廃用症候群の予防方法
廃用症候群の予防
- 廃用症候群とは、安静臥床、運動不足など身体の不活動性によって生じる心身の障害の総称である
- 身体を動かさない状態は、身体に影響を及ぼすだけでなく心理的社会的な影響にももたらす。
- 廃用症候群における障害は、時間依存的に拡大しリハビリテーションを困難にし、早期社会復帰や日常生活の行動障害にもつながる。
- したがって、可能な限り廃用症候群の予防に努めることが重要であり、廃用症候群を生じてしまった場合でも、できる限り速やかに改善させるように努力する。
目的
- 廃用症候群を予防し、身体的、精神的、社会的悪影響を避ける
適応
- 手術や牽引、ギプスなど治療や検査により身体の一部あるいは全体の運動が制限され、安静臥床を強いられる患者
- 意識障害、神経・筋・骨格系の障害、疼痛衰弱などで自分で体を動かすことのできない患者
知っておくべき情報
実施するために必要な情報
運動障害に関するアセスメント
- 意識障害の有無と程度
- 関節可動域
- 知覚障害の有無と程度
- 不随意運動の有無と程度
- 疼痛の有無と理解
- 体動制限の有無
- 患者の意思
身体の影響に関するアセスメント
- 関節の拘縮
- 筋委縮
- 褥瘡の有無やリスク
- 下肢の浮腫、静脈うっ血
- 誤嚥性肺炎の徴候
- 便秘、腹部膨満感など
- 尿路結石の徴候
方法
{援助の種類}
- ベッドサイドリハビリテーション:体位変換、良肢位の保持、関節可動域訓練、座位、立位、離床訓練
- 生活支援:食事、水分摂取、レクレーション
{援助の方法と計画}
- 頻度
- 実施する時間
- 誰が実施するのか
援助の評価
- 運動前後の状態変化
- 運動は無理なくできたか
- 睡眠や食事への影響
- 自発的な運動が出来ているか
- 褥瘡、筋委縮、関節拘縮、便秘、その他の徴候の有無
廃用症候群の予防
- 体位変換を行い褥瘡を予防する
- 関節可動域訓練を行う
- 尖足を予防する
- ※尖足とは甲側が伸び足先が下垂した状態である。
- 長時間寝たきりの状態や布団などの掛物の重みや圧迫によってなりっやすい。
- 尖足になると端座位や立位になった時に踵が床につかず、座位は不安定で歩行もできなくなってしまう。
- 尖足の予防としては関節可動域訓練を行ったり寝たきりにせず端座位にして踵を床につけるように心掛ける
- 十分な水分(成人では2000ml/日)を補給する
- ※体内の水分を維持することにより、血液の抗凝固性や血栓の予防、尿の停滞や濃縮による結石を予防する。また便秘の予防にもなる
- 可能な限り生活に変化をつける:適度なレクレーション(音楽鑑賞として別室へ移動するなど)を取り入れる
廃用症候群の予防の為に呼吸機能を高める援助
- 身体を動かさない状態が続くと、呼吸系には胸郭拡張が低下するなどの影響があり、その結果しぼんだ肺胞が広がりにくくなって肺活量が低下、呼吸効率が低下する。
- また身体の下側になった肺領域の気道に分泌物が侵入し、それを排除できないために貯留してしまい細菌が増殖して肺炎(沈下性肺炎)を発症する
- 呼吸機能を高める援助の目的は、肺の換気能力の維持強化と肺合併症の予防である。体位変換を行うだけでも無気肺の発生や分泌物の貯留を防止することが出来るが、呼吸機能を維持・高める援助として呼吸訓練がある
- 呼吸訓練は①呼吸筋の緊張をとる②肺活量を維持するための呼吸訓練(深呼吸や腹式呼吸、くちすぼめ呼吸)③痰を出す訓練(咳の訓練や体位ドレナージなど)がある
{呼吸筋の緊張をとる運動}
- 座位の姿勢でリラックスし、腹式呼吸で腹部に息を吸い込む。
- そして息をためた状態で腹部をへこませる。
- こうすることで横隔膜が上がり押し上げられた肺が広がる。
- つまり腹部と肺をシーソーのように交互に膨らませたりへこましたりすることで、固まっている肺の筋肉をほぐす
身体不動性の身体的悪影響
- 心臓系:新機能の低下、心拍数と心拍出量の低下、酸素摂取量の低下
- 循環系:静脈血栓、起立性の耐性低下、浮腫、静脈還流の低下、血管内圧の上昇
- 呼吸系:換気量の低下、分泌物の停滞、線毛の機能障害、粘膜分泌物の低下、胸郭拡張の低下、より遅く浅い呼吸
- 筋・骨格系:筋委縮、拘縮、筋力筋緊張の低下(背筋など)、骨粗鬆症、関節変性、膠原繊維の繊維症(関節)
- 代謝・血液系:窒素の尿中への排泄の低下、糖耐性の低下、高カルシウム血症、食欲不振、代謝率の低下、肥満症、クレアチニンの上昇
- 消化器系:便秘
- 泌尿器系:尿停滞、尿結石、尿閉
- 皮膚系:毛細血管血流の低下、壊死に至る組織の酸性血症
- 感覚神経系:神経支配の低下
身体不動性の心理的社会的影響
- 心理的:緊張感の増強、自己概念に対する否定的変化、不安、怒り
- 学習:モチベーションの低下、学習の維持、学習後の移転能力の低下、注意持続時間の低下
- 社会的:役割の変化、社会的な孤立
- 成長と発達:依存
参考資料:看護技術プラクティス