白血病患者の看護計画
#1易感染状態で感染症を発症しやすい
看護診断 感染リスク状態
危険因子:薬物、不適切な第一次防御機構、不適切な第二次次防御機構
看護目標
長期:重篤な感染を起こさず、化学療法を安全に乗り越えていくことができる
短期:1)感染を起こさない
2)感染予防行動を理解し実施することができる
OーP
・血液検査データ
・感染しやすい部位症状
口腔(舌、歯肉、粘膜):発赤、腫脹、疼痛
呼吸器(上気道、肺、気管支):鼻汁、くしゃみ、発赤、咳、痰、呼吸困難
消化器(胃、腸粘膜):悪心、下痢、腹痛
皮膚:発赤、腫脹、疼痛、肛門周囲膿瘍
尿路:頻尿、残尿、排尿時痛、尿混濁
性器:かゆみ、帯下の増加
・発熱の有無
・栄養状態
TーP
・環境整備
・白血球が1000以下が続く時は個室管理っか高性能微粒子フイルタ装具の病室が望ましい
・面会を制限する
・皮膚粘膜の清潔を保ち損傷を防ぐ
・口腔ケア
・排便後は温水洗浄便座を使用し陰部の清潔を保つ
・中心静脈ラインなどの身体への挿入物の管理
・栄養状態と水分摂取量を維持する
・生ものの摂取を禁止する
・ストレスの緩和を図る。気分転換など
・発熱時は解熱、鎮痛、症状緩和を図る
EーP
・感染予防の必要性を説明する
・白血球炎症反応などの血液検査のデータのみかたと意味を説明する
・手洗い、マスク、口腔ケア、面会制限、活動制限などの感染予防行動について説明する
・感染徴候を患者自身でも早期に発見できるように、感染しやすい部位や症状について説明する
・とくに些細な自覚症状、肛門周囲の炎症など言い出しにくい自覚症状も隠さず教えてほしいこと、感染の早期発見の重要性を説明する
#2出血しやすい
看護診断 身体損傷リスク状態
危険因子:血液体液成分の異常、化学内因子、栄養因子
看護目標
長期:致命的な出血を起こさず、化学療法を安全に乗り越えていくことができる
短期:1)出血の誘因を回避し、出血を予防できる
2)転倒しない
OーP
・出血傾向を示すデータ
・ヘモグロビン値、貧血症状
・出血しやすい部位と症状
・全身状態
・末梢神経障害
・意識レベル
・生活行動
・栄養状態
TーP
(出血予防)
・安静を図る
・起立性低血圧、めまいに注意する
・ベッド周囲、廊下など環境整備をする
・清拭時、皮膚粘膜を強くこすらない
・皮膚、粘膜の清潔、適度な湿潤を保つ
・血圧測定時、採血時など駆血帯を強くまかない
(出血時の対処)
・皮膚:清潔な布やガーゼで圧迫止血する
・眼底:安静を促す
・鼻腔:安静にし、鼻翼を圧迫する。あるいは綿球を挿入し圧迫する
・口腔:口内の血液を含嗽で除去する
・消化管:食事を制限する
・肛門:パットやおむつを当て自然止血を待つ
・その他:肺出血、脳出血の徴候がある時は救急処置を行う
(輸血時のケア)
・重篤な副作用は投与後15分以内に起こる事が多いため、投与後5分間は患者のそばにいて副作用(アレルギー反応、ショック、呼吸困難、発疹、浮腫)を観察する
EーP
・血小板数のみかたと意味を説明する
(出血予防)
・皮膚:清潔にしてクリームなどで保湿する。軟らかい寝衣を選び靴下や下着の圧迫を防ぐ
・粘膜:軟らかい歯ブラシを使用し歯肉を傷つけないようにする。鼻を強くこすらない。眼をこすらない
・活動:指示された安静度を守る。体動はゆっくりゆとりをもって行う。滑りにくいスリッパや靴を選択する。排便時の努責、激しい咳を避ける
(出血時の対処)
・天井出血などの皮膚症状や排便時の出血、その他の出血が見られた場合、医療者に伝える
#3倦怠感がありADLに支障をきたしている
看護診断 活動耐性低下
関連因子:床上安静、全身衰弱
診断指標:倦怠感の訴え、活動に対する心拍数の異常な反応、労作時の呼吸困難
看護目標
長期:貧血症状が緩和されるとともに貧血時に必要な対処行動がとれ、化学療法を安全に乗り越えていくことができる
短期:1)貧血症状が軽減する
2)適切な行動範囲を理解し安静度を守ることができる
3)転倒予防の行動をとることができる
OーP
・貧血を示すデータ
・皮膚:粘膜の色調、皮膚、眼球結膜、口腔粘膜
・随伴症状:倦怠感、めまい、立ちくらみ、耳鳴り、頭痛、動悸
・栄養状態
・心不全徴候
・呼吸状態
TーP
