片麻痺患者の移動と移送の手順
移動と移送の援助の手順
車椅子(移乗・移送)
- 車椅子は、座位は可能であるが歩行ができない患者を、安全かつ安楽に目的の場所に移送するために用いる
- 車椅子には、患者自身がタイヤを回して移動できる自走式、介助者が押す前提でタイヤが小さい介助式、自走式介助式兼用車椅子がある。
- そのほかのバリエーションとして背もたれが動くリクライニング式のもの、移乗しやすいようにアームレストが跳ね上げ式になったもの、片麻痺患者用の片手操作型、スポーツタイプ、電動車いすなど多様な種類がある
ベッドから車椅子への移乗の準備
- 物品:車椅子(自走式:患者自身がタイヤを回すためのハンドリム付き)
- 看護師:手指衛生
- 患者:移動の目的、車椅子使用を説明し、同意を得る
- 下準備:①移乗しやすいようにベッド及びその周囲を整える②車椅子の点検整備(ブレーキの効き具合、キャスタータイヤの空気圧、フットレスの開閉)を確認する③必要に応じて車イスに酸素ボンベ架台や支柱(スタンド)を取り付ける
ベッドから車椅子への移乗の実際(全介助:患者の力をほとんど期待できない対麻痺患者などの場合)
① 車イスを患者の斜め前方約30~45度の位置に置き、ブレーキをかける。
※ 自立した患者が使用する場合は45度に置くのが動線が最も少なくて済む。ただし要介助の患者が使用する場合は、看護師の立つスペースを考えて30度の近い方が介助しやすい
・ 車いすは患者の左右どちら側においても良い
・ 車いすのフットレストを上げる
② 患者の状態を起こしてベッドの端に腰かけさせる
③ 患者と向かい合い、車椅子から遠い方の足を患者の足の間に入れ、車椅子に近い方の足を後ろへ引いて立つ
④ 患者の骨盤部を手前に引き寄せ、上半身を前傾させ、患者の両腕を看護師の肩か腰に回してもらい、看護師の肩にもたれるように重心を移動させる
※ 立ち上がる際にたとえば「いち、にい、さん、はい」と声掛けし、患者に移乗の心づもりをさせると良い
⑤ 患者の腰に腕を回して脇を締め、しっかりと患者を抱える
・ 患者の上半身が前かがみになるようにする
⑥ そのままの姿勢で回転する
※ 一方の足はベッド側、もう一方の足は車椅子側に向けておくと足を履みかえることなく回転できる。足を履みかえると一瞬の間片足立ちになり体重の重い人の場合、支えきれずに転倒する可能性がある
⑦ ゆっくり車いすに座らせる
※ 患者の腰を曲げるコツ:患者の腸骨部下方を手で押すと簡単に腰が折れ曲がる
⑧ 車イスに深く座らせる
・ 患者の背部に回り患者に腕を組ませ、脇の下から手を入れる
・ 肘に近い部分をもって患者の状態を手前に引き寄せる。
できれば患者に前傾姿勢をとってもらうと、患者の身体がコンパクトにまとまり少ない力で移乗の介助ができる。
その後フットレスに患者の足を乗せ、深く座れたかどうかを確認し調整する。
この深く座らせる方法は患者の姿勢が崩れたり車椅子からずり落ちそうになったりした場合にも使用できる
ベッドから車椅子への移乗の実際(片麻痺患者の場合)
① 車イスを患者の健側の斜め前方約45度の位置に置き、ブレーキをかける。
・ ブレーキをかけ動かないことを確認したらフットレストを上げておく
※ フットレストを上げておくのは、車椅子乗車時に直接フットレストに足をかけて乗ると体重がフットレストにかかり、重心が偏って車椅子が倒れる危険性があるからである
② 健側下肢を患側下肢の下に入れてベッドの外まで支えながらだし、ベッド上端座位になる
・ 起き上がる時には腰をなるべく前方にずらしておく
③ 健側上肢で車いすのアームレストの遠い方を持ち健側下肢に体重をかけて立ち上がる
※ 遠い方のアームレストを持つのは、患者が車椅子のアームレストを持ち替え図に吸われるからである
④ 患側下肢を軸にして身体を回転させ、車いすに座る
・ 患者自身で深く座ることが出来ない場合は、看護師が介助する
車椅子からベッドへの移乗の実際(片麻痺患者の場合)
① ベッドが患者の健側の斜め前方約30~45度に来るように車椅子をつけてブレーキをかける
・ 患者から見て移乗先が常に健側の斜め前方になるようにする
※ 車イスをベッドと並行に置くとフットレストが邪魔になる。身体の回転だけで移動できる角度が約30~45度である
② ベッドに健側の手掌を置き、健側上肢で体重を支えながら立ち上がる
③ ベッドに置いた手掌を枕の方にずらせてベッドに腰を下ろす
④ 上体をベッドに寝かせたら、健側下肢で患側下肢を支えてベッド上に上げ、まっすぐになるようにおろす
⑤ 看護師は車いすを片付ける
参考資料:看護技術プラクティス