がん性疼痛管理・オピオイドの選択方法は?
オピオイドの選択方法
数多くあるオピオイドの中で、どのように選択すればよいですか?→患者の状態に合わせWHO方式がん性疼痛治療法に沿って選択する。
患者が抱えているがん性疼痛の部位・程度・性質と画像所見からアセスメントし、オピオイドが有効か判断する。
そしてオピオイドの特性を理解した上で、WHO方式がん性疼痛治療法に沿って、患者の状態に合わせてオピオイドを選択していく。
がん性疼痛の分類
オピオイド両方を的確に行うためには、がん性疼痛に対するオピオイドの反応性を正確に評価することが需要になる。
疼痛の機序によりオピオイドの有効性も異なり一般的には神経障害性疼痛には有効性は低いと考えられる。
したがって神経障害性疼痛には鎮痛補助薬の併用が必要となる場合がある。
オピオイドの特性
オピオイドはオピオイド受容体を介して効果を表す。
そのため各オピオイドの受容体への親和性や体内動態、薬理活性の有無といった違いが、薬剤の作用や副作用の違いとなって現れる。
したがってこれらのオピオイドの特性を踏まえて患者に合ったオピオイドを選択していく必要がある。
オピオイド投与以外の疼痛緩和
非オピオイド鎮痛薬や鎮痛補助薬を適切に使用し、オピオイド投与以外の疼痛緩和を十分に図ることが必要である。
悪心や便秘など各オピオイドに共通した副作用対策を適切に行うことが必要であり、十分な副作用対策を図ることなく、容易にオピオイドローテーションを行ってはいけない。
オピオイドローテーションの実際
①オピオイドローテーションの原則
・ 現在のオピオイドと等価の新しいオピオイドの量を求める
・ 経口モルヒネ60mg/日以上の場合は、換算の個体差によって疼痛・副作用が増強する可能性があるので一度に変更せず30~50%づつ徐々に置き換える。
・ 変更後は疼痛と眠気の観察を行い、痛みが増強したら30%増量し、眠気が出たら20%減量する
②他のオピオイドからデュロテップMTパッチへ変更する場合
・ 8~12時間徐放性オピオイド:内服と同時に貼付し、次回より減量(あるいは中止)する
・ 24時間徐放性オピオイド:内服の12時間後に貼付し、次回より減量(あるいは中止)する
・ 注射薬:貼付6時間後までは同じ投与量で投与し、その後12時間後まで半量投与、それ以降は注射薬を中止する
蠕動亢進の対処法:モルヒネオキシコドンによる腸管抑制が減少する為、蠕動亢進を生じやすい。対処法を以下に上げる
・ 下剤の量を減量する
・ 蠕動痛が起こった場合には、アンペック座薬・モルヒネ静脈・皮下投与のレスキューかブスコパンの静脈・皮下投与を行う
・ 腸閉塞による疼痛の場合には、デュロテップMTパッチに変更すると蠕動亢進による疼痛が悪化することがあるので、他の方法を優先する
③デュロテップMTから他のオピオイドに変更する場合
・ 徐放性経口製剤:デュロテップMTパッチを剥がしてから6時間後に投与を開始する
・ 持続皮下注射:デュロテップMTパッチを剥がした直後に投与を開始する
・ 持続静脈注射:デュロテップMTパッチを剥がしてから6時間後に投与を開始する
④オピオイドの併用
・ 蠕動痛を伴う時:消化管狭窄があり閉塞を避けるために基本的にはフェンタニルを使用する中で、蠕動痛が強い時に少量のモルヒネを併用する時がある。
・ 激痛を伴う時:フェンタニルやオキシコドンで良好な疼痛コントロールがえられない時に、鎮痛補助薬の使用と共に塩酸モルヒネを併用することによって黄通緩和がえられることがある。
オピオイドを使用しても痛みが強い時の対応
オピオイドを使用していても、体動時に痛みが増強する患者にはどのように対応すれば良い?→痛みをアセスメントしチームで介入、患者とともに日常生活の目標を設定する
看護師による適切な痛みのアセスメントとチームでの介入が不可欠である。
がん患者の痛みは全人的な痛みであり、オピオイドですべての痛みが消失するわけではないことも押さえておく。その上で患者と共に日常生活での目標を設定する。
痛みをひろい視野でアセスメントし介入していく
- オピオイドを開始しても痛みが残っている場合は、様々な原因が考えられる。
