アルコール・薬物の関連障害患者の看護計画
共同問題
RC:離脱症状
看護目標
離脱症状や合併症をモニタし、最小限に抑える
OP
・離脱症状の既往歴(振戦、せん妄、けいれん、てんかん発作、幻覚)
・バイタルサイン
TP
・離脱症状に対する初期対応と医師への連絡
・治療や処置の迅速な介助
#1アルコール・薬物の摂取をやめられないことによる健康破綻がみられる
看護診断 日効果的健康維持
関連因子:適切な判断ができない
診断指標:物質乱用、基本的健康実践についての知識不足があることを示す
看護目標
長期:安定した身体状態を保ち、アルコール薬物を断つことに向けたリハビリテーションプログラムを開始できる
短期:1)安全に離脱することができる
2)生理的な恒常性を回復する
3)休息、睡眠、活動のバランスを回復する
4)必要な栄養を摂取できる
OP
・最終の飲酒、薬物摂取と量、これまでの頻度
・バイタルサインのモニタリング
・体液と電解質バランスのモニタリング
・栄養状態の観察
・離脱症状の注意深い観察
・身体合併症に関連する症状の観察
TP
・輸液と排泄に関する水分出納を観察し水分を補給する
・発刊や悪寒に対する清潔へのケアを行う
・せん妄状態がみられる場合は身の回りの危険物を除去し、また不安を増強しないように室内の照明は落とさないようにする
・食事の摂取が可能になったらできるだけ早く経口摂取を促す
・簡素で具体的な言葉で離脱症状は徐々に落ち着くことを伝えるが、今後の治療計画や感情の問題、ライフスタイルなどについて話し合うことは避ける
・物質依存に対して批判をさしはさまない態度で臨む
・治療が進むにつれて離脱症状は徐々に落ち着くことを説明する
EP
・不快な身体症状から回復するために、治療が必要なことを伝える

#2アルコール・薬物の乱用による症状のために身体を傷つける可能性がある
看護診断 身体損傷リスク状態
危険因子:科学的因子(アルコール、薬物)栄養不良、感覚機能障害
看護目標
長期:身体損傷の危険性が低減したと述べる
短期:1)できる限り安全感を持って過ごさせる
2)現実見当識が得られる
OP
・失見当識、振戦、知覚、認知の障害の程度
・疾患に対する理解
・離脱症状の注意深い観察
TP
・事前に身の回りの危険物を除去し、せん妄の際には患者の安全を最優先する
・不安を増強しないように室内の照明は落とさない
EP
・疾患と治療について患者に理解してもらい、治療を受けることについて自己決定を助ける
・治療が進むにつれて自覚症状は徐々に落ち着くことを説明する
・不快な身体症状から回復するために治療が必要なことを伝える
#3アルコール・薬物の離脱症状や自己コントロールの喪失、意識障害に対する不安がある
看護診断 不安
関連因子:物質乱用、自己概念に関する脅威
診断指標:苦悩する、問題解決能力の減弱、混乱
看護目標
長期:不安が解消され、物質を断つことに向けたリハビリテーションプログラムを継続できる
短期:1)治療への参加を自ら決定できる
2)疾患の特徴について理解し治療プログラムの必要性を認識する
OP
・不安の程度
・疾患や治療に対する理解
TP
・患者が不安な状態にあるときは何が起きているかを説明し、また何をするかを伝えたうえで看護行為を行う
・幻覚の訴えに対して、現実にはないことを保証する
・幻覚の訴えに対して患者のつらさに対して共感を示す
EP
・治療が進むにつれて症状が徐々に落ち着くことを伝える
・アルコールや薬物の治療を受けることについて自己決定を助ける
#4アルコール・薬物依存症であることを否認し治療の必要性を認めない
看護診断 非効果的否認
関連因子:不安、不快という脅威
診断指標:不適切な感情を表す、身体の状態の影響に対する恐怖をすり替える、自分が危険や症状に関係しているとは思っていない、症状を過少評価する
看護目標
長期:アルコールや薬物の治療を断ち、治療を続ける必要性を認識する
短期:1)アルコールや薬物の摂取が身体や生活に与える影響について認識する
2)アルコールや薬物の問題を認める
3)アルコールや薬物のグループミーテイングに参加する
OP
・リハビリテーションプログラムへの参加態度
・患者のアルコール摂取や薬物摂取についての認識