・貧血の程度と自覚症状に応じて安静度を決める
・安静度に応じてADLの援助を行う
・靴下手袋の着用、温罨法や足浴など四肢を保温する
・環境を整備し転倒リスクを回避する
・輸血時のケア
EーP
・貧血データや自覚症状が理解できるように説明する
・症状出現時は報告すること、また骨髄抑制期にめまい立ちくらみによる転倒によって致命的となる場合があることを説明し、転倒予防、安静の必要性が理解できるようにする
・急に起き上がらずゆっくり起きる
・活動は動悸息切れなどの症状が出ない範囲でゆっくり行う
#4患者家族が疾患に対する不安を抱いている
看護診断 不安
関連因子:死に至る脅威、健康状態に対する脅威、環境状態の変化
診断指標:苦悩する、イライラ・焦燥感、交感神経指標、思考の遮断・混乱など
看護目標
長期:医療者と信頼関係が築かれ治療経過に伴う不安を表出でき、対応できるようになる
短期:1)不安を表出できる
2)不安のレベルが下がる
OーP
・不安の程度、随伴症状
・治療経過
・疾患治療に対する思い
・身体的苦痛の程度
・キーパーソンとの関係
TーP
・患者との信頼関係の構築に努める
・疾患治療に対する思いなど不安を表出できる場を作る
・不安の内容を確認し、知識不足から不安が生じている場合は必要な情報提供をする
・患者の思いに寄り添い、サポートする姿勢を伝える
・不安が強度の場合や打つなどの精神症状が見られたときは医師に報告する
・身体的苦痛症状を緩和できるようにかかわる
・気分転換、リラクゼーションを図る
EーP
・不安、気がかり、心配なことはいつでも遠慮せず話して構わないことを伝える
・必要時患者会などのサポートや社会資源についての情報を提供す
#5治療の副作用により脱毛などが見られ外観が変化する
看護診断 ボディイメージの混乱
関連因子:疾患の治療
診断指標:身体に関する否定的な感情、社会的なかかわりの変化
看護目標
長期:化学療法の副作用である脱毛を受け入れ、対処しながら治療を前向きに継続できる
短期:1)脱毛について正しい知識を得る
2)脱毛に対する気持ちを表出できる
3)脱毛の対処方法を知る
OーP
・使用している抗がん剤の種類、量、投与スケジュール
・脱毛の程度
・脱毛に対する言動
・皮膚の状態
TーP
・脳発が散乱しないようにベッド周囲を粘着テープなどで取り除き清潔に保つ
・脱毛による感情や、ボディイメージ、セクシュアリテイなどへの影響について話す機会を持つ
・家族や周囲の人に対しても、患者の傷つきやすい気持ちへの配慮や、思いを共有できる場を作る
EーP
・脱毛のメカニズム、時期や程度を説明する
・長髪の場合は脱毛前に切っておくことが望ましいことを伝える
・化学療法が終了したら髪質が変化する可能性があるが、髪はまた生えてくることを伝える
・頭皮を傷つけないように爪を短く切ること、ブラシは柔らかく目の粗いものを使用する
・頭皮の保護、保温、容姿補正(かつらや帽子など)の情報を提供する
#6治療の副作用により悪心嘔吐が見られる
看護診断 悪心
関連因子:薬物、不安、不快な味
診断指標:悪心の訴え、食物に対する嫌悪
看護目標
長期:悪心の症状コントロールが図れ、悪心嘔吐による二次的障害が起こらず、不安も軽減され治療が継続できる
短期:1)悪心が軽減する
2)随伴症状が軽減する
3)不安が軽減する
OーP
・使用している抗がん剤の種類、量、投与スケジュール
・悪心嘔吐の種類、発現頻度程度
・悪心に対する不安、前回の治療での悪心嘔吐の状態
・身体状態
・随伴症状
・二次的障害の有無
TーP
・適切な制吐薬を使用する
・環境の調整:におい、換気、衣服、体位などを調整する
・食事の工夫:患者の嗜好に合わせて好きな時に好きなものを食べる。場合により栄養補助食品を使用する
・精神面の援助:悪心嘔吐に関する不安を聴き、次回の治療に対する不安、恐怖を軽減する
・リラクゼーションを図る手首から3横指下の内関というツボを刺激すると、効果がある場合がある
EーP
・悪心嘔吐の副作用について説明し、必ず改善すること、必要時には制吐薬を使用するので我慢しないように説明する
#7治療の副作用により口腔粘膜が傷害される
看護診断 口腔粘膜障害
