の有無、咳嗽時に痰喀出状況
・嚥下状態
・検査データ
TP
・呼吸しやすい体位
・咳嗽、深呼吸の練習
・必要時はタッピング、体位ドレナージ、吸引
・水分摂取の確保
・必要時は吸入、加湿器の使用
・体位変換
・安心するように声かける
・必要時はモニタ装着
・急変事は気道を確保し医師に報告する
・医師の指示に手酸素吸入、気管挿管、人工呼吸器装着の準備をする
・人工呼吸器装着時はその管理
EP
・有効な呼吸、深呼吸、咳嗽の必要性について説明する
・呼吸しやすい姿勢の説明
・呼吸筋リハビリテーションの説明
・呼吸困難が出現したら早急に報告するように説明
#1嚥下障害のために誤嚥、気道閉塞の危険性がある
看護診断 誤嚥リスク状態
危険因子:嚥下障害、神経筋系の障害
看護目標
長期:必要な栄養と水分が誤嚥なく摂取でき、経口摂取の限界を見極め代替え方法(経管栄養法)へ移行できる
短期:誤嚥性肺炎の徴候がない
OP
・嚥下、咀嚼状態
・食事に関するADL(食事時の姿勢、食事方法)
・気道浄化状態:痰の力、流延
・随伴症状の有無と程度(咳、誤嚥、悪心、嘔吐、つっかえ感、残留感)
・バイタルサイン:発熱の有無、呼吸状態
・検査
・食事摂取量と内容
・食事に対する思い:嚥下困難や食事内容について
・口腔内の状態
・食事時間
TP
・食べやすい環境調整
・嚥下しやすい体位の工夫
・咳嗽力を高める呼吸理学療法、機械的咳介助の方法
・嚥下状態と嗜好を考慮した食事内容に変更する
・半固形物や増粘剤の利用
・必要時排痰援助や吸引など気道浄化を援助する
・食事後の口腔内の保清
・咀嚼筋のリハビリテーションを行う
・嚥下状態が悪くなればいしに報告する
・必要時は経管栄養、輸液管理、水分出納管理を行う
EP
・慌てずゆっくり食事をとるように指導する
・うまく嚥下できないときはゆっくり呼吸を整えるように説明する
・咀嚼筋のリハビリテーションについて説明する
・嚥下障害を起こしやすい食物を避けるように指導する
・家族に食事介助方法やその留意点について説明する
・経口摂取の限界、意思決定の支援
#2筋委縮、嚥下障害があり栄養を必要量摂取できない
看護診断 栄養摂取消費バランス異常:必要量以下
関連因子:筋委縮、蛋白異化亢進
診断指標:嚥下困難の徴候、理想体重より20%以上少ない体重、嚥下や咀嚼に必要な筋力
看護目標
長期:必要な栄養摂取ができ、低栄養状態に陥らない
短期:必要な介助、代替え方法により栄養摂取ができる
OP
・食事に関するADL
・筋力程度、筋委縮の程度
・四肢拘縮の有無と程度
・嚥下咀嚼状態
・栄養状態のチェック
・食事摂取量、水分摂取量の内容
・食事中の疲労度と食事時間
・体重の推移
・食事に対する思い、経管栄養法の受け入れ
・嗜好品
・口腔内の状態
TP
・食べやすい環境管理
・嚥下しやすい体位の工夫
・必要時、排痰援助や吸引など気道浄化
・摂取する順序の工夫
・自助具の説明
・嚥下状態と嗜好を考慮した食事内容に変更する
・嚥下反射の利用
・半固形物や増粘剤の利用
・摂取する順序の工夫
・食事後の口腔内の補整
・咀嚼筋のリハビリテーションを行う
・嚥下状態が悪くなればいしに報告する
・必要時は経管栄養、輸液管理、水分出納管理を行う
・精神的に支持し励ます
EP
・ゆっくり食べるよう説明する
・うまく嚥下できないときは呼吸をゆっくり整えるよう説明する
・呼吸筋のリハビリテーションについて説明する
・家族にも食事介助方法やその留意点について説明する
