肝臓がん患者の看護計画
#1低換気の恐れがある
看護診断 非効果的呼吸パターン
関連因子:低換気症候群、疼痛、全身麻酔、疲労、体位
診断指標:呼吸の深さの変調、呼吸困難、肺活量の減少
看護目標
長期:術後呼吸器合併症を起こさず、適正な換気が保持できる
短期:1)必要に応じ1日5~6回深呼吸運動と咳嗽訓練が実施できる
2)早期離床ができ歩行範囲を拡大できる
3)最大の呼吸機能に到達できる
4)呼吸訓練を行う重要性を説明できる
OーP
・バイタルサイン、酸素飽和度
・四肢冷感、チアノーゼ、肺音、咳嗽、痰の性状
・胸部X線・超音波検査
・尿量
・痰喀出、呼吸困難
TーP
・指示された薬の確実な与薬
・口腔内の保清と気道の清浄化
・喀痰困難時は排出を介助する
・定期的な呼吸訓練の実施と介助
・体位変換、離床、歩行など活動性の促進
EーP
・呼吸器合併症の説明と予防のための呼吸訓練治療法の必要性の説明
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#2疼痛や倦怠感による苦痛がある
看護診断 安楽障害
関連因子:肝臓がん、手術
診断指標:苦痛を感じる症状の訴え、治療に関連した有害作用、不安、安楽でないという訴え
看護目標
長期:苦痛を表出でき、軽減するあるいは悪化しない
短期:1)苦痛があることや症状について具体的に表出できる
2)苦痛緩和のための処置やケアに協力・実践できる
3)苦痛が和らぎ日常生活が増加したと述べることができる
OーP
・苦痛や不快に関する言動、苦痛や不快のレベル
・苦痛緩和の治療・処置に対する理解や受け止め、苦痛をこらえていないか
・苦痛の増強・緩和因子、気分転換の方法、苦痛による日常生活への影響
TーP
・苦痛の訴えをよく聞き、患者と相談納得の上で緩和治療や処置を行う
・日中は休息できる時間を設け夜間は中断されない睡眠環境を提供する
EーP
・苦痛を我慢せず伝えるように説明する
・苦痛と治療に関する誤解がないか話し合い、納得できるように説明する
・苦痛緩和のために実施可能な種々の手段について説明、実施や介助を指導する
#3感染・縫合不全の恐れがある
看護診断 感染リスク状態
危険因子:肝臓がん、観血的処置、栄養不良、免疫抑制
看護目標
長期:感染や縫合不全の徴候がなく創が治癒する
短期:1)感染予防のための創処置や身体清潔の必要性が理解でき述べられる
2)感染予防のケアや処置に協力できる
3)手洗いやうがいなど感染予防が実行できる
4)38度以上の発熱や炎症データの上昇及び創の感染徴候がない
OーP
・術前の感染リスク:年齢、体格、栄養状態、肝機能障害、喫煙習慣
・術式及び侵襲
・感染徴候:発熱、創の発赤、腫脹、疼痛、排膿、白血球
TーP
・感染源の侵襲防止:手洗い、清潔操作、隔離
・栄養状態の改善:輸液管理、アルブミン投与
EーP
・感染徴候と症状、危険因子について患者と家族に説明する
#4低栄養状態にある
看護診断 栄養摂取消費バランス異常:必要量以下
関連因子:手術、糖代謝障害、肝臓がん
診断指標:低たんぱく、低アルブミン血症、摂食に対する憎悪
看護目標
長期:栄養状態と経口摂取量が維持・改善できる
短期:1)栄養管理と経口摂取量の必要性が説明できる
2)栄養改善のために必要な処置や食事摂取の増加に協力できる
OーP
・栄養データ:総蛋白、アルブミン、ヘモグロビン、中性脂肪など
・体重
・腹囲
・浮腫、腹水の有無と程度
TーP
・適切なエネルギーや栄養素を定め指示に基づいた輸液や食事摂取を促す
・食事の雰囲気、食前の休息、一度の食べられないときの分割食の工夫をする
・食事前の不快や痛みを伴う処置やケアの実施を調整する
・口腔内を清潔に保つ
EーP
・適切な栄養摂取と口腔内保清の必要性を説明する
#5安静や疼痛によりADLが制約される
看護診断 活動耐性低下
関連因子:床上安静、体動不能、全身衰弱
診断指標:労作時の呼吸困難、労作時の不快感
看護目標
長期:身体的苦痛、栄養状態や浮腫が改善し、ADLが増す
短期:1)活動性を低下させる因子を述べる
2)術後回復状況に応じたADLができるようになる
3)活動増加による呼吸・循環への影響の減少が示される
4)活動に伴う息切れや動機の減少を報告する
OーP
・安静時、活動直後のバイタルサイン、活動中の不整脈や脈圧低下、活動後の頻呼吸、頻脈、酸素飽和度の低下の有無