関連因子:化学療法、薬物治療の副作用、血小板の減少、唾液分泌の減少、感染、栄養不良、不適切な口腔ケア、機械的因子(義歯、齲歯など)
診断指標:出血、口唇炎、口内炎、口腔内潰瘍、口腔の疼痛、舌苔、味覚異常を訴える
看護目標
長期:口腔粘膜障害の予防、症状緩和を図り二次的障害が生じない
短期:1)二次感染を予防する
2)適切な口腔ケアが実施できる
OーP
・抗ガン剤の種類、量、投与スケジュール
・口腔内の状態を毎日観察する
・味覚の変化
・検査データ
・口腔ケアの実施状況
TーP
・軟らかいヘッドの小さな歯ブラシでブラッシングし歯垢を除去する
・含嗽を日中2時間ごと、夜間は覚醒時に行う
・必要時には歯科受診を勧める
・口腔内乾燥を防ぐ
・疼痛コントロールを図る
・抗炎症、組織修復作用のある含嗽水、唾液分泌、憎げ形成作用のある生理食塩水を使用する
・食事を工夫する
EーP
・口腔ケアの重要性を説明し歯磨き、含嗽などの口腔ケアの方法、口腔内の観察方法について指導する
#8役割が遂行できないことによる葛藤が生じやすい
看護診断 非効果的役割遂行
関連因子:ボディイメージの変調、身体疾患、自己尊重の低下、不十分なサポートシステム、発達段階
診断指標:不安、無力、自分が知覚している役割の変化、役割葛藤
看護目標
長期:社会的役割を調整し治療を継続することができる
短期:1)社会的不安、心肺を表出することができる
OーP
・長期の入院治療に伴う役割変化に対する不安、思い
・家庭内、職業の役割
・経済状況
・サポートシステム
・セクシュアリテイに関する不安、心配
TーP
・役割変化に対する不安について話す機会を持つ
・患者の気持ちを尊重し自己概念が低下しないように関わる
・患者の希望を聞く
・家族と話す機会を持ち、必要に応じて家族と調整できるようにする
・不安が強い場合や打つなどの精神症状がある場合は、専門医に受診できるようにする
・必要時ソーシャルワーカーに依頼する
・患者が女性で挙児希望の場合、治療状況に応じて専門家に相談できる機会を作る
EーP
・長期の治療、入院、社会的不安、心肺について医療者に話して構わないことを伝える
・性行為は骨髄抑制期には避ける必要があるが、感染や出血に注意すれば問題がないことを伝え、相談できる準備があることを伝える
・挙児希望の場合は、専門家に相談できるようにすることを伝える
#9治療の副作用により下痢をする
看護診断 下痢
関連因子:薬物治療の有害作用、感染の経過、不安
診断指標:少なくとも1日3回の軟らかい液状の便を排出、腸音の亢進、腹痛
看護目標
長期:悪心の症状コントロールが図れ、下痢による二次的障害が起こらず全身状態の悪化が見られない
短期:1)有形便が排出される
2)脱水がない
3)皮膚障害がない
OーP
・使用している抗がん剤の種類、量、投与スケジュール
・下痢の有無と程度
・随伴症状の有無と程度
・電解質異常、脱水の有無と程度
・下痢に対する精神的苦痛の程度
TーP
・ホットパックなどで腹部を保温する
・輸液療法の管理
・止痢薬、整腸薬の投与
EーP
・下痢症状がある時は医療者に報告する
・腸粘膜を刺激しない消化吸収のより食品を少量づつ摂取する。下痢が強い時は腸管の安静のために絶食が必要なことを説明する
・肛門周囲を清潔に保つ
#10化学療法に必要な自己管理が不十分である
看護診断 非効果的自己健康管理
関連因子:知識不足、ソーシャルサポートの不足、無力、意思決定葛藤
診断指標:治療計画を毎日の生活に組み込むことができない、危険因子を減少させる行動をとることができない
看護目標
長期:化学療法に必要な自己管理ができ、治療に対して主体的に取り組むことができる
短期:1)感染予防行動を理解し実行できる
2)出血や転倒が予防できる
OーP
・自己管理に対する意欲
・化学療法に必要な自己管理の理解状況
・感染予防行動など自己管理の実施状況
・ソーシャルサポートの状況
・全身状態
TーP
・感染予防行動などの必要な自己管理ができている場合は、患者の努力を認め継続できるようにする
・全身状態が悪い時は無理にセルフケアを促さず看護師が代行する
EーP
・自己管理の必要性、具体的な方法について説明する
参考資料:疾患別看護過程