・治療についての訴え
・グループミーテイングに参加した際の感想や印象に残った事柄
TP
・患者のっ行動がこれまでの生活の問題や家族の困難を招いていると認識できるようにかかわる
・問題行動に対しては、何が起こっていたかを患者とともに確認し、患者が問題を合理化したり他人のせいにしたり言い逃れをした場合にはそれを認めず毅然とした態度で伝える
・患者の気持ちを否定しない
・患者が自分の感情を表現できた時や自分の行動とその結果について自分なりに内省し考えを示すことができた場合には肯定的にフイードバックする
・治療を受けることについて自己決定することを助ける
EP
・依存症について正しい知識を伝える
・同じ悩みをもつ人同士のグループへの参加を促す
#5アルコール・薬物への依存によって課題や困難な問題に対処しようとし、ストレス因子を適切に処理できない
看護診断 非効果的コーピング
関連因子:コーピング能力に対する自信のレベル、コントロールの状態を知覚するレベルが不適切
診断指標:化学物質の乱用が不適切、基本的ニーズを満足できない、目標に向かう行動の不足
看護目標
長期:ストレスや困難な状況を回復するための適応的な代替え方法を活用する
短期:1)自分の感情を素直に表現する
2)ストレスや困難な状況を回復するための代替え方法を試みる
OP
・病棟で生じた問題に対する対処方法を観察する
・他人のせいにしたり言い逃れをしていないか
TP
・ストレスや困難な状況に対処するための別の方法を見つけるように励ます。まず問題を明らかにして解決方法を考えそれを実行してみるという一連の過程を体験できるように促す
・患者が自分にできる範囲で自分の感情を認識し表現できるように促し、これについて肯定的にフイードバックする
・物質の摂取のきっかけとなる自分の感情について思い起こしてもらい、自分の感情を今までとは違う方法で表現する方法を一緒に考えてみる
・物質接種をやめようとしている「今の自分」に注意を向けるように促す
・患者が自分の生活を考えまた実行可能な期間を区切って物質をやめようとするのを助ける
EP
・自分が摂取するきっかけを思い起こして、それらを避ける過ごし方を一緒に考えてみる
#6アルコール・薬物依存を形成してきた患者本人の役割と責任を家族が肩代わりしてしまう家族関係
看護診断 家族機能障害
関連因子:アルコールや薬物の乱用
診断指標:怒りの不適切な表出、依存、コミュニケーション障害、家族の情動的ニーズを満たせない
看護目標
長期:互いに役割と責任を明確にして行動できる
短期:1)家族は患者との共依存関係について理解できる
2)家族は患者自身が負うべき責任があることとその責任は患者に帰すべきことを学ぶ、そのために家族は患者が責任を取ることを待つ必要性を学ぶ
3)家族地震、自分の生活を改善できる
OP
・これまでの非効果的な対処法について見直すことができているか
・家族は自分自身の生活について考えることができているか
・飲酒や薬物摂取行動の責任は患者にあることについて洞察できているか
TP
・家族がこれまで患者の物質摂取をやめさせて平和な家庭を取り戻そうと努力してきた気持ちを聞き受け止める。
ゆっくりと話を聞き、家族にもう一度やってみようという気持ちが生まれてきたら、どのように対応するか考えてみる
EP
・依存症についての正しい知識を提供し、疾患の症状という視点を持つことで感情的に安定して患者の行動を理解しこれまでとは違う対応方法を見つけるのを助ける
・家族自身が個人的に自分たちの生活を改善できるように促す
・物質摂取をコントロールするために家族が行った試みの効果を見直すことを促す。患者の責任を肩代わりすることをやめて、見守ることができるように援助する
・患者と家族の話し合いの場を作り互いにどのような役割があってその責任をどのように分担するかを話し合う。
問題が起きたときはその問題がだれの責任であるかを話し合うように伝える
・患者家族が互いに役割と責任を果たせたとき肯定的なフイードバックを行う
・家族の会や断酒会などを紹介し依存症について学ぶ会、悩みを話し合うことができる場を提供できるように援助する。家族同士が体験を話し合える場への参加を促す
参考資料:疾患別看護過程