歩行介助の手順
移動と移送の援助の手順
- 移動することによって、日常生活の行動範囲は広がり生活に活気と充実感がもたらされる。
- 歩行は移動の基本である。しかし、長期間にわたる臥床(長期臥床患者が歩行を始める場合)視力障害や麻痺などの身体障害、廊下の為の機能低下などにより一人で歩行することが危険であったり自ら移動動作が出来ない場合がある。
- 患者の状況を見極め、安全に歩行ができるのか車椅子あるいはストレッチャーを使用する必要があるのか、適切な移動の方法を選択する
- いずれの場合でも、移動移送で最も気を付けなければならないことは、患者の安全であり移動時のチューブ類の外れや、移送中の転倒・転落などの事故を防止することである。
目的
- 目的の場所まで安全に安楽に移動することを介助する
適応
- 長期間にわたる臥床などで運動機能が低下していたり、術後の離床など一人の移動が不安定な患者
- 意識障害や運動機能障害などにより、自力で動くことが出来ない患者
- 治療や検査などの為に安静を強いられ、行動を制限されている患者
知っておくべき情報
実施するために必要な情報
{患者の状況}
- 疾患の種類と程度(医師からの制限事項の有無)
- 運動機能の状態(移動動作に影響する障害の有無と程度)
- 体内への挿入物(留置カテーテルやチューブなど)
- 患者の移動に関する意思・認知レベル
- 年齢や体格
- 移動の目的(生活遂行上の手段なのか・訓練なのか)
{介助者の状況}
- 介助者の体格
- 介助者の数と技術
- 活用可能な物品
{移動場所までの環境}
- 病室の広さやドアとの位置関係
- 目的地までの距離や段差の有無
- 目的地の設備や環境
方法
{移動手段}
- 歩行:自力、杖、歩行器
- 車椅子
- ストレッチャー
- 担架
{介助方法}
- 自立
- 見守り
- 部分介助
- 全介助
援助の評価
{安全安楽}
- 転倒転落の有無
- 体内挿入物の異常(外れなど)の有無
- 一般状態の変化及び疲労感の程度
- 移動手段、介助方法
歩行介助
- 歩行介助が必要な患者には常に転倒の危険がある。看護師は歩行介助用の道具や歩行補助具、患者がバランスを崩しそうになった時の対処法について知っておく
- 歩行補助具には杖や歩行器があり、不安定ながらも立位が可能な患者に用いられる。これらは体重が下肢にかかる負担を軽減し、支持基底面を広く保ち安定性を増すことによってバランスを保って歩行を補助する。
- 安定の条件①立位時の重心線が支持基底面の内側にあること。その上でさらに安定させるには②重心が低いこと③支持基底面の面積が広いことが挙げられる
歩行介助の準備
- 看護師:手指衛生
- 患者:①移動の目的を伝え、介助する旨を説明し同意を得る②歩行にふさわしい履物、服装になってもらう
- 下準備:①歩行予定コース内に障害物や危険物がないことを確認しておく②万が一転倒した時に周囲を巻き込まないように、人が集まっている場所を避けて通行する
歩行介助の実際(歩行補助具なしの場合)
- ①全身状態を観察する
- ②創部やドレーン挿入部位の保護・固定を行い、輸液ライン、チューブ、カテーテルの接続は安全かどうか確認する
- ③歩行にふさわしい履物、服装をしているかどうかを確認する
- ※スリッパのようなかがとのない履物は滑ったり、脱げたりして転倒の危険性がある。また裾の長すぎるズボンなどは足に絡んでつまづく危険性がある
- ④看護師は患側斜め後方に立つ
- ※患側斜め後方に立つと、患者がバランスを崩した時安全に効果的に支えることが出来る
患者のどちら側に立つかの基本
- 患者の障害のある場合は、患者の患側
- 手すりを持って移動するときは、手すりの反対側
- 特に条件がない場合は患者の利き手の反対側
- 輸液ラインがある場合は、輸液ラインが入っていないがわ
- ⑤看護師が立っている側の同じ側の腕の母指を患者の母指と交差するように下から手を軽く握る
- ⑥もう片方の手を患者のわきに軽く差し入れ、軽く上腕を支える
- この時上腕を軽く持つ程度で強くつかまないようにする。強くつかむと患者が返って歩きにくく歩行ペースが乱れる
- このようにすることで患者と看護師の位置は近くなり、患者がバランスを崩しても支えやすくなる
- ⑦必要に応じて患者の身体を手で支え、患者の服装に腰ひもやベルトがあればそれを把持して、進む方向の安全確認をしながら患者の方の速度に合わせて歩く
- ※ベルトを持つと常に身体の一部を手で支えられているという煩わしさを患者に感じさせずに、不安定になった時に瞬時に支えることが出来ます
- ⑧患者の歩くペースに合わせて歩く
患者がバランスを崩しそうになった時の対応
- 患者がバランスを崩して倒れそうになった時、初心者の看護師はとかく力任せに支えようとする傾向があるが、かえって共倒れになり危険である。躊躇せずに患者を上手に床に座らせた方が安全である
- 転倒の危険性のある患者には、先ず安全な転び方、次に起き上がり方を指導する
- ⑨段差のあるところでは、上る時は健側下肢、降りる時は患側下肢から前に出す
参考資料:看護技術プラクティス