移動と移送の援助の手順について
移動と移送の援助の手順
ストレッチャー(移乗・移送)
- 自分で動くことが出来ない、あるいはベッド上安静が必要な患者を、寝たままの状態で安全かつ安楽に目的の場所へ移送する場合にストレッチャーを使う
- ストレッチャーで移送する患者は重症であり、留置カテーテルなどの体内挿入物や酸素療法などの処置が行われていることが多い。したがって移動の際しては、患者の状態の変化に注意しチューブ類の外れなど事故のないように配慮する。そのためには状況に応じて患者の移動に必要な人数を十分確保する
- ベッドからストレッチャーへの移乗方法には、ベッド間を平行移動して移乗する方法と、患者を抱え上げて移乗する方法がある
- ベッド周囲に確保できる広さにもよるが、平行移乗は最も移動距離が短く患者にとっても不安が少なく安楽である
- 最近では患者を抱えたり持ち上げたりするのではなく、水平に滑らせて移動できる介助用具が多く用いられている。できるだけ既存の道具をうまく使いこなし、身体に負担をかけないようにする
- 移動用介助マットは、滑りやすい素材で作られている為、摩擦抵抗が少なくわずかな力で滑るように移動することが出来る
- ストレッチャーベッド間の移乗の他、ベッドから車椅子への移乗、ベッド上での移動にも使用できる
ベッドからストレッチャーへの移乗の実際(平衡移乗する場合)
① ストレッチャーの高さをベッドと水平になるようにそろえる
② ストレッチャーはベッドと隙間なく平衡に置き、両方にストッパーをかけておく
③ 患者を看護師側(ストレッチャーと逆側)に側臥位にする
④ 移動用マットを患者の下に敷き込む
⑤ 患者を移動用マットの上に仰臥位にし、患者の両手を患者の胸の前で組むようにする
※患者の身体をコンパクトにまとめると移動しやすい
⑥ ベッド上をスライドさせてストレッチャーに移動する
※速いスピードでスライドさせると、気分が悪くなったり恐怖心が出てくるので声をかけながらゆっくり行う
⑦ 移乗後必ずサイドレールを取り付け、転落防止をはかる
・ 必要に応じて安全ベルトを装着する
ベッドからストレッチャーへの移乗の実際(患者を抱え上げて移乗する場合)
① ストレッチャの頭部がベッドの足側に来るように、ストレッチャーをベッドに対して斜めの角度に置き、ストッパーをかける
② 看護師3人は、ベッドとストレッチャーの間に立つ
③ 患者の両手を前に組むようにする
④ 患者の身体を3等分(頭部、腰部、足部)した位置で、身体の下に手を入れる
⑤ 3人で声をかけて同時に手前に引き寄せる
⑥ 3人で患者を抱き上げたら、看護師側の方へ抱え込み患者の足の方を先に回転しながら移動する
※看護師側の方へ抱え込むと、患者が広い面で支持を受けることが出来、安心感を持つことが出来る。また患者と看護師たちの重心が近くなるため、支える力が少なくて済む
・ 抱き上げる時は、肘を身体にぴったり付け90度曲げた前腕に乗せるイメージで行う
⑦ 患者を臀部、下肢、頭部の順にストレッチャーにおろす
ストレッチャーでの移送の実際
① 移送する時は必ずサイドレールを取り付け、転落防止をはかる
・ 必要に応じて安全ベルトを装着する
② ストレッチャーを移送しやすい高さに調節する
③ 通常は足元を先にして進む
・ 傾斜での移送は、上る時は頭部、降りる時は足元を先にし傾斜の高い方に頭が来るようにする
④ わずかな段差でも車輪を持ち上げるようにして移動し、振動を少なくする
⑤ 移送中のストレッチャーの後方を担当する看護師は、常に患者の状態を観察しながら移送する
参考資料:看護技術プラクティス