・活動低下の受け止め
TーP
・バイタルサインの強い変動や自覚症状の増強がある場合、活動負荷、頻度、継続時間を減らす
・活動の段階的な増加:長期臥床中の患者へのROM運動の実施、安静と活動時間の調整による運動体制を増加する
・必要に応じてフォローアップのため訪問看護師や訪問リハビリテーションを紹介する
EーP
・活動のためのエネルギー温存方法を指導する
・家庭でも長く続けられる運動方法をPTに相談し指導する
#6術後せん妄による危険行動や身体損傷の恐れがある
看護診断 身体損傷リスク状態
危険因子:手術、術後せん妄、不安定な歩行、低栄養、浮腫、出血傾向、肝性脳症
看護目標
長期:転倒することなく安定した自力歩行ができるようになり、身体を損傷しない
短期:1)身体損傷の危険因子を理解し述べることができる
2)身体損傷を予防する行動をとることができる
3)身体損傷の危険因子を減らすことができる
OーP
・苦痛の程度
・精神状態と理解力の変化の有無
・術後安静による筋力や歩行能力の衰えの有無と程度
・栄養状態
・浮腫状態
・出血傾向や肝性脳症の有無と程度
・ベッド周囲の環境
・履物
・ナースコールの理解やケアへの協力
・歩行移動の介助と足元の照明
TーP
・ベッド上安静や歩行が不安定な間は、排泄や移動、体位変換時に介助を行う
・転倒や転落を防ぐようベッド柵や高さ、ベッド周囲の環境、歩行経路の環境を整備し歩きやすい履物に配慮する
・身体の清潔保持に心がけ身体損傷を防ぐ
・意識障害がある時には常に見守るか、医師の指示と家族の同意に基づき身体拘束による安全確保を行う
・テープやドレーン、同一体位による皮膚や粘膜の損傷に注意しケアする
EーP
・安静中や歩行が不安定で安全が確保できない場合、患者家族に身体損傷の危険を説明しナースコールを使用するよう説明する
・やむを得ず身体拘束を実施している場合は患者家族に必要性を説明し、面会時の注意を指導する
・過程では床やふろ場の滑りやすさへの注意、必要に応じて手すりの設置、移動しやすい環境を整えるよう指導する
#7肝臓がんや術後に関連した自尊感情の低下がみられる
看護診断 自尊感情状況的低下
関連因子:ボディイメージの混乱、喪失、価値観と一致しない行動、拒絶
診断指標:術後の状況にうまく対処できないと自己評価する、孤立無援であると表明する、自己否定的な発言をする、優柔不断な行動
看護目標
長期:術後の自分を受け入れられる準備ができる
短期:1)術後の状態や自分の変化を歪みない現実的な態度で評価できる
2)自分自身に対する関心や感情が豊かになったことを表現できる
3)術後の適応や対処に向けた言動を示すことができる
OーP
・癌や手術、生活復帰や将来に関する理解、受け止め方、術後の心身の状況と理解およびとらえ方、感情
・患者自身の感じ方、考え方、味方、ケア提供者に対する感情、心身の安定や状況への適応程度、対処行動
TーP
・患者自身に関する感情表現を励まし否定的な評価をせず受け止める
・癌や術後経過予後に関する疑問や不安について質問するよう励ます
・正しい情報を提供し理解を促す。患者自身や医療者に対する誤解を解く
・プライバシーと安全な環境を提供する
・状況への適応に応じた対処や支援を後押しする
EーP
・疾患や術後経過への疑問、不安などの感情を伝えるよう説明する
・必要に応じてた職種や社会資源の利用について助言や指導をする
#8術後の新たな療養生活への不安がある
看護診断 不安
関連因子:癌術後、慢性肝障害、再発リスクが高い、新たな療養生活への適応に関する心配
診断指標:不眠、人生の出来事の変化による心配を表明する、問題解決能力の減弱
看護目標
長期:通常の対処で不安や葛藤が増強しない
短期:1)不安や対処パターンについて話すことができる
2)心身が安楽になったと述べることができる
3)不安やマネジメントする効果的な対処方略を用いることができる
OーP
・不安の徴候や言動、不安の程度
・術後の家庭や社会に戻ることへの不安や気がかりの有無と内容
TーP
・安心と安楽の提供:そばにいる、ゆったり静かに話す
・過剰な刺激を遠ざける
・緊張を和らげるケアを提供する
・家族に配慮する
EーP
・心配や脅威、緊張などの気持ちを我慢せず看護師に伝えるように説明する
参考資料:疾患別看護過程