- 患者の痛みの訴えは実際より弱く表現されやすいことを踏まえて、広い視野でアセスメントし介入していくことが必要である。
- 痛みによって患者の日常生活がどの程度制限されているのか、看護師は生活の視点からアセスメントしなければならない。
オピオイドを開始増量しても痛みが軽減しない場合の看護師の役割
- 患者が感じている痛みを確認する
- オピオイドが効く痛みなのかを判断する
- オピオイドの投与量は適切かを検討する
- オピオイドの副作用対策は十分であるかを検討する
- 患者の心理、社会、スピルチュアルな痛みをアセスメントする
- 特定の時間や体動時の痛みに対しては、レスキュードーズの積極的な使用や理学療法士の介入を検討する
- 骨転移や体動時の突出痛に関しては、放射線科医や麻酔科医などの協力が不可欠、緩和ケアチームへのコンサルテーションや医師間の調整を行う
患者が感じている痛みの確認
- 痛みは患者だけが感じる感覚であるゆえに、患者の痛みを知ることが疼痛緩和のスタートである。
- 患者の痛みの訴えはそれぞれで表現の方法も感じ方も違う。
- 患者の痛みを把握することは看護師の重要な役割である。
- 痛みの表現やアセスメントに関しては、疼痛評価スケールやデルマトームなど適切なツールが開発されている。
- これらを活用して患者の痛みを確認する。
オピオイドが効く痛みなのか?
- がんの痛みは、一般的にオピオイドのききやすい侵害受容性疼痛とオピオイドの効きにくい神経障害性疼痛に分類される。オピオイドの反応性はそれぞれの痛みによって異なる。
- 鎮痛補助薬は抗うつ薬、抗痙攣薬、抗不整脈薬、ステロイド薬などが使用される。
- 鎮痛補助薬の使用については緩和ケアチームなどの他職種で検討する必要がある。
- 看護師は鎮痛補助薬の効果が見られたかについて患者自身から正しく情報を得ることが重要である。
オピオイド投与量の判断
- オピオイドによる除痛が不十分で、かつ眠気がない場合は、オピオイドの容量不足が考えられる。
- オピオイドによる吸収不全がないか、血中濃度が変化する要因は内科をアセスメントし判断する。
- その上でオピオイドの増量や投薬経路の変更などを検討する。
副作用対策は十分であるかという検討
- オピオイドの副作用対策が不十分であると、患者がオピオイド治療を拒否しかねない。
- 特に患者にとって不快な症状に対しては、オピオイド開始時に予防的な治療を開始するべきである。
- 看護師は医師と協働して、オピオイドの効果と共に副作用の観察を行い適切な情報を医師に提供する。
心理・社会・スピリチュアルな痛みのアセスメント
- がん患者の痛みはトータルペインである。
- 全人的なアセスメントを行わなければ患者の痛みの軽減ははかれない。
- 患者にとって痛みがあることは病状の悪化や進行を意味すると考えてしまうことがある。
- このような患者の心理状態を理解しながら、適切なアセスメントを行う必要がある。
レスキュードーズの積極的な使用や理学療法士の介入
- 特定の時間や体動時の痛みに対して、速効性のオピオイドを追加投与するレスキュードーズの積極的な使用を考える。
- 一般に骨転移による体動時痛は除痛が難しいと言われる。
- 予定される体動の20~30分前にレスキュードーズを使用し、痛みの程度を評価しながらレスキュードーズを有効に活用する。
- 骨転移部に負担の少ない動作や安全で安楽な動作に関しては、理学療法士に相談し連携しながらリハビリテーションを取り入れていく。
- 患者と共に日常生活動作の拡大に関して現実的で実現可能な目標を設定する。
- 患者にとって適切な痛みのマネージメントをしていくことが重要。
骨転移や突出痛にたいして
- 骨転移や突出痛が見られた際には他職種連携を図り、緩和ケアチームへのコンサルテーションなどを行う。
- 放射線科医や麻酔科医などの協力が不可欠である。
- 看護師は緩和ケアチームへのコンサルテーションや医師間の調整を行う。
- 緩和ケアチームは他職種で構成され、がん患者の様々な問題に対応している。
- 困ったことがあった時は、緩和ケアチームに相談するという機能を活用する。
参考資料:看護技術ケアの疑問解決Q&A