・栄養の不足や食の楽しみを補うため、家族に患者の好きな食物を持ってきてもらう
・代替え法の一つである経管栄養法について、正しい認識が得られるよう説明する
#3身体可動性障害のために日常生活に支障をきたしている
看護診断 セルフケア不足シンドローム
関連因子:筋力低下、委縮、拘縮
診断指標:食事行為に関するセルフケア不足、入浴行為に関するセルフケア不足、排泄行為に関するセルフケア不足、更衣行為に関するセルフケア不足
看護目標
長期:援助を得ながら日常生活動作が保持できる
短期:ADLが充足できる
OP
・筋力低下、筋委縮の程度
・食事、清潔、行為、排泄に関するADL
・四肢拘縮の有無と程度
・食事時間、方法
・口腔内の状態
・排尿回数、排尿間隔
・排便回数、排便感覚
・皮膚の状態
TP
・全身清拭、入浴など保清援助
・できない部分を介助する
・患者のADLにあった介助を行う
・口腔内の保清
・爪切り
・衣服の工夫
・自力でできる人は手の届く位置に物品を置くなど環境を整える
・排便習慣の確立
・患者のADLに合わせて介助する
・尿器が使える人は手の届く位置に置くなど環境を整える
・プライバシーを保持する
EP
・不可能な部分は介助を求めるように説明する
・家族にも患者のADLの情報を提供し、できるだけ見守るように説明する
・着脱しやすい衣服を用意してもらう
・自宅でのトイレなど環境の整備(作業療法、ソーシャルワーカーの利用)
#4構音障害のためにコミュニケーションがとりにくい
看護診断 言語的コミュニケーション障害
関連因子:中枢神経系の変調
診断指標:話すのが困難、呼吸困難
看護目標
長期:意志や欲求の伝達が円滑に行える
短期:障害を補完する代替え手段が維持できる
OP
・発声、構音障害の程度
・声の大きさ、話す速さ、口の動き
・呼吸状態
・表情や程度
・精神状態
・残存機能の程度
・コミュニケーション障害の潜在的状態
・聴力視力に影響する症状
TP
・できるだけ患者が話しやすいように声をかける
・根気よく患者の伝えようとしている言葉を理解するように努める
・会話の時間に余裕を持ち、焦らないような環境を作る
・頻回に訪室しコミュニケーションを図る
・障害の程度に合わせコミュニケーション方法を相談・選択・工夫する
・ナースコールの工夫(センサーや足用コールなど)
・呼吸・発語訓練
・患者の具体的な欲求を筆記しておき、スタッフ間で統一できるようにする
・家族とコミュニケーションがとれるように間に入り、家族関係を保てるようにする
・散歩などの気分転換を行う
EP
・ゆっくり大きく口を開けて発声するように説明する
・代替え手段に関する情報を提供する
・家族にコミュニケーションの取り方を説明する
#5筋力低下、筋委縮に伴う身体運動の障害のため転倒や外傷の危険がある
看護診断 身体損傷リスク状態
危険因子:身体的因子(全身の筋委縮と筋力低下)
看護目標
長期:廃用症候群を予防できる
短期:転倒することなく日常生活が送れる
OP
・筋力低下、筋委縮の程度
・歩行や移動に関するADL
・筋委縮に伴う疼痛、不快症状
・四肢拘縮の有無と程度
・ベッド周囲の環境
TP
・ADLに合わせた援助を行う
・体調の悪い時は手すり、杖、車いすなどの利用を進める
・廃用症候群の予防のため疲労が残らない程度の機能訓練や日常生活の中でリハビリテーションを行う
・生活の中に背面開放座位などを取り入れて寝たきりに移行させない
・他動的な関節拘縮予防などを行う
・環境整備:発作時の身軽な服装、床や病室などの環境整備、照明など
EP
・適宜適切な介助を求めるよう説明する
・家族に患者のADLの情報を提供しできるだけ見守るよう説明する
・OT、PTの指導をもとに、自動運動の必要性を説明する
#6筋力低下に関連して排便パターンに変調をきたしやすい
看護診断 便秘
関連因子:筋力低下
診断指標:固い有形便、排便回数の減少
看護目標
長期:排便がコントロールされ快便感がえられる
短期:定期的に排便できる
OP
・ADLの把握
・筋力低下、筋委縮の程度
・四肢拘縮の有無と程度
・排便状態、排便間隔
・努責の有無
・腹部膨満感、腸蠕動音
・食事量とその内容、水分量
TP
・水分摂取を促す
・腹部マッサージ
・排ガス
・温罨法
・医師の指示により座薬、浣腸、緩下剤を使用
・排便困難時は必要に応じて摘便施行
EP
・排便コントロールの必要性について説明する
・肛門括約筋の筋力維持の必要性、その方法を説明する
#7疾患の性質、予後、役割障害に関連して悲嘆、不安がある
看護診断 悲嘆
関連因子:身体機能の喪失
診断指標:心理的苦悩、絶望
看護診断:不安
関連因子:健康状態の変化、健康状態に対する脅威
診断指標:いらいら、緊張した表情
看護目標
長期:1)悲嘆の思いを表出できる
2)不安が軽減される
OP
・悲嘆の訴え、睡眠状態
・表情、口調、イライラ、緊張感
・疾患の理解や受け止め方
・医師からの病状説明の内容
・痛み、しびれ、締め付け、脱力、硬直振戦などの症状悪化の有無
・予後に対する患者の受け止め方
・患者が信頼している人
・面会状況、家族の言動、接し方、受け止め方、家族構成
・患者が求める情報の量、質
TP
・処置や治療を行う際は説明しながら行う
・コミュニケーションを頻回に行い、支持的態度で接する
・落ち着いた態度で接する
・医師から病状説明をしてもらう
・疾患病状予後に対する言語の統一を図り、患者が混乱しないように配慮する
・散歩などで気分転換を図る
・不眠が続く時は環境調整と医師へ報告
・多職場の連携に基づくチームアプローチで全人的ケアを提供する
EP
・精神的動揺がある時は一人で悩まないで伝えるよう説明する
・家族患者の信頼している人の面会を多くしてもらう
#8疾患の性質、予後、役割障害に関連して家族プロセスに変調をきたす
看護診断 家族機能破綻
関連因子:家族の健康状態の変移
診断指標:コミュニケーションパターンの変化
看護診断 介護者役割緊張
関連因子:疾患の重症度、ケアニーズの増大
診断指標:ケア利用者の健康状態の将来像に関する心配、介護者のケア提供能力の将来像に関する心配
看護目標
長期:1)家族が思いを表出でき円滑な関係を保つことができる
2)介護者の負担が軽減できる
OP
・患者家族の負担、欲求、思い
・患者家族の役割(キーパーソンは)
・家族間の役割、協力体制
・家族間のコミュニケーション
・家族の健康状態、疲労度
・社会資源に対する知識
・家族のストレスに対する適応能力
TP
・必要に応じた社会資源の活用及び情報提供
・他職種と連携を図る
・必要時は医師から患者家族に病状の説明をしてもらう
・家族の訴えや不安を傾聴し、より良い方法を提供する
・家族とのコミュニケーションがとれるように間に立ち、家族関係を保てるようにする
・家族の疲労が予測される場合は早めに休養がとれるように配慮する
・在宅療養に向けて地域支援チームを形成する
EP
・家族にコミュニケーション方法を説明する
・家族に介護方法を説明する
・キーパーソンを中心に統一した説明をする
参考資料:疾患別